現代文化のルーツを探る㊺ 暑気払い
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現代文化のルーツ
台風も上陸して、夏真っ盛りな日本列島。
コロナ禍で無観客でありながら、オリンピックも盛り上がっていますね。今年もまだまだ暑い夏が続きそうです。
夏といえば「暑気払い」ですね。ビアガーデンで枝豆をつまみに、冷たいビールを煽り仲間と語らう。暑気払いの典型でしょうか?でも最近はコロナ禍の影響で、そういった暑気払いは難しくなっていますね。みなさんオンライン飲み会などされているのでしょうか?
暑気払い=飲み会じゃない
さてこの「暑気払い」ですが、実は夏の飲み会の代名詞ではありません。
暑気払いとは、暑い夏に体を冷やす効果のある飲み物や食べ物を摂取することで、体の熱を放出する、いわば「暑さを打ち払うための日本独自の習わし」であり年中行事なんです。現在では、夏に開催する飲み会と思っている人も多いでしょうけど、本来は「暑気払い=飲み会」ではないんですね。
古代日本の宮中では、暑さをしのぐために氷を食べたり、甘酒を飲んだりする習慣がありました。江戸時代に入ると、庶民の間でも暑い夏を乗り切るために「薬を飲んで暑気を払うこと」として、暑気払いが行われるようになりました。ここでいう薬とは、例えば「みりん」のような、体の熱を取り去るための飲み物を指します。江戸時代前半には、みりんに焼酎を加えて飲みやすくしたものに『直(なお)し』『柳蔭(やなぎかげ)』といった風流な名前が付けられ、夏に冷やして飲む甘いお酒として人気でした。
暑気払いには麦を使った食べ物が選ばれますね。麦には体を冷やす作用があることから、漢方では陰の食材として知られています。小麦を使った冷や麦やそうめんは、冷たくして食べるので暑気払いに食べる物としても知られています。
体を冷やす食べ物に注目
また、瓜科の食べ物もよく食べられています。夏の定番となっているスイカは西瓜と書きますね。きゅうりは「胡瓜」、とうがんは「冬瓜」、ゴーヤは「苦瓜」、かぼちゃは「南瓜」と書くように、それぞれ瓜科の食べ物です。
スイカときゅうりは体温を下げる作用と、利尿作用があります。かぼちゃはベータカロテンが豊富で糖質も含んでいるため、夏バテしやすい時期にはもってこいの食材です。冬瓜は冬の瓜というより、冬まで持つという意味があり、昔から暑気払いの料理に使われてきました。
ゴーヤは独特の苦味がありますが、ビタミンCが豊富なため美容にも健康にも良い食材です。お浸しにしたり炒めても美味しくいただけます。瓜を含んだ食べ物は、栄養が豊富で夏バテ防止にぴったりな食材なので意識して食べるようにしましょう。また冷たい料理だけでなく、温かい料理や飲み物も適度に取り入れ、夏バテしないよう元気に過ごしてください。
また、江戸時代の川柳に『枇杷(びわ)と桃 葉ばかりながら 暑気払い』という句があります。枇杷の葉には体を冷やす効果があり、乾燥した枇杷の葉などを煎じた『枇杷葉湯(びわようとう)』を飲んで汗をかいて体を冷やしたり、熱を下げる働きがある夏野菜を食事に取り入れたりしていました。飲食の他にも、行水や川遊びをして暑さを打ち払っていました。
暑気払いの時期
暑気払いはいつ頃やるものなのでしょう?暑さを打ち払うためのものなので、暑い時ならいつでも良さそうですが、特にこのあたりがおすすめですね。
■二十四節気:夏至(6月21日頃~)
1年で最も高く太陽が昇る頃。夏に至ると書くように、本格的な夏が訪れる頃です。
■行事:夏越しの祓(6月30日)
茅の輪をくぐって半年分のケガレを払い、無病息災を願う行事。水無月(和菓子)を食べたり、お酒を飲んだりして、暑気払いをする習慣があります。
■二十四節気:小暑(7月7日頃~)
梅雨明けが近づき、本格的な暑さとなる頃です。
■雑節:土用(7月20日頃~)
立秋前の約18日間。季節の変わり目で大暑とも重なります。
■二十四節気:大暑(7月23日頃~)
梅雨が明け、最も暑い頃です。
■二十四節気:立秋(8月7日頃~)
暦の上では秋。この日以降、残暑となります。
■二十四節気:処暑(8月23日頃~)
処は止まるという意味で、暑さがおさまり、朝夕は過ごしやすくなる頃です。
このあとは立秋あたりがおすすめですかね。
今年は酒を飲むだけでなく、体を冷やす食べ物や飲み物を選んで暑気払いをしてみませんか?
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