学習環境の多様化と電子書籍の活用
「ステップアップ塾」という無料塾があります。
2014年に開塾した、学びたいのに家庭環境により学べない子どもたちを支援するため、また経済的事情などによる教育格差を是正するため、ひとり親家庭など学習サポートを必要とする小・中学生を対象に設立された無料塾です。運営団体はNPO法人維新隊ユネスコクラブ。この団体の会員による団体会費、また企業からの寄付や民間の助成金を用いて運営を行っています。その代表が濱松敏廣氏。
学習+メンタルケアの環境づくり
ちょうど去年の今頃、初めて私塾山元学校でお会いして、僕の自宅まで来てくれました。というのも新しい取り組みをするための視察として。
ステップアップ塾は、具体的なカリキュラムとして、
①「学習指導」
②「給食」
③「課外授業」
④「“ココロ”メンテナンス」(メンタルケア)
の4活動を通じて子どもたちに社会からの愛情を注ぎ、福祉的かつ平和的な循環型教育モデルの中で、子ども達の学力向上を目指しています。
学習指導は、学習テクニックや教材よりも「心を安定状態に導く要因」が必要であると考え、生徒の心を少しでも安定させるために、現役の学生さんが子ども達への学習指導を行っています。距離感が出やすい大人ではなくで、とても身近な優しいお兄ちゃん、お姉ちゃんが教えてくれることで、頑張ってみようと思う。それが心の安定に繋がるんですね。
またステップアップ塾は、給食の提供にもこだわっています。教育格差の渦中にある子ども達は、食事を満足に食べられない場合がたくさんあるのです。大人数でワイワイと楽しく食事をする。それも生徒の心の安定に繋がりますね。さらには、この給食の時間で、マナー教育もしているんです。「いただきます」や「ごちそうさま」の挨拶や、食べ物を残さないなどの指導をしています。
そして課外授業。
社会との関わりを持ち、子ども達のコミュニケーション力の向上のために、ゴミ拾いやお茶会などの活動を行なっています。僕としては、うちの畑を使って作付けや草取り、収穫の体験などしてもらい、食べ物(野菜)がどんな過程を経て出来るのか、そのプロセスに触れることが、食育の一環になるのではないかと思っています。みんなでトウモロコシを焼いたり、芋掘りをしたり、土にふれ楽しくやれることが、ココロのメンテナンスに繋がるのではないかと思っています。
学習の場で電子書籍が果たせる役割とは
そして今、ステップアップ塾は文字通りステップアップしようとしており、前述した新しい取り組みを進めています。まだその全貌は明かせませんが、より子ども達が通いやすく様々な制限を受けることなく、学習できる環境が創られていくと思います。そこには、ウェブやインターネットを使った施策も含まれています。個人的にはここに電子書籍を活用できるのではないかと思っています。
いま、たくさんの方から書籍の電子化や電子書籍出版のお話を頂いています。その中で、研究者の方や大学教授の割合が多く、皆さんご自身の研究内容を本としてまとめて、発信していきたいと考えておられます。それは自分のためではなく、社会のため、後世のためであり、間違いなく貴重な財産となるものです。
「学習テクニックや教材」という件がありましたが、僕はこの「教材」に電子書籍が使えると考えています。紙の本にして配るには印刷費もかかるし、製本データを作るのも時間と手間がかかります。電子書籍であれば、講師である学生の皆さんでも、簡単にデータを作ることができます。オリジナルの参考書ですね。それをインターネットで送り、Skypeなどを繋げば、全国どこにいても同じように学習ができるわけです。さらに、研究者の皆さんの本がライブラリに並んでいれば、大学生や社会人になっても学べますよね。(その頃はもう塾生ではないだろうけど…)
電子書籍は売れるか売れないか。それはもちろん大事なことで、著者としてはたくさん売りたいのは当たり前。ただ、それ以外のところでも電子書籍の有益な活用方法があると思うのです。これからのステップアップ塾の取り組みを、ぜひ電子書籍を使って応援していきたいと思います。
日本の研究者、学者のみなさん、既刊本の電子化や電子書籍で出版しませんか?
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