現代文化のルーツを探る㉞ 衣替え
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現代文化のルーツ
日に日に蒸し暑さが増してきましたね。
今年の梅雨入りは、九州から東海にかけての全ての地方で、統計史上1、2位という記録的な早さとなったようで。梅雨入りしていない関東や東北などでも、ぐずついた天気が続いていますが、現状では梅雨明けも早くなるという見通しはなく、全国的に長梅雨となる可能性があるようですね。
6月まであと1週間ほどありますが、今週末あたりそろそろ衣替えを考えている人もいるのではないでしょうか?さて、この衣替えですが、官公庁や学校は6月1日と決まっていますね。なぜ6月1日なのでしょうか?
今日は衣替えのルーツを探ってみたいと思います。
江戸時代は4回の衣替えがあった?
「衣替え」はもともと中国の風習で、旧暦の4月1日に冬服を夏服に、10月1日に夏服を冬服に着替えていたことを指していました。日本に伝来したのは平安時代の頃で、中国と同様に年2回、夏と冬の装束を入れ替える貴族の間だけの行事でした。当初は貴族社会だけの習慣で、年に2回夏装束と冬装束に替えるだけでした。
それが江戸時代になると衣替えは年4回に増え、江戸幕府は季節の衣で出仕することを制度化します。さらに期間も着るものもそれぞれ定められていました。
・4月1日〜5月4日まで 袷(あわせ)という裏地付きの着物
・5月5日〜8月末まで 帷子(かたびら)という裏地なしの単衣仕立ての着物を着用
・9月1日〜9月8日まで 1週間程、また袷を着用
・9月9日〜3月末まで 綿入れ(表布と裏布の間に綿を入れた着物)を着用
といったように細かく定められていたそうです。
衣替えは衣服を長持ちさせる秘訣
年4回といっても、当時の人々がみな季節ごとの着物を持っていたわけではないので、季節が変わると手持ちの着物をほどいて、次の季節用に仕立て直し、生地の傷みを抑える虫干しも行われていました。今でも虫干しという人もいますよね。手持ちの衣装を複数の季節で、何年にも渡って着るために、衣替えは必要な行事だったのですね。
因みに皆さん「四月一日(四月朔日)」書いて「わたぬき」さんと読む名前の人にあったことはありますか?富山県を中心とした日本海側に多い名前だそうですが、これは冬の間「綿入れ」という表地と裏地の間に綿が入った着物を着ていたのを、旧暦4月1日に綿入れの綿を抜き、裏地付きの春用着物である袷(あわせ)に仕立て直したところから、四月一日(四月朔日)と書いて「わた」を「ぬく」「わたぬき」となったそうです。人の名前にも昔の衣替えの風習が残っているんですね。
6月1日の衣替えは明治維新から
明治維新で新暦が採用されると、夏服は6月1日~9月30日、冬服が10月1日~5月31日となりました。これが現代の私たちの生活にも残っているのです。学校や官公庁、制服のある企業などでは、全国的に6月1日から夏服、10月1日から冬服に切り替えていますね。
それにしても、平安の昔からなぜ日本人は一斉に衣替えをするのでしょうか?もちろん、6月1日だから全員強制的に半袖!ということはないですが、それまでより若干涼しげな格好を意識するようになりませんか?色合いも秋冬の色から春夏の色へシフトさせていきますよね?ここには日本ならではの感性があります。
日本人は古来より、服装は自分のためだけのものではないと考え、着ている服が周りの人に与える影響も考慮してきたのです。特に大切にしてきたのが季節感。季節を先取りするのは「粋」だけど、過ぎた季節をひきずるのは「野暮」なことだとされてきました。ですので衣替えで季節を先取りし、周りの人にも涼しげな印象を与える努力をしていたのでしょうね。
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