狼は大きな神?!古来日本人と狼の知られざる関係とは?
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最終更新日:2024/10/12
昔話
皆さん狼ってどんなイメージを持っていますか?人や動物を襲う怖い動物というイメージが強いですかね。
印象に強く残っているのは、グリム童話にある赤ずきんちゃんの狼ではないでしょうか。
赤ずきんがお使いを頼まれて、森の向こうのおばあさんの家へと向かう途中、一匹の狼に遭い道草をします。その間に狼は先回りをしておばあさんの家へ行き、家にいたおばあさんを食べてしまう。そしておばあさんの姿に成り代わり、赤ずきんが来るのを待って、赤ずきんがおばあさんの家に到着すると、おばあさんに化けていた狼に赤ずきんが食べられてしまうという、あの話です。
子どもの頃に皆さん読みましたよね。この作品を見ていると、狼は怖い動物というイメージが焼き付いちゃいますよね。ただ、この後狼は、満腹になって寝入っていたところを、通りがかった猟師によって、腹を割かれてしまい、その後赤ずきんたちの手によって、腹の中にに大きな石を縫い込まれてしまうんですがね、、、。なかなかの残虐さですよね、あかずきん。
大神だった日本の狼
それはさておき、日本における狼の語源は「大神」だと言われています。
『日本書紀』では「かしこき神」、『万葉集』では「大口の真神」などと記されています。また、狼を祀っているという埼玉県の三峰神社は、現在も「大口真神」という札を出していることで有名です。その昔日本では、狼のことを「ヤマイヌ」「オイヌサマ」などと呼んで、霊獣であると考えていたんですね。そのエピソードが、「狼のまゆげ」「狼報恩」などの昔話にもあらわれています。
「狼のまゆげ」は、食うにこまった男が、自ら狼に食い殺されようとしますが、逆に狼から真人間を見分けることのできる「狼のまゆげ」をもらい、幸せをつかむというお話です。似た話では、「きつねのまつ毛」もありますね。
「狼報恩」は、とげがささって苦しんでいる狼を助けたところ、猪やきじ、うさぎなどを持ってきたとか、おなじ山道を通ると狼が家まで送ってくれたといった、狼による恩返しのお話です。
また、狼は、お産に関係した信仰を持っていたとも言われています。狼が子供を産むと、村人が赤飯などを狼の巣に持っていく習俗などもあったんです。反対に人間のお産を、狼が見舞いにくる「狼の産見舞い」という話もあり、狼とお産との関係がうかがえます。
人間との関わりが深かった狼
夜間に狼の大群に襲われた人間が木の上に登り、狼たちが梯子のように肩車を組んで、木の上の人間を襲おうとするものの後一歩で届かず、狼が自分たちの親玉の化け物を呼びつけるという「千疋狼」のような話もあるかと思えば、馬を襲おうと馬小屋に忍び込んでいた狼と、馬を盗もうとして屋根裏に隠れていた泥棒が、想像上の怪物を恐れてドタバタ劇を繰り広げる「古屋のもり」のような滑稽話にも、狼が登場します。狼は日本人と非常に縁が深い動物だったのですね。
現在では、狼は神というよりも、人間にとっての害獣という扱いです。これは、耕地が拡大したり、山中の交通が頻繁になるなど、人間の生活圏が拡大されてからなんですね。狼にしてみれば、やむをえず田畑や住居に近づくようになったんです。しかし、人間は狼を恐れ、駆除するようになってしまいました。そうして、次第に狼に対する信仰は薄れていって、明治時代には大規模な狼狩りがおこなわれ、明治中期にはニホンオオカミが絶滅したと言われています。
昔話には多くの生き物が出てきます。いずれも古来日本では生き物を神格化して祀ったり、生き物との共存共栄の習慣があり、民話や昔話でそんな文化を伝えてきました。生物多様性がますます失われていく現代において、日本の昔話から生き物との関係を再認識してみる必要があるのではないかと思いますね。
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