電子書籍と出版権
先日、とある生物学者の方の既刊本を電子書籍させて頂きました。
まだリリースしていないので、詳細はリリース後にお伝えしようと思いますが、小さな小さな虫の研究の第一人者の方の本です。その分野においては世界でも有数の方なんですよ。
結構な数の著書を書かれているのですが、電子書籍になっているものは一冊もなく、今回初めての電子書籍となります。電子書籍化するにあたり、何社の出版社にお話をさせてもらいましたが、あまりいいお返事を頂けないところが多かったですね。自社でやるから手を出さないで欲しいという会社、電子書籍にするのは勝手だけど、出版権は買い取ってもらうという会社、紙の書籍の出版権もうちに取られてしまうと思った会社もありました。
意外に知られていない電子の出版権について、まとめてみたいと思います。
電子書籍化と出版権
「出版権」は、もともとは著作権者の権利であって、出版権設定契約があってはじめて、出版者が出版権を持つことができます。著作権者と出版社との間の契約によって、出版社は契約期間中「出版」という形による著作物の「複製」を独占的に行うことができるのです。また出版権は、印刷物の出版や公衆送信を行うものに対して設定することもできます。
平成26年の著作権法改正では、電子書籍(パッケージ型、配信型を共に含む)の出版権も明記されました。それにより、電子書籍を流通・販売する際に働く、公衆送信権を出版者を出版者が独占し、かつ契約関係にない第三者に対しても出版権の主張をすることが可能になりました。もし、過去に出した本を電子書籍化する場合、出版権の設定契約がどこまでなされているかが、重要になってきます。紙の出版だけなのか、電子を含むのか、契約書の確認が必要となります。2010年以前は、日本で電子書籍というものはなかったので、それ以前に出版された本については、ほぼ間違いなく紙の本の出版権契約しかしていないと思いますね。もしかしたら、条文に電子的な配信の一文があるかもしれませんが。
電子書籍化と著作権
ちなみに「著作権」は、著作者によって創作された文芸、音楽、絵画、映画などの著作物を保護するもので、著作物は創作されれば手続きがなくても、著作権で保護されます。著作権法では「思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」(著作権法第2条第1項第1号)が、著作権で保護される対象としています。
文芸、音楽、美術、学術に属する作品などがその代表的なもので、写真、映画、コンピュータプログラムなどの著作物についても、保護の対象となります。著作物の著作権は、著作者の死後50年が保護期間とされています。
著作権には「著作者人格権」もあります。著作者人格権は、著作者がその著作物を公表する権利としての「公表権」、氏名の表示・不表示(筆名等も含む)を決定できる「氏名表示権」、著作物の改変や著作者の意図しない利用などを禁止できる「同一性保持権」で構成されます。
基本的に著作者の許諾なしに、その著作物は利用できないことになっていますが、私的使用のための複製や、図書館における複製、教科書などへの引用、視覚・聴覚障害者のための複製、営利を目的としない場合は、著作権が制限されます。書籍のタイトルは、一般的には著作権の対象ではないとされているんです。ですので、同じタイトルの本が出ても、著作権の侵害というのは難しいかもしれません。
オモイカネブックスでは、絶版本や品切れ重版未定になってしまった本の電子書籍化をお手伝いしています。電子書籍にすることはもちろん、どうしても紙で欲しいという方のために、オンデマンドの印刷も可能です。もし、過去に本を出版されていて、電子書籍化に興味がありましたら、ぜひお声がけ下さい。その際には、過去の出版契約書のご確認をお忘れなく。
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