あなたは動物たちの声が聞こえますか?
公開日:
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最終更新日:2024/06/13
昔話
アニマルコミュニケーションをご存知ですか?
アニマルコミュニケーションは、テレパシー(直感)を使って動物とコミュニケーションします。動物は、いつでもテレパシーとボディーランゲージを使ってコミュニケーションをしているそうです。
テレパシーというとファンタジーやSFっぽく聞こえますが、実は私達は元々持っていた感覚だそうです。それが大人になるにつれて、言語を中心としたコミュニケーションをとるようになり、退化してしまったのです。「阿吽の呼吸」とか、「虫の知らせ」というように自然に使っている感覚だとのこと。
日本に伝わる昔話には、そんな夢を叶える「聞き耳頭巾」というお話しがあります。
全国で内容に違いがありますが、今日は広島県に伝わる聞き耳頭巾を紹介します。
聞き耳頭巾のあらすじ
むかし、むかし、あるところにとても心の優しいひとりの若者がいました。
ある日のこと、若者が海辺をあるいていると、砂の上に一匹の鯛が苦しそうにしていました。
若者は、「これはかわいそうに、村の子供らに見つかったらいじめられてしまう。」と言って、鯛を海へ放してやりました。
それから何日かして、若者がまた海辺を歩いていると、波打ちぎわに美しい娘が一人立っていました。娘が、「もし、ちょっとお待ち下さい。」と若者に声をかけてきました。若者が立ち止まると、娘が言いました。
「私は、この間あなたに助けていただいた、鯛でございます。あのときは、あぶないところを助けて下さり、ありがとうございました。今日は龍宮の遣いとして、あなたをお待ちいたしておりました。これは、おとひめ様からあなたに差し上げるように言いつかった、龍宮の宝物です。どうぞお納め下さいませ。」
と言って、ひとつの頭巾を差し出しました。
若者は、「わたしは大したことはしていません。鯛が苦しそうにしていたので、海に放してやっただけですよ。そんなものは受け取れません。」と言って断りました。
それでもどうしてもと娘に言われて、受け取りました。
ふと若者が目を上げると、すでに美しい娘は姿を消していました。
次の日は、海風が強く吹く寒い日でした。
若者は、娘からもらった頭巾を耳までかぶって外を歩いていました。
すると、チュンチュンとないていたスズメの声が、何かを話し合っている声に聞こえてきました。若者が耳を澄ますと、「人間は間抜けだな。毎日村の一本橋渡るのに、あの橋の真ん中に転がっている石が金なのに誰も気づかない。」とスズメが言っているのです。
若者は早速一本橋の上にある石を拾って、町のカンザシ屋に持って行きました。
するとそれはスズメの言っていた通り、金のかたまりでした。
金を売った若者はいっぺんにお金持ちになりました。
またある日のこと、若者は頭巾をかぶって森の中へ入っていきました。
すると、松の木の上でカラスが何かしゃべっています。
若者が耳を澄ますと、「人間は間抜けだな。殿様の姫君が病気だと言って、国中からたくさんの
医者を集めているけど、虎の尾という草を煎じて飲ませれば、すぐに治ることを誰も知らない。」と、カラスが言っていました。
若者は早速、虎の尾という草を摘んで、お城に向かいました。
そして殿様の前で、「お姫様の病気をわたしが治して差し上げます。」と言いました。
たくさんの医者たちは、「我々が治せないものを、こんな田舎者に治せるもんか。」と、鼻で笑っています。
殿さまは、「誰でも構わん。姫の病気を治した者は、姫の婿にしてやる。」と言いました。
若者はカラスの言った通り、虎の尾の草を煎じて姫様に飲ませました。すると、今にも死にそうなくらい弱っていた姫様が、たちまち元気になったのです。
殿さまは大喜びです。約束通り若者を姫様のお婿さんに迎えました。
若者が若殿となってからというもの、その国はどんどん栄えていきました。
龍宮からもらった宝物は「聞き耳頭巾」と呼ばれ、末永くお城の宝物になったそうです。
聞き耳頭巾が教えてくれること
このお話しは、浦島太郎などと同様、困っている動物を助けることで、幸運が訪れるというものです。
良い行いをすれば、その報いがあるということを伝えていますね。
それともう一つ。
頭巾をかぶることで、動物たちの声が聞こえるわけですが、その声の内容を信じて行動に移したことで、若者は自ら人生を変えていきました。
聞こえたことを疑って、あるいは面倒くさがって実行しなければ、若者に幸運は訪れなかったでしょうね。
人はたくさんの情報の中で生きています。
その中で自分に向けられた声を的確にキャッチして、素直に受け止めまず実行に移すことが大事だと思います。
相手が困っていたら手を差し伸べる。
大切な声に耳を傾けて、素直に実践してみる。
聞き耳頭巾はそんなことを教えてくれています。
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