正直に生きることの大切さ『天福地福』
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最終更新日:2024/07/27
昔話
正直に生きていれば良いことが起こり、欲を張ると酷い目に遭う。
日本の昔話ではよくあるカタチですね。
二人のお爺さんが「初夢」を通じて、福を得るか災難に遭うかという「天福地福」という民話があります。
天福地福のあらあすじ
むかしあるところに、正直な老夫婦と、欲ばりな老夫婦が隣り合って住んでいました。
ある年の正月元旦のこと、正直なおじいさんがおばあさんと一緒に村の鎮守様へ初詣に行きました。そこで隣の欲ばりなおじいさんに会いました。
3人が正月のあいさつを交わした後、欲ばりなおじいさんが言いました。
「さっき見ていたら、二人で長々と手を合わせていたな。何を願っていたんだ?」
正直なおじいさんは、「去年一年間、病気もしないで元気だった御礼と、今年も二人が元気で暮らせるようお願いしたんだ。」と答えました。
すると欲ばりなおじいさんは、「それだけか?お前たちらしいな」と言って笑いました。
正直なおじいさんが、「お前さんは何を願ったんだ?」と聞くと、
欲ばりなおじいさんは、「オレは、いい初夢を見させてくれとお願いしたんだ」と言いました。
正直なおじいさんは、「そうか、ではいい初夢を見ておくれ」と言って欲ばりなおじいさんと別れました。
翌日正月二日の朝、正直なおじいさんが庭に出ると、欲ばりなおじいさんがにこにこしながら近づいてきて言いました。
「どうだった。いい初夢を見たかい?」
正直なおじいさんは「まあまあだ。そう言うお前さんこそどんな夢を見た?」と聞き返しました。
すると欲ばりなおじいさんは満面の笑みで、
「実はな、地から福を授かるという夢を見た。地福の夢だ。どうだ、いい夢だろう?」
と言いました。
正直なおじいさんが「地福か、お前らしいいい夢だな」と言うと、
欲ばりなおじいさんは「そうだろ、そうだろ。それで、お前はどんな夢見たんだ?」と聞いてきました。
正直なおじいさんは「まあ、なんだ、、、地福っていうことはないな。でも、オレにとっては、もったいないくらいの夢だった。」と答えました。
すると欲ばりなおじいさんは満足げに、
「お前はお前なりにいい夢見たってことだな。初夢は正夢(まさゆめ)というから、お互い叶うといいな。」と言って帰って行きました。
それから数日が過ぎて、正直なおじいさんが畑仕事をしていると、クワの先がカチンと何かにぶつかる音がしました。
「おや、石でもあったかな?」と言いながら土をどけていくと、カメが埋まっていました。
正直なおじいさんがフタを取ってみると、なんとカメの中にはキラキラと光った大判小判がぎっしりと詰まっていました。
「これは驚いた!しかしこれは地から授かった物。だから地福だ。ということは、これは隣のじいさんの物だ。」そう言って、正直なおじいさんは、隣の欲ばりなのおじいさんの家へ向かいました。
そして、正直なおじいさんは、「お前の初夢が叶ったぞ!畑から大判小判が出た。地福だからあれはお前のもんだ。早く行ってとってこい」と言って、カメのある場所を欲ばりなのおじいさんに教えました。
欲ばりなのおじいさんは喜んで畑へ行きました。
畑には掘りおこした跡があって、その中にカメがひとつあった。
「これはまさしく地福だ。この中に大判小判が詰まっているんだな。」と言って、欲ばりなのおじいさんがカメの蓋を開けると、カメの中にはたくさんの蛇が入っていました。
欲ばりなのおじいさんは、「隣りのじいさんめ、おれをだましたな!」と悔しがりました。
怒った欲ばりなのおじいさんは、そのカメを持って正直なおじいさんの家へ行きました。
そして屋根の上にのぼり天窓を開けて、畳の上で横になっている正直なおじいさんめがけて、カメの中の蛇をバサバサと落としたのです。
すると、不思議なことに蛇が大判小判になってジャラジャラとこぼれ落ちました。
それを見た正直なおじいさんは、
「ばあさん、天からお金が降ってきた。天から福を授かった。天福だ!」と言って喜びました。
実は、正直なおじいさんが見た初夢は、天福の夢だったのでした。
天福地福が教えてくれること
天福地福は、こぶとり爺さんや、はなさか爺さんと同様、隣の爺型の民話です。隣の爺が特に罰を受けない(蛇に驚く程度)のが、隣の爺型の民話としては珍しいですね。新潟県や山口県に伝わるお話ですが、岩手県にも類話が存在しています。
お話の中で、畑から小判を見つけた正直なおじいさんが、「地福」は隣のおじいさんが見た夢だから自分のものではないと言って、欲張りなおじいさんのところに持っていくシーンが印象的です。
正直者が馬鹿を見やすい時代になってきた現代ですが、自分の土地で大金の入ったカメやスーツケースなどを見つけたら、きっと多くの人が警察に連絡をするのではないでしょうか(いわくつきのお金かもしれませんしね、、、)。日本では、街中や電車内などで携帯や財布を失くしても、戻ってくる確率が非常に高いですよね。
それは、欲をかくと良いことがない、正直に生きることが大事であることを、民話の口承によって私たちの心に刷り込まれてきた結果なのでしょうね。
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