現代文化のルーツを探る㉝ 海苔
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現代文化のルーツ
皆さん海苔はお好きですか?
おむすびや海苔巻き、おもちに巻いたり、蕎麦やラーメンに乗せたり、そのまま食べても美味しい海苔。調理法も食べ方も数えきれないほどあって、私たちの食生活に欠かせないものになっています。
そんな海苔ですが、一体いつ頃から食べられているのでしょうか?
今日は海苔のルーツを探ってみましょう。
大宝律令に登場する海苔
海苔の起源ははっきりとしていませんが、海苔が登場する最古の文献は、日本で最初の法律書である『大宝律令』(701年)とされていて、税制の対象として「紫菜(むらさきのり)」が他の海藻類とともに登場します。奈良時代初期に書かれた、現在の茨城県の郷土誌「常陸国風土記(ひたちのくにふどき)」には、ヤマトタケルが浜辺一面に海苔が干しているのを見たという記述があります。
また、710年に作られた平城京では、海藻類を売る「和布店(にぎめだな)」、昆布や海苔を佃煮のように加工したものを売る「藻葉店(もはだな)」という市場が存在したといわれていて、この頃から日本人の生活に海苔が定着したと考えられます。
平安時代になると、927年に編纂された朝廷の運営マニュアルである『延喜式』に、租税の対象として海苔が登場します。また、平安中期に成立したとされている『うつほ物語』の中で、「紫海苔」や「甘海苔」が贈り物として使用されたという記述があります。当時海苔は天然のものを採っていたためとても貴重な高級品だったため、貴族社会の中では、海苔が珍重されていたんですね。
鎌倉時代以降は、中国から様々な食文化が到来します。それによって貴族社会における海苔や海藻は地位は低くなりますが、そのかわりに精進料理などで使われるようになりました。
海苔が庶民の味になった江戸時代
貴重品だった海苔が庶民の間に広まるのは江戸時代になってから。
海苔が好物だったという徳川家康に、新鮮な海苔を献上するため、現在の東京品川・大森を中心とする東京湾で海苔の養殖がはじまりました。養殖した海苔は、和紙の製紙技術を用いて四角い紙のように加工されました。これが「浅草海苔」と呼ばれ、現在私たちが知っている「板海苔」の原型ですね。
江戸幕府では、献上された海苔を市場で売り財源にもしていました。これをきっかけに海苔は江戸の特産品として、庶民にも親しまれるようになっていったのです。
ちなみに「ノリ」という名前の由来は、海藻類がヌラヌラしている様子「ヌラヌラする」の「ヌラ」が訛ったものといわれており、「海苔」という漢字が当てられたのも江戸時代と考えられています。
松尾芭蕉の句の中にも、海苔について歌ったものがあります。
「海苔汁の手際見せけり浅黄椀」
芭蕉が浅草に住む弟子の千里(ちり)を訪ねた際に、おいしい海苔汁を色合いのよい浅黄色のお椀に入れてだしてくれたので、お礼に詠んだ句だそうです。
「衰えや歯に喰ひあてし海苔の砂」
当時の海苔は砂が交じっているものが多く、食べるとよく砂粒に当たっていたとされています。若い頃ならば吐き出せば終わりですが、年齢を重ねるとそうもいかない。砂粒が歯茎に食い込むような感じがして痛みがともなう。そんな老いへの憂いを詠んだ句です。
海苔は栄養バツグン!
奈良時代から食されるようになり、平安貴族社会の貴重品として珍重され、精進料理を経て庶民の味となった海苔。私たち日本人は長い間海苔と共に生きてきたんですね。
海苔の3分の1は食物繊維でできていて、野菜に含まれる食物繊維よりも柔らかく、胃や腸を傷つけずに穏やかに整腸作用を促すそうです。食物繊維のほかにも、ビタミン、ミネラルなどが豊富で、1日に2枚程度食べることで、体に必要な栄養素を取ることができると言われていますよ。
最後に海苔の保存方法について。海苔は湿気ると変色し風味が落ちるので、冷暗所で外気にふれないように保存することが大事。最も良いとされている保存方法は、タッパーやビニール袋などの密封容器に入れ冷凍庫で保存します。この方法で保存すると、一年くらいは風味を保ったまま保存する事ができるそうです。試してみて下さいね。
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