中国で売れている児童書 電子書籍での市場参入はあるか?
児童書が拡大する中国出版市場
日本でも800万部を超えて戦後最大のベストセラーとなっている黒柳徹子『窓ぎわのトットちゃん』。中国版発行部数は、日本を上回る1,000万部を突破したという。また日本でも人気の東野圭吾は、いま中国で最も売れる作家であり、中国の多くの書店が入り口付近の平台で東野作品の中国版を大々的に展開しているそうだ。さらに、山岡荘八の『徳川家康』中国版は累計300万部販売されている。日本の作品は中国で販売数を伸ばしているのだ。
2017年の中国書籍市場は約803億元(約1兆3000億円)、その中で児童書は最も大きい約25%を占めるジャンルだという。いま中国では子どもの情操教育に熱心な親が増えており、それが児童書市場拡大の直接的な要因といわれているようだ。日本で児童書を販売するポプラ社は、2004年に北京で蒲蒲蘭を設立した。設立以来10年ほどは赤字続きだったものの、ここ数年で絵本の市場が急拡大したことにより、2016年には年間売上高が1億元(約17億円)を超えたという。中国では紙の書籍市場が伸びる一方で、音声配信などを含む電子書籍市場も急拡大を続けている。さすがに市場のパイが大きい中国。流れに乗ると急加速する。
「ならば中国で本を売ろう」と思うわけだが、中国での出版は許可制で、いまも出版は外国資本はおろか地元民間資本にも開放されていないのが現実だ。政府機関が割り当てた「書号(国際標準図書番号)」がなければ出版物を発行することはできず、「書号」が割り当てられるのは、2017年現在で国営出版社584社だけだ。日本の出版社はどうしているかというと、中国の出版社に版権を売るだけで、蒲蒲蘭をはじめとした外資法人は、国営出版社から書号を買って出版している。
電子書籍によって中国への参入は加速するか?
個人であっても電子書籍がセルフパブリッシングできるamazon社のKindle Direct Publishing(KDP)、そして読み放題のKindle Unlimitedにより、日本でもコミック以外の電子書籍がだいぶ読まれるようになったと思う。新刊では紙と電子が同時にリリースされるケースも少なくない。KDPを活用することで、日本はもちろん世界13カ国のマーケット(アメリカ、イギリス、ドイツ、フランス、インドなど)に電子書籍を出版することもできる。世界各国のユーザーは、13カ国のKindleストアにアクセスすることで電子書籍をアプリにダウンロードして読むことができる。海外在住の日本人であれば、日本語の本も電子版で読むことが可能だ。多言語化することで、各国における読者をさらに増やすことができるだろう。
中国にもamazon.cnがあり、その中には当然Kindleストアが存在する。前述した通り、中国では電子書籍市場も拡大している。しかしながら、KDPを使って電子書籍を中国に販売することはできない。許可制である以上当たり前の話ではあるが、いずれセルフパブリッシングでも販売が可能になるだろうと予測している。許可に関してもAIを駆使することで、内容を検閲し判別するようになるのではないだろうか。その時中国の電子出版市場は、今よりさらに拡大し活況となるはずだ。
amazon社によって、長らく続いてきた日本の出版業界制度に、ヒビが入れられようとしている。長引く日本の出版不況。市場を世界へとシフトさせ、今のうちに各国での新たな仕組みでの販売を考えておく必要があるのではないだろうか?
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