中国に見る出版市場の未来
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最終更新日:2023/04/26
出版市場
デジタル大国中国の現状
中国がデジタル大国だということはご存知でしょうか?
多くの人がスマートフォンを所有し、音楽や動画、電子書籍などのデジタルコンテンツを楽しみつつ、ライブコマースで物を買い、キャッシュレスで支払いを済ませています。
CNNICの第45回中国インターネット発展状況統計によると、2020 年 3 月末時点の中国のインターネット利用者数は約9.03 億人で、2018 年末に比べ 7,508 万人増加しました。インターネット普及率は 64.5%で、2018 年末に比べて 4.9 ポイント上昇した。世界的に見ても桁違いですね、、、。
またモバイルインターネット利用者数は約8.96億人で、2018 年末から 7,992 万人増加しています。インターネット利用者全体に占める割合は、2018 年末から 0.7 ポイント上昇して 99.3%となりました。ほぼモバイルでのインターネット利用ということがわかりますね。
どのようなことにインターネットをりようしているかというと、インスタントメッセージ、検索、ニュースなど上位を占める中、2020 年初めには新型コロナウイルスの感染拡大により、全国の小中学校および高校や大学でも新学期の開始が延期され、オンライン学習に切り替わったこともあり、オンライン教育サービスの利用者数が 2018 年末に比べて 110.2%の伸びとなっています。またライブコマースが好調に推移したことから、ライブ配信の利用者数が 41.1%の増加となり、これに伴ってオンライン決済の利用者数も 27.9%増加の 7.68 億人に増え、モバイル決済の利用者数も 31.1%増加しました。
児童書が牽引する中国出版市場
出版業界売上の内訳としては、全体が986.8億元(≒1兆7624億円)であるのに対して、ネット書店が774.8億元(1兆3838億円)の+1%、リアル書店が212億元(3786億円)の+4.09%となっていて、やはりネット書店が78.5%を占めています。しかし、これまでのネット書店での伸び率の趨勢からすれば著しく鈍化しており、ネット顧客がほぼ飽和状態に近づきあるとも言えます。とはいえ、やはり桁違いの数字ですね。
そんな中国の出版市場で、最大の売上を占めるのが児童書(0歳~14歳向け)です。
2021年の成長率は1%にとどまったものの、占有率は28.2%で依然として最大の占有率となっています。2020年がコロナ禍で巣ごもりと教育需要の高まりにより、児童書の売り上げが突出しましたが、それが正常に戻った感がありますね。児童書の分類をさらに細分化すると、2012年~2018年にかけては絵本売り上げが急増、2018年以降は科学普及関連が急増し、児童書の中で最大となり、三大部門売上比率は、科学普及24.7%、読み物22.8%、絵本18.4%となりました。
2021年ベストセラーのトップだったのは、『ガマさん、精神科医に診てもらう(蛤蟆先生去看心理医生)』(イギリスのロバート・デ・ボードの“Counselling For Toads: A Psychological Adventure”の翻訳書)。ジャンルについては学習漫画が最も好評で、『30分漫画(半小时漫画)』シリーズだけでトップ100のうちの12タイトルを、歴史上の人物をネコのキャラクターにして中国史を学ぶ『もし歴史がニャンコ一族だったら(如果历史是一群喵)』シリーズも8タイトルを占めます。
中国における書籍宣伝のカタチ
ほぼ8割を占めるネット書店での売り上げにおいて、宣伝の形式はどうなっているかというと、やはり動画が使われていました。
従来は本文と写真で書籍を宣伝していましたが、現在ではユーザー規模が8.7憶人に達するEコマースのサイトでの、ショート動画型コマースによるリアル書店での立ち読み体験に近い方式へと変わりつつあるようです。長くても3分にも満たないような短尺映像によるセールスで、日本で言うとBS放送でよく流れているテレビショッピングの簡易版のような広告が、じゃんじゃん発信されています。
とくに児童書販売ではその傾向が顕著で、ショート動画のEコマースでの売り上げが全体の6割を占めているといいます。Eコマースのサイトを従来のプラットフォーム型とショート動画専門型に分けると、後者のサイトで取り扱う書籍のタイトルは3万点強で、リアル書店やプラットフォーム型Eコマースの100万点と比べると限定されている。3万点の6割を占めているのが児童書である。
とりわけショート動画型専門店では科学知識普及関連が売上の3割を占めるのに対して、プラットフォーム型では児童読み物が最も良く売れ、自営型のEコマースでは絵本が良く売れるという。開巻では「販売・購買ルートの交錯と融合」現象が起こっているとして、「コミュニケーションのEコマース化、Eコマースのコミュニケーション化」と表現しています。
販売から宣伝までネットを駆使している中国。特にモバイルユーザーのユーザビリティーをメインに考え、戦略と戦術が組まれているのがわかります。
日本の出版市場が、中国と同じような状況になるにはまだ時間がかかりそうですが、確実にその時は近づいていそうですね。
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