舌切り雀は実は過酷なお話しだった!
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昔話
舌切り雀のお話しをご存知ですか?
舌切り雀には、あまり一般に出てこないシーンがあります。おじいさんもおばあさんも、雀のお宿を探す際に、厳しい試練を乗り越えて行ったのです。そのシーンとは?
むかしむかし、やさしいおじいさんと、欲深いおばあさんが住んでいました。おじいさんとおばあさんのどちらかがやさしくて、どちらかが欲深いというパターンがよくありますね。おじいさんが山で行った時に見つけた雀を、家に連れ返って来るところから話は始まります。
舌切り雀には、おじいさんの愛、おばあさんの欲が強く描かれていた
おじいさんは雀をとても可愛がっていましたが、おばあさんはあまり良い感情を持っていないんですね。ある日、おじいさんが山に出かけている間、おばあさんが洗濯をしている際に、雀が洗濯ノリを舐めてしまいます。怒ったおばあさんが、雀の舌を切って追い出してしまうんですね。おじいさんはそれを聞いてとても悲しみます。そして雀を探しに出かけるのです。
おじいさんが雀を探しに出かけると、馬洗いどんに会います。文字通り馬を洗う人ですね。そこで馬洗いどんに雀の行方を聞くと、「馬の洗い汁を7桶飲ほしたら雀の行った方角を教えてやるよ」と言われます。いやいや、そもそも水を7桶も飲めなしでしょ?と思ったら、おじいさんはガップガップ飲み干しちゃうんですね。驚きです。
で、雀の行き先を確認したら、「この先に牛洗いどんがいるから聞いてみろ」と言われます。おじいさんがしばらく行くと、牛洗いどんに出会います。牛洗どんに雀の行方を聞くと、「牛の洗い汁を7桶飲みほしたら雀のいるところを教えてやる」と言われます。いやいや、今さっき7桶飲み干してきたばかりですけど?流石に無理でしょう、、、と思いきや、おじいさんは、またしてもガップガップ飲み干しちゃいます。おじいさんどれだけ飲めるの!?驚愕です。
牛洗いどんに、雀のいる竹やぶを教えてもらうことができたおじいさんは、雀のお宿を発見します。
そして、ついに舌を切られた雀に再会しました。
おじいさんが、おばあさんの酷い行いを謝罪すると、雀は喜んでおじいさんを迎え入れて手厚くもてなします。そして、帰るときに、大きいつづらと小さいつづらのお土産を用意します。おじいさんは、重くて背負えないから小さい方でいいよと言って、小さいつづらをもらって家に帰ると、中からは大判、小判や宝物がいっばい出てきました。
それを見たおばあさん、「何で大きいのをもらってこないんだ!」「ワシもつづらをもらいに行ってくる!」と言って、雀の宿へ向かいます。おじいさんと同様、途中で馬の洗い汁や牛の洗い汁を飲みほして(おばあさんもすごいね、、、)、雀の宿に到着します。そして、「久しぶりだな、雀。ワシにもつづらを寄越せ!」と言って、大きなつづらをかっさらって来ました。
家に着くまで待ちきれないおばあさんは、野原でつづらを開けてみます。すると、中か蛇や化け物がいっぱい飛び出してきて、おばあさんに襲いかかります。えらい目にあったおばあさんは、命からがら家に逃げ帰りました。それからというもの、おばあさんはあまり欲をかかなくなりましたとさ。
近世以降に変わっていった舌切り雀
というのが舌切り雀の概要です。これは北陸地方で記録されたお話しなんですね。
これと同じように、厳しい試練に耐えて、やっと雀の宿を教えてもらうという話が、様々な地方に伝えられています。
このお話しを語る際は、おじいさんが馬や牛の洗い汁を飲みほして雀の宿を探す、さらにおばあさんも馬や牛の洗い汁を飲みほして雀の宿を訪ねる、このシーンを何一つ解説らしい言葉をつけ加えず、淡々と繰り返すそうです。そうすることで、おじいさんの雀への愛情の深さと、おばあさんの欲の深さのコントラストをくっきりと語り分けて、聞き手の心に届くようにしているといいます。五大昔話として一般に流布されている話には、この厳しい試練の部分が欠けていたりします。
鎌倉時代の『宇治拾遺物語』に載っている「雀報恩の事」がいわゆる「腰折れ雀」で、この「舌切り雀」とよく似ています。しかし「腰折れ雀」には、雀の宿という異郷を訪ねるくだりはありません。「動物報恩」というテーマが中心になっています。それに対して「舌切り雀」は、厳しい試練を乗り越えて異郷を訪問し、歓待されて物を土産にもらう「異郷訪問」のテーマがメインになっています。実は一般に流布される「舌切り雀」は、近世以降に勧善懲悪的な教訓話になったものなんですね。因みに「腰折れ雀」では、おばあさんはやさしくて、雀に恩返しをされます。こちらもぜひ読んでみて下さいね。
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