本を電子書籍化する場合は権利関係の確認を
先日、いくつかのタイトルを出版しており、それらが絶版となってしまったため、電子化を検討しているという著者の方とお話する機会がありました。「そもそも、電子化するためには何が必要で、私は何をすればいいの?」「著作権や版権がどうなっているかわからないので、なかなか進められない」という疑問を持たれていました。そこで、権利関係と現在の電子化の方法についてお話させてもらいましたのですが、同じことで困っている人もいるかと思いますので、本を電子書籍化する場合の、権利関係について書いてみたいと思います。
電子書籍化と著作権
一般に「著作権」とは、著作者によって創作された文芸、音楽、絵画、映画などの著作物を保護するもので、著作物は創作されれば何ら手続きがなくても、著作権で保護されます。著作権で保護の対象となるものとして、著作権法では「思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」(著作権法第2条第1項第1号)とされています。文芸、音楽、美術、学術に属する作品であり、絵画、彫刻、建築、楽曲、詩、小説、戯曲、エッセイ、研究書などがその代表的なもので、写真、映画、コンピュータプログラムなど、カメラやコンピュータなどの機器によって創作された著作物についても保護の対象となります。著作物の著作権は、著作者の死後50年が保護期間とされています。著作者の死後50年を経過した著作物を、データ化し公開するサービスとして青空文庫が有名ですね。
このほか著作権には「著作者人格権」があります。著作人格権は、著作者がその著作物を公表する権利としての「公表権」、氏名の表示・不表示(筆名等も含む)を決定できる「氏名表示権」、著作物の改変や著作者の意図しない利用などを禁止できる「同一性保持権」で構成されます。
本来、著作者の許諾なしに、その著作物は利用できないことになっていますが、私的使用のための複製や、図書館における複製、教科書などへの引用、視覚・聴覚障害者のための複製、営利を目的としない場合は、著作権が制限されます。また、書籍の題号(タイトル)は、一般的には著作権の対象ではないとされています。ですので、同じタイトルの本が出たということだけで、著作権の侵害だというのは難しいかもしれません。
電子書籍化と出版権
「出版権」というのは、著作権法に定められているもので、もともとは著作権者の権利であり、出版権設定契約があってはじめて、出版者が出版権を持つことができます。著作権者と出版者との間の契約によって、出版者は契約期間中、「出版権者」として、出版のという形による著作物の「複製」を、独占的に行うことができるというものです。また出版権は、印刷物の出版や公衆送信を行うものに対して、設定することもできます。ただし法的には、出版権は文化庁に登録しなければ第三者に対して対抗することはできないとされています。
平成26年の著作権法改正では、出版権を電子書籍(パッケージ型、配信型を共に含む)に拡大することが明記されました。これによって、電子書籍を流通・販売する際に働く、公衆送信権を出版者を出版者が独占し、かつ契約関係にない第三者に対しても出版権の主張をすることが可能になりました。つまり、過去に書籍を出版して、絶版となってしまい、本を電子書籍化したいと考えた場合、出版権の設定契約がどこまでなされているかが、重要になってくるのです。印刷物の出版だけなのか、電子出版物を含むのか、契約書の確認が必要となります。おそらく、出版社側から契約更新の連絡はほとんどないでしょうから、当初結んだ契約内容を見返すとわかるかと思います。
これまで出版した既刊本を電子書籍化するにあたって、著作権は間違いなく著者にあります。あとは、出版権の設定契約の条件がどのようになっているのかがポイントです。平成26年以前については、電子出版物の契約はあまりないかと思いますが、条文の中でそうと取れるものがあるかもしれません。後々揉めることのないように、よく確認して進めてみて下さいね。
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