出版社倒産を考える
先日の日本経済新聞で、スポーツ関連の出版社で知られるスキージヤーナルが1月30日、東京地裁から破産手続き開始の決定を受けたという記事が出ていました。(https://www.nikkei.com/article/DGXMZO27541830R00C18A3X12000/?df=2)
スキージャーナルは、「月刊スキージャーナル」「月刊剣道日本」といった専門書を扱っていて、コアなファンを抱えていたにもかかわらず、紙媒体の売り上げ減少が止まらず、破産の道を辿ってしまいました。「月刊剣道日本」も武道関連雑誌として剣道の愛好家に人気だったようですが、、、。こういった専門誌がなくなっていくのは、とても残念ですね。
僕が学生の頃、様々なスポーツ関連の月刊誌が書店に並び、そこにはたくさんの読者が集まっていました。僕はバスケをやっていたので、月刊バスケットボールを貪るように読んでいましたね。当時はインターネットなどなくて、ましてはスマホでキュレーション記事を読むなんてことはSF映画の中の話でしたから、月に一度発行される月刊バスケがとても重要な情報源でした。(あとはバスケ漫画のDEAR BOYSかな)
情報を無料で取得することが当たり前になってきた
インターネットとスマホの登場で、専門性の高い記事も無料で読めるようになり(そうでもない記事もいっぱいあるけど)、探せば探すほど溢れ出てくるようになりました。さらに、SNSによって発信者の素性が明確になり、より身近な存在になり、ほぼ毎日信頼できる人から情報を得られるようになったのです。そうなると、情報はすぐにアクセスすればすぐに手に入るものという認識も強くなり、毎月一回出される本を書店に行って買うという行為は、とても手間で無駄なことだと思えてしまうのではないでしょうか?実際に僕も、書店はぶらりと行って本との出会いを楽しむ場であって、あの本が欲しいからという理由では行かなくなりました。
それでも、前出の「月刊スキージャーナル」や「月剣道日本」は根付い良いファンがいたわけで、やはりまとめられた情報を書籍や雑誌の形で読みたいという人が多くいるのだと思います。それが本の良さでもありますからね。
このような事例を見ていると、紙の出版物は今後どんどん減っていくことを予想してしまうのですが、紙の本は残していくべきものであり、決してなくならないものだとも思っています。僕は電子書籍の制作・出版を生業としながらも、常に紙の出版物との共生を考えています。紙から電子に切り替えるのではなく、電子書籍を使って紙の本の購入を促すことや、紙ではできないことを電子で、電子では実現しきれない部分を紙で行うことで、双方のメリットを生かした出版の形が創れると考えています。
出版社が倒産することで与える影響
出版社が倒産すれば、作品の多くは絶版となり、中古本としてしか市場で見ることは出来なくなります。人気の雑誌も廃刊になってしまう。それは出版界にとっても読者にとってもとても不幸なことです。そうならないためにも、今後さらに増える情報量と、新たな技術、目まぐるしく展開される状況に、いかにして出版業界が対応していくかを考えなければいけないと思います。
いままさに、出版社の事情で新しい出版企画が頓挫してしまったという相談を受けています。電子書籍を使ってこの出版を実現したいと。内容はこれからの僕たちの暮らし、地球環境にとってとても重要なことが書かれています。是非ともこの本を出版したいと思います。本は著者や作り手の想いが詰まった、読者への素晴らしい贈り物です。少しでも多くの本が、求めている読者の元に届くように。業界全体の変化と融合が必要な時が来ていますね。
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http://www.g-rexjapan.co.jp/omoikaneproject/author201803/
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