オンライン書店が終了 その時コンテンツはどうなる?
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オンライン書店, 電子書籍
オンライン書店が終了後の問題
出版業界をよく知らない人でも、「取次」という言葉は聞いたことがあるかもしれませんね。出版社から出版された本を、本のカテゴリーや作風などを鑑みて、全国の書店へと配本をしている、まさに取り次いでいるのが「取次会社」の仕事です。出版物取次においては、日本出版販売(日販)と共に2大大手と言われてるのが株式会社トーハン(以下トーハン)。トーハンは出版物流通・取次の分野で、コンピュータシステム・オンラインシステムを導入するなど、革新的なシステムを真っ先に取り入れ、業界の最先端を進んでいる会社です。
そのトーハンが、2012年2月にオープンしたのが、オンライン書店Digital e-hon。Digital e-honは、同社が2009年から運営していた医療従事者向け電子書籍販売サイト「Medical e-hon」を引き継いだ形で、医学書が充実していました。また、一般の雑誌や書籍、漫画などもDRM付きPDFで販売されていました。トーハンはこのDigital e-honを、2018年4月27日をもってサービス終了とすることを発表しました。ただ、購入などのサービスは4月27日で終了するものの、すでに購入済みの本や雑誌などの電子書籍コンテンツは、2018年7月31日までダウンロードと閲覧することが可能とのこと。さらに、本や雑誌コンテンツを購入済みのユーザーには、購入時の税込価格累計額相当のDigital e-honポイントを進呈するということです。Digital e-honポイントは、「全国書店ネットワークe-hon」のポイントおよび電子書籍サイト「BOOK☆WALKER」のコインに、2018年7月31日まで交換が可能としています。
以前からよく言われていますが、電子書籍は所有することが出来ないため、もしオンライン書店がサービスを終了する場合、その書店で購入したコンテンツは、閲覧が出来なくなってしまうという問題があります。今回のDigital e-honのように、数ヶ月は閲覧が可能ということもあると思いますが、サービスのサポートがなくなったり、アプリが利用できなくなったり、OSのアップデートによって動作が保証されなくなるということもありますね。電子書籍コンテンツを読める状況を維持するためには、OSアップデートを回避しなければならないという問題も出てきます。しかし、せっかく購入したお気に入りの本が読めなくなってしまうのは、読者にとっては困った話です。サービスが終了して利用できなくなるので、購入金額に相当するポイントを返すというのも読者への配慮なのでしょうが、ポイントをもらっても既存のダウンロードコンテンツが読めなくなってしまうことには変わりはありません。
各種オンライン書店は読者目線の対応を
今後も、こういったオンライン書店のサービスが終了後する可能性はあるかと思います。その場合、書店側としては、サービス終了後もしばらく閲覧できる状態にするとか、別のアプリで閲覧が可能にするとか、PDFでダウンロードできるようにするなどの対応が必要になるでしょうね。また、サービス終了に伴うトラブルを回避する方法として、DRMフリーの電子書籍を利用することも考えられるかもしれません。DRMはデジタルコンテンツの違法コピーを防ぐ技術のことですが、これを採用していないストアで購入した電子書籍コンテンツは、仮に購入元のサービスが終了も利用し続けることができます。
本を読む人としては、本を所有するということに重きを置いている人も多いのではないでしょうか。そのために、気に入った本や残しておきたい本は、電子書籍ではなく紙で購入するということも耳にします。現在のペーパーレスの動きに伴い、本の電子化も少しずつ進んでいくでしょう。現時点で読者としては、紙の本と電子書籍を目的によって買い分ける必要があるかもしれませんね。書店もアプリもバラバラ、各社が独自のDRMを設定している現状を、もう少し読者目線で変えていく必要があるのではないかと、個人的には思いますね。
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