現代文化のルーツを探る㉟ 絵本
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現代文化のルーツ
皆さん絵本はお好きですか?
僕は幼少期たくさんの絵本に囲まれて育ちました。両親がたくさんの絵本を与えてくれて、自分が主人公の絵本も作ってくれました。文章を読むよりも絵を眺めるのが好きで、物語の内容はあまり覚えていないけど、絵は鮮明に覚えているという作品がたくさんあります。「いない いない ばあ」「ぐりとぐら」「おおきなかぶ」「しろくまちゃんのほっとけーき」などのロングセラーは皆さんも読んだことがあるのではないでしょうか?
絵本の形態は時代によって変化し、今や絵本も電子の時代となり、スマートフォンのアプリやウェブサイトで絵本を読んだり、音声で読み聞かせが出来たりするものがたくさん出ていますね。
さて、この絵本はいつ頃生まれたものなのでしょうか?
今日は日本における絵本のルーツを探ってみます。
絵本の始まりは奈良時代のお経?!
日本の絵入り本の起源は8世紀、奈良時代の絵巻が最古のものとされています。
どのような内容かというと、奈良時代に生まれた「絵因果経」というお経だったのです。代表的なものとしては「過去現在絵因果経」などがあります。この絵因果経には、上の段にお坊さんやお坊さんの話を聞きにやって来た人などの絵が描かれていて、下の段に上の絵に対応する物語文が書かれています。絵と物語が書かれているという点で、今の絵本のルーツといえますね。
その後平安時代、鎌倉時代になると、絵本は絵巻物として広まっていきます。絵巻物は、絵と物語文を交互に繰り返し、巻物状にして作られています。この頃からすでに、絵の隣に文章が書かれてあるという作りになっています。今の絵本でも同様の形式がたくさんありますよね。代表作としては、今でも絵本でよく見かける「かぐや姫」の原作である「竹取物語絵巻」や、「源氏物語絵巻」などがあります。
その昔、絵と文章は別々に書かれていた
この頃の絵巻物の「絵」と「文章」ですが、実は同じ時期に作られていないものが多いんですね。有名なところだと、「竹取物語」と「源氏物語」。「源氏物語」も「竹取物語」も平安時代に書かれたものとされていますが、「源氏物語絵巻」として絵が描かれたのは鎌倉時代、「竹取物語絵巻」の絵が描かれたのは江戸時代といわれています。
室町時代後期になると、巻物の形から冊子の形になった奈良絵本が誕生します。読むにはちょっと不便な絵巻物から、より扱いやすい冊子に移行し始めたんですね。しかしこの当時はまだ印刷技術が発達していなかったため、奈良絵本は一つ一つ手作りされていました。そのため多くの人が奈良絵本を読むことはできませんでした。
江戸時代に入ると、一枚の版木に文字や絵を彫って印刷された本が普及したことで、室町時代に始まった御伽草子という短編小説に絵をつけた本が普及しはじめます。そして子どもたちに広がりを見せるようになるのは、江戸時代中期頃からといわれています。その始まりは、庶民に読まれた絵を主とする本で、草双紙(くさぞうし)と呼ばれていました。表紙の色から、赤本、黒本、青本、黄表紙、合巻などの種類があり、子どもたちは、その中でも「赤小本」という本を大人と一緒に音読をすることが多かったそうです。
絵本ブームによってロングセラーが生まれた
明治時代になると、様々な内容と工夫を凝らした独創的な絵本が生み出されます。そして終戦後、1960~70年に入ると「絵本ブーム」が到来し、さらに多くの絵本が生み出され、現在は600万を超える作品が存在しているそうです。
今から1300年前に誕生したお経の絵巻から始まった絵本の歴史。その後時を経て、現在の見開きの形となり、今もなお子どもたちに読まれている絵本。平安の昔に書かれた竹取物語が「かぐや姫」となり現代でも読み継がれているというのは、ロマンを感じますね。皆さんも是非好きだった絵本を読み返してみませんか?
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