枕神が教えてくれた年を取らない食べ物『七草』
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昔話
元旦から一週間が過ぎようとしています。
早いですね。
皆さん仕事も始まって、日常を取り戻した頃でしょうか。
今日から始業の学校も多いようですね。
お正月はいつもと違った食事をした人も多いのではないでしょうか。皆さん胃腸も日常をとりもどしましたか?
1月7日は七草粥の日ですね。
皆さん昨日は七草粥を食べましたでしょうか。
七草粥のルーツ
七草粥は、無病息災、長寿健康を願って食べますが、そのほかにも食べる理由があります。それは、お正月のご馳走で疲れた胃を、七草粥で休ませることです。春の七草やお粥には、胃をいたわる作用があるとされています。
七草粥を食べる風習は、中国から始まったとされています。中国の前漢(紀元前206~8年)の時代に、「元旦は鶏、2日は狗(犬)、3日は猪、4日は羊、5日は牛、6日は馬、7日は人、8日は穀」と、日にちを動物や人に見立てた占いが行われていました。唐の時代になると、1月7日の「人日(人の日)」に、「七種菜羹(ななしゅさいのかん)」という七種類の野菜を入れた汁物を食べて、無病息災を祈っていたそうです。
日本では今から1300年ほど前の奈良時代から、雪の間から出た新芽を摘み植物の生命力をいただく「若菜摘み」という風習がありました。万葉集や百人一首にも、七草(若草摘み)の歌があります。
中国から七種菜羹の風習が日本に伝わり、若菜摘みという風習と結びついて、現在の七草粥のスタイルになったといわれています。
春の七草、皆さん言えますか?
春の七草の由来は、平安時代に四辻の左大臣が詠んだ短歌
「せりなづな 御形はこべら 仏の座 すずなすずしろ これぞ七草」だと言われています。
春の七草の種類
その春の七草のそれぞれの特徴をご紹介しましょう。
セリ(芹)
名前の由来は、競り合うように生えることから。この名前に「(競争に)競り勝つ」という意味がかけられています。
ナズナ(薺)
ナズナはペンペン草とも呼ばれていますね。ナズナには、「なでて汚れを取り除く」という意味があるそうです。食べることで、解熱や利尿作用の効能があると言われています。
ゴギョウ(御形)
ゴギョウとは「人形」のことで、「仏のからだ」を表しており、縁起物とされています。
ハコベラ(繁縷)
「繁栄がはびこる」ということから、こちらも縁起物とされています。腹痛や歯槽膿漏の薬としても使用されてきました。
ホトケノザ(仏の座)
仏様が座っている座のように葉がつく植物。コオニタビラコと呼ばれ、黄色い花を咲かせます。整腸作用があるとされています。
スズナ(菘)
スズナは、かぶのこと。すずなは、神を呼ぶ鈴に見立てられたことから「鈴菜」と書くこともあります。消化促進、便秘解消の作用を持つと言われています。
スズシロ(蘿蔔)
スズシロは、大根のこと。「汚れのない清白」を意味していて、風邪予防に効くとされています。
どれもお正月の飲み食いで疲れた胃腸に効きそうですよね。
ちなみに秋の七草は、この7つ。
・萩(はぎ)
・薄(すすき)
・桔梗(ききょう)
・撫子(なでしこ)
・葛(くず)
・藤袴(ふじばかま)
・女郎花(おみなえし)
秋の七草は春と違って食べられません。
秋の七草については、また秋にご紹介します。
枕神が伝えた七草粥
では、今日も民話を1つご紹介します。
山形県の七草粥にまつわる民話で、タイトルは『七草』です。
むかし、ある人が、なんだかみんな年を取っていくのが不思議で、どうしてだろうと考えていました。
すると夜になって、枕神(まくらがみ)が立って、
「唐の国から大和の国から、鳥飛んできて、栄養のあるものを皆食ってしまうからだ。
だから、そいつを食われねえうちに、こっちの方で食ってしまわねばいかん。
せり、なずな、ごぎょう、はこべら、ほとけのざ、すずな、すずしろ。
こいつらを皆、唐土の鳥と大和の鳥とが来ねえうちに、叩いて食ってしまえば年を取らんのだ。」
と言いました。
それを聞いた村人たちは、その後どこの家でも正月六日には準備をして、七日に「なんなん叩き」というものをやるようになりました。
〽 なんなん七草
唐土の鳥と大和の鳥の
渡らぬうちに
なんなん叩き
七(なな)たたき
っと唱えながら、すりこぎ棒で七草を叩いて、七草粥というお粥にして食べるのです。
七草粥はとても栄養があったとみえて、それ以来どこの家でも「七草粥」と「七草たたき」が正月七日の恒例行事になったのでした。
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