約束を守ることは大切『はなたれ小僧様』
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最終更新日:2022/04/30
昔話
日本の昔話や民話では、人や動物が幸せをもたらしてくれるお話がたくさんあります。
そして幸せを欲張ることで、主人公自らが幸福や富を失ってしまうというのも、よくあるお話の型です。
鶴の恩返しなどもそういったお話しの1つですね。
「はなたれ小僧様」も同じように、小僧が幸せをもたらしてくれた幸福を、爺が自ら手放してしまうお話しです。
うっかり幸福を手にしたおじいさんの末路
あらすじを見ていきましょう。
むかしある貧乏なおじいさんが住んでいました。おじいさんは薪を売って生計を立てていましたが、なかなか売れません。おじいさんはいつも売れ残った薪を、川に投げ入れていました。ある日、川から乙姫さまが現れ、「いつも薪にくれてありがとう、お礼に大事にすればあなたの望みをなんでもかなえてくれる、この小僧を授けましょう。ただし毎日エビなますを食べさせるように。」と言って、はなとよだれをたらした汚らしい子どもを授けてくれました。おじいさんは、小僧を神棚の横に座らせて、大切に扱いました。すると、おじいさんが望む、きれいな家、着物、千両箱などを、小僧が次々と出してくれました。そしておじいさんは、またたくまに大金持ちになりました。
おじいさんはすっかり金持ちになったので、もう何も出してもらう必要がないと言って、小僧にエビなますを与えるのをやめてしまいました。そして、小僧はいつまでたっても汚いままで、大金持ちになったおじいさんにとっては、疎ましい存在になり、ついに小僧を家から追い出してします。すると、家の外で鼻をすする音がしたかと思ったら、大きな家も蔵も、千両箱もみんな消えてしまい、元の貧乏な屋敷に戻ってしまいました。おじいさんは、急いで小僧を追いかけましたが、時すでに遅し、小僧は姿を消して二度と戻ることはありませんでした。
幸福をもたらす3つのパターン
これは新潟県の民話ですが、東北、九州、四国、中国地方などにも分布しています。「竜宮童子」とも呼ばれるこのお話は、大きく分けて汚らしい子どもをもらう型と、打出の小槌などの宝物をもらう型、犬や猫などの動物をもらう型の3つに分類することができます。汚らしい子どもをもらう型では、ほとんどがが小さな男の子ですが、中には女の子やおばあさんもいます。
宝物をもらう型では、魚などを助けたお礼として、「打出の小槌」や「聴き耳頭巾」といった宝物をもらい幸福になるというのがセオリーです。結末はちょっと違いますが「浦島太郎」にも近い話ですね。
動物をもらってくる型では、金を産む犬、猫、馬、亀などがありますね。動物をもらった主人公は幸福になりますが、隣人や兄弟がそれを妬み、その動物を借りて殺してしまうというパターンが多いです。「雁とり爺さん」や「花咲か爺さん」が近い話です。動物は幸福をもらたす話は、中国でも語られています。
はなたれ小僧様の教訓
このタイプの話の教訓としては、
1.約束を守らないと、自ら幸福を手放してしまうことになる。
川に薪を投げ入れていたおじいさんに、お礼として条件付きで小僧さんを授けてくれた乙姫さま。最初のうちは、おじいさんも感謝しながら条件を守って大切に扱っていましたが、自分の欲が満たされることで、その時の気持ちを忘れてしまったんですね。約束を守ること、欲に飲まれないことが大事です。
2.立場や環境が変わっても、初心を忘れないこと。
貧乏から抜け出したおじいさんは、自分の力で得た財産ではなく、乙姫さまの好意によって与えられた財産であり幸福であることを忘れてしまった。それにより、ずべてが元の木阿弥になってしまったんですね。
誰かとの約束を守ること、そして常に初心を忘れず、慎ましく生きることの大切さを教えてくれる話です。
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