ドイツで変わり始めた電子書籍のカタチ
■ドイツの電子書籍が伸び悩み始めた
ドイツ市場に電子書籍が導入されてからおよそ10年が経つ。
amazon社のkindleのほか、ドイツでは電子書籍端末「tolino(トリノ)」の販売が好調だった。「tolino」は、ヨーロッパ最大の電話通信会社ドイツテレコムと、大手書店4社(タリア、ウィルトビルド、フーゲンドーベル、ベルテルスマンのブッククラブ)が始めた共同プロジェクト名であり、明確にアマゾンの対抗軸として構想されていた。2013年3月にサービスを開始した当時は、「kindle(キンドル)」のシェアを上回ったというニュースが伝わってきていた。
このtolinoやkindleなど電子書籍リーダーを利用する読者は、2016年に380万人と2010年比で5倍に増えたとのこと。ただ、390万人だった2015年と比べると減少している。また、2016年の実績および推定値を見ると、ドイツの書籍業界総売上高は約92億8000万ユーロ(約1兆2250億円)。過去10年間売上高を見ると、2010年の97億3400万ユーロをピークに、その後わずかながら減少し続けている。2020年の売上高は、87億ユーロと予測されている。その中で、電子書籍の売上高は全体の5.4%だという。
電子書籍のスタートから、様々なシステムやデバイスが発表され、スマートフォン市場の拡大とともに、伸びていくかと思われた電子書籍だが、ドイツでも伸び悩んでいる。
ドイツ書籍業界の今と未来・本は書店で買う 電子書籍は不人気 売上高はここ10年横ばい そして課題山積
https://news.yahoo.co.jp/byline/norikospitznagel/20171107-00077700/
■文化やライフスタイルに合わせた使い方が求められる
ただ、そこにはドイツの人々の本に対する意識が関わっているのだと思われる。
ドイツ人はプレゼントやお土産に書籍を買うことが多く、クリスマスプレゼントの人気商品第1位は「紙の書籍」だそうだ。確かに、僕もドイツ人の友人から誕生日に本をもらったことがある。ちょうど30歳の時で、ドイツでは30歳の男性にはこんな本を贈るんだと言って、結構高価な本を頂いた。それくらい、本というものは特別な存在なのだろう。
もちろん電子書籍をプレゼントしてもいいだろうが、そもそも電子書籍リーダーを持っているのか?そのストアのアプリをインストールしているのか?といった確認が必要になるため、サプライズのプレゼントとしては向いていないかもしれない。そうなると紙の本を買った方が手っ取り早く無難だろう。
そんなドイツでは、電子書籍に代わってオーディオブックが人気を集めているとのことだ。運転中でも運動しながらでも「ながら読書」が多くの読者に支持されているようで、これは電子の良いところだと思う。オーディオブックとは、つまりは朗読を聞くということだが、生活のスタイルに合わせて、文字も読めるし朗読も聞けるという、ハイブリットな形がいいのではないかと思う。
日本でも、電子書籍はまだまだ書籍出版市場の約10%だが、電子化は進んでいくと考えている。新刊を紙と電子で出すのはもちろん、既刊本を電子化して、劣化することなく保存していくという動きが活発化してくのではないだろうか。
前出の記事では、「紙媒体の本の信頼性の高さや、手にした時の感触そしてページをめくる楽しみを満喫しながら書籍を読むのが好きなドイツ人は、この先も紙媒体の本を手放すことはないだろう。」と締めくくっている。僕も紙の本を手放すことはないと思う。ただ、本を大切に思うドイツ人だからこそ、その中身についても貴重な財産として、電子化し後世に残していくのではないだろうか?
ドイツの今後の動きにも、注目していきたいと思う。
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