出版市場に押し寄せる電子化の波
伸び悩む出版市場で電子出版が増加
出版業界の調査研究機関である公益社団法人全国出版協会・出版科学研究所が、1月25日発行の『出版月報』1月号で、2018年出版市場規模を発表した。紙と電子出版を合わせた市場規模(推定販売金額)は前年比3.2%減の1兆5,400億円となり、電子出版市場のみでは2,479億円(同11.9%増)と推計している。
紙の出版物推定販売金額は、前年比5.7%減の1兆2,921億円、書籍が6,991億円(同2.3%減)、雑誌が5,930億円(同9.4%減)となった。雑誌については月刊誌(ムック・コミックスを含む)が同9.3%減、週刊誌が同10.1%減。月刊誌のうち、定期誌が約9%減、ムックが約12%減、コミックスが約7%減となっている。
電子出版市場では、電子コミックが前年比14.8%増の1,965億円、電子書籍(文字もの)が321億円(同10.7%増)、電子雑誌が193億円(同9.8%減)となった。電子コミックは4月に海賊版サイトの「漫画村」が閉鎖されてから復調している。電子雑誌は「dマガジン」など読み放題サービスのキャリアショップ契約手続きの見直しにより、会員数が2年連続で減少したことが影響しているとのことだ。
出版市場全体を見ると右肩下がりの状況だが、電子出版特に電子書籍(文字もの)が伸びてきているのが分かる。コミックや雑誌は、既刊の電子化作業が比較的容易なため、電子化が早い段階で進みラインナップも充実した。それに対し文字ものは、テキストデータがない既刊本を、端末の向きにより文字が流動するリフロー型にする作業の難易度が高く、ラインアップがなかなか増えないのが現状だ。先行して電子化が進んでいた雑誌が、紙同様に伸び悩みを見せてきたようだ。一方で、これまで電子化が困難だった文字ものが、電子化の技術進化に伴いラインナップが増え、それに伴い読者が増加していると考えられる。
電子出版に追い風が吹き始める
学校教育法など一部改正で、4月からデジタル教科書の併用が開始される。これから小中高等学校の児童・生徒に、タブレットなどのICT端末が1人1台のレベルで普及していくことになる。これと合わせて、教科書以外の一般電子書籍の販売も伸長していくことが予想される。すでに教科書供給会社の一部企業が「School e-Library」と称して、小中高等学校向けの電子図書館サービスを提供開始することを発表している。児童生徒向けの書籍出版社であるベネッセなど既存サービスにとっても、絶好の機会となるだろう。
さらに、視覚障害者などによる著作物の利用機会を促進する「マラケシュ条約」を日本も批准し、2019年1月1日から発効した。これにより、読み上げ機能のある電子書籍貸出サービスやオーディオブックが、公共図書館などへ本格的に導入されそうだ。オーディオブック市場を見ると、オトバンク、アマゾン傘下の「Audible」をはじめとして、「Google Play ブックス」「Apple Books」「Reader Store」など、配信元も充実し始めている。今後は電子書籍ストアが統廃合され、オーディオブックのプラットフォームが充実していくことが予測される。
出版不況と言われる中で、大きく変化を見せる電子出版。
これから本を出版したいと思っている人はもちろん、すでに出版したみなさんも是非電子出版に注目して頂きたいと思う。そしてどのように電子書籍が活用できるかを考えてみて頂きたい。
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