主体性を育むフィンランドの子育て
主体性を育む子育てとは
主体性と自主性の違いは何か?
よく聞く言葉だが、明確な区別をせずに使っていた気がする。ネットではこんな風に書かれている。「自主性」とは、他人からの干渉や保護を受けず、独立してことを行う態度や性質のこと。明確に定まっている「やるべきこと」を人に言われる前に率先して自らやる(行動する)こと。「主体性」とはどんな状況においても「自分の意志」や「判断」で責任を持って行動する態度や性質のこと。「主体性」がある人は、何をやるかは決まっていない状況でも自分で考えて、判断し、行動するということだ。主体性の方がより自分の意思で行動できるというイメージが強い。北欧5カ国と呼ばれるデンマーク、スウェーデン、ノルウェー、フィンランド、アイスランドは、この「主体性」が子どもの頃から身についているという話だ。
そんな国のリアルな子育てはどんなものなのか?「子どもの主体性を育む『フィンランドの子育て』を語る パネルディスカッションイベント」に参加してみた。国連の幸福度調査で2年連続世界一の座についたフィンランド。世界の研究者は幸せの秘訣について、この国の子どもたちに注目している。イベントのキーワードは「遊びを取り入れた保育」。パネラーには、フィンランドの保育士資格を持ち、自身も2児の母でもある現地在住のジャーナリストの靴家さちこ子氏と、九州ルーテル学院大学准教授で、フィンランドの保育・幼児教育に注目する三井真紀氏だ。
もともと天然資源に乏しいフィンランドは、長くスウェーデンとロシアに支配下にあった経験から国民こそが国の宝として、1968年頃から教育改革をスタートさせる。男女、家庭環境、財力に関係なく、万人に教育の機会を提供することを提唱し、新たな課題に立ち向かい、それを解決するための思考力や、問題解決能力を身につけた人材を育てるという政策を打ち出した。これにより、プレスクールから大学院までの授業料は無料化され、さらに教科・科目を横断したクロスカリキュラムが取り入れられた。国全体が「主体性」を持った人を育てる教育を行ってきたのがフィンランドなのだ。学校教育の場であれば、このような教育方針を実現することは難しくない、しかし家庭ではどうなのか?一般家庭では主体性を育むためにどのような子育てをしているのか?そこが疑問だった。
無理をせずシンプルに考える
パネラーの靴家氏の子育て事例を聞いてそこも合点がいった。親子の関係、特に幼少時においては、どうしても親が子どもをコントロールしてしまいがちだ。そのつもりがなくても無意識に自分の管理下においてしまう。情報過多の現代、否応無く子育てに関する様々な情報が入ってきて、こうしなきゃいけない、あれもしなきゃいけない、これはダメ、ととにかく無理してしまうことも多い。靴家氏の語る子育て方法を聴いていると、「なるほど、全然無理する必要はないんだな」と感心した。
子どもを主体として捉え、本人がどういう思いなのか?本人が選び答えを出すよう緩やかに導いていく。子どもが何かに困ったり、悩んでいる時、つい親が答えを出してしまいがちだが、そこは親子相互に主体性を持ち、子どもの領域に入り込みすぎないように気をつけなくてはいけないと実感した。そのためによく話しを聴くということが大事だ。
以前当社から電子絵本を出版した、親業インストラクターの今井真理子氏が「能動的な聞き方」について教えてくれた。能動的な聞き方には3つのパターンがある。
1.相手の話を繰り返す。
子「成績が下がっちゃった。」
親「成績、下がっちゃったのね。」
2.相手の話をまとめて、自分の言葉で言いかえる。
子「成績が下がっちゃった。」
親「前より悪かったのね。」
3.そういう言葉を口にした相手の気持ちをくむ。
子「成績が下がっちゃった。」
親「がっかりしたんだね。」
いずれも「あなたの話を理解しています」というメッセージを子どもに送るのだ。靴家氏の話しの端々にもこの「能動的な聞き方」が感じられた。
イベントで話しを聴いて、子どもの主体性を育むポイントは、「親ががんばりすぎない」「無理しすぎない」「シンプルに考える」ということではないかと思った。どうしても周りの情報に流され、影響されて、こうしなければいけないと考えてしまう親御さんも多いだろう。国民性もあるのでなかなか難しいことではあるが、子どもを主体として捉え、少しずつフィンランド的子育てを実践してみるといいのではないか。フィンランドの保育には、「子どもの主体性」を育むヒントがたくさん隠されている。靴家氏の著書にも、記事中で紹介した今井真理子氏の絵本から、そのヒントを得ることができるかもしれない。
『住んでみてわかった 本当のフィンランド』靴家さちこ 著
https://www.amazon.co.jp/gp/product/476621241X
『春ちゃんのマシュマロタイム』今井真理子 著
https://www.amazon.co.jp/dp/B07NTG8KQV/
関連記事
-
ブルガリアと日本の架け橋eブック
2019/01/19 |
日本で売っているヨーグルトと聞いて、パッと頭に浮かぶのはどんなイメージだろう? 多くの人がおそらく...
-
各地で進む電子図書館
2018/04/01 |
茨城県鹿行地域にある潮来市。 1960年代にヒットした、花村菊江さんの「潮来花嫁さん」で有名ですね...
-
読書バリアフリー化は進んだのか?
2020/06/15 |
法律施行から1年目の結果は? 2019年6月21日、衆議院本会議において「視覚障害者等の読書環境の...
-
志と想いを世界へ届けよう!
2017/01/19 |
先日、一般社団法人エシカル協会主催の「エシカルコミュニティ新年会」にてプレゼンをさせてもらいました。...
- PREV
- 「世界を解く数学」で数の世界を知ろう
- NEXT
- 最高の授業を世界の果てまで届けよう!