コンテンツの秘密?
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考え方
私共のようにネットを生業にしている会社は当然として、ホームページをもっている会社であれば
『コンテンツ』
という言葉を聴いたことがあると思います。
直訳すると「内容」「情報」となってしまうのですが、現在では「ネットに載せるひとかたまりの情報」と解釈されることが多いようです。もっと広い意味では一つの音楽、映画、ゲームなど「作品」として捉えられることもあります。
今回は川上量生さんの書いた「コンテンツの秘密」という本です。
※以下、著者の簡単な紹介です。知っている人はとばして下さい(笑)
・株式会社ドワンゴ(売上350億・着メロやニコニコ動画の運営)の会長
・1968年生まれ
・2011からスタジオジブリの鈴木プロデューサーのかばん持ち
今回の本はスタジオジブリの見習いとして得たことなので、コンテンツ=映画というくくりで考えたほうが良いです。
目次は
第1章 コンテンツの情報量とはなにか?
第2章 クリエイターは何をプトプットしているのか?
第3章 コンテンツのパターンとはなにか?
第4章 オリジナリティとはなにか?
となっていて、アリストテレスの「詩学」からコンテンツの定義を探ってみたりしますが、ジブリ周辺のクリエイターから聞いたことを元に内容を組み立てているので結構わかりやすくリアルな内容でもあります。
私が注目したのは2点
①なぜジブリアニメは繰り返しみられるのか?
②宮崎駿の“天才”とは?
という点です。
①なぜジブリアニメは繰り返し観られるのか?
…これには『情報量』『表現』が大きく関わってきます。そもそもアニメというものは『情報量の少ないメディア(映像)』なのだそうです。
例えば「実写」は全てが本物なので情報量がとても多くなります。絵の好きな方なら分かると思いますが写実的な絵画というのはとても線が多くなります。それに比べるとアニメは線がかなり少なくなっています。これはなぜかというと、子供は大人に比べて情報を処理する能力が低いのでマンガやアニメのように線が少ない映像を好む傾向にあるからだそうで、確かに自分が子供のころって実写映画の登場人物(特に外国人)ってあまり区別が付かなかったように思います。
ただ、情報量が少なすぎると単純になりすぎて飽きが早くなります。ジブリの場合、かなり線が多い(=情報量が多い)ほうなのですが、近くの景色は細かく遠くの景色はおおざっぱにしたりして調整しているのだそうです。
つまり「見やすくて飽きにくい(大人でも視聴に耐えられる)」ということになります。
よくデザインやコピーライトでは「シンプルに」とか「ワンワードで分かるように」などと言われることと共通点があるように思います。
②宮崎駿の“天才”とは?
…では、ジブリと同じ技量があればヒットするのか、といえばそうでもありません。やはり宮崎駿という個性が大きく関わってきます。
鈴木プロデューサーによれば、実はジブリの映像というのはデッサンが狂っている場面が少なくないのだそうです。
例えば飛行機とか人物とかが本当よりも大きく描かれていることもある。でも、見ているほう(観客)からするとそれが見ていて気持ちのいい絵らしいのです。この“気持ちのいい絵”を創り出せることが宮崎駿の感性(天才)である、ということです。
これを読んでいて思い浮かんだのが『モノマネ芸』です。例えばコロッケさんとか清水アキラさんなどのモノマネって、すごくデフォルメされていますよね。でもたぶん、単純にそっくりであるよりも『似てる!』と感じるわけで。犯人捜査なんかでも、写真を白黒コピーしたものよりも似顔絵の上手な人が描いた絵のほうが逮捕率が高かったりするのと同じかも知れません。
「綺麗な絵」と「印象に残る絵」は違うということですよね。本の中では「主観的映像」と書かれていて、これがいかに多くの観客と同調できるかが重要(才能)だそうです。確かに印象派の絵画なんかも基本的に上手な人がデッサンなんか多少狂っても自分の印象に忠実に描いていますよね。
ちなみに今ハリウッドでは、人気のある俳優、ウケる確率の高いストーリー、カットなどを組み合わせて“天才のいらない映画づくり”が進んでいるようです。大外れのない映画作りといえるでしょう。
あと
・なぜマンネリ(※ジブリではない)なのにヒットするのはなぜか?
・自由にコンテンツを発表できるようになるからといってコンテンツに多様性が出るわけではない。
等々、
ニコニコ動画を運営している人間ならではの分析なども載っていてとても面白い内容でした。
これからネットや表現を職業にしていく人だけでなく、商品開発をする人や営業さんが読んでも面白いと思います。
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