生成AI盛況時代に必要な日本の昔話

公開日: : 最終更新日:2023/10/12 昔話

いま話題のChatGPT、皆さんはもう使っていますか?
あらゆる質問に瞬時に回答するChatGPTの出現で、検索エンジンが不要になるとも言われています。
すごい時代になりましたね。

人の仕事もどんどん奪われると大騒ぎです。たしかに問題解決のための知識量では、人類はすでに叶わないかもしれません。知能と問題解決能力については、今後ますますAIに取って代わるでしょうね。

でも、たとえば問題を発見する能力はどうでしょう?
問題の発見は、誰かを思いやる気持ちや誰かのためにという想いから生まれることが多いと思います。その感情はまだAIは持ち合わせていませんよね。だから今、私たちが磨くべきは人間性であり、人でしか持ち得ない感性や知性なのではないかと思うんです。

完成や知性を磨くのに、日本の昔話が役に立つかもしれませんよ。

日本全国のとんち者

日本の昔話にはいろいろな形があります。
泣ける話もあれば、心温まる話も。そんな中でとにかく笑えて爽快な気分になるのが「とんち話」。

とんち話は、封建的な身分社会の中で、地位も財産もない底辺の人間(奉公人、作男など)が、知恵を働かせて、殿様や名主、庄屋、そして町の衆をやりこめてしまったり、堂々と仕事をなまけたりする笑い話です。

主人公は、おろかな面と狡猾な面の両面を兼ね備えていて、抵抗の姿勢をつらぬいたり、なまけ者とか愚人とか言われながらも高度な技術を身につけていたりします。とんちとはちょっと違いますが、三年寝太郎もそういった人物ですね。とんち話の主人公には、しいたげられている人々の願望が託されています。

これらの話は特定の地域と結びついて、実在の人物の話として、親しみをこめて語られています。
北海道の繁次郎(しげじろう)、山形県の佐兵(さひょう)、千葉県の重右衛門(じゅえむ)など、全国各地にとんち話の主人公が存在します。有名なところだと熊本県の彦一(ひこいち)や大分県の吉四六(きっちょむ)がいます。吉四六さんのお話は、学校の図書室などにもありますね。私も小学生の頃、よく図書室で吉四六さんの本を借りて読んでいました。

とんちで有名なのは、なんといっても「一休話」です。
皆さんも一度は耳にしたことがある名前だと思います。私が小さい頃はテレビのアニメで一休さんが放映されていました。絵本にもなっているので、顔が思い浮かぶ人もいるでしょうね。

「一休話」は、とんち者の一休さんが繰り広げる笑い話です。一休さんがある橋の前に「このはしわたるべからず」と書いてある立て札を見て、平然と橋の真ん中を渡っていきます。街の人が「橋を渡ってはいけないと書いてある」と一休さんに言うと、「いいえ。私は立て札の言う通り、この端を歩かず真ん中を歩いたのです。」と返した話は有名ですね。日本の同音異義語をうまく使ったとんち話です。

一休さんの代表作品「屏風の虎」

私が一休話で好きなのは、「屏風の虎」というお話。
あらすじを紹介すると、、、

むかし一休さんという頭のいいお坊さんがいました。

彼のうわさを聞いて、殿様がちょっと試してやろうと、お城に呼び寄せました。

一休さんがお城に行くと、
殿様が「一つ相談があるんじゃが。」と言って、一休さんを大きな虎が描いてあるつい立の前に連れて行きました。

そこで、「実は毎晩この大きな虎がつい立から出てくるのじゃ。一休よ、そちに虎を捕まえてもらいたいのじゃ。」殿様が仕掛けてきます。

一休さんはちょっと考えてから、頭に手ぬぐいを巻いて言いました。

「お殿様、私に虎を捕まえる縄を下さい。」

一休さんは縄を持って、つい立の前で待ち構えます。

そして「お殿様、そこにいては危険です!つい立の後ろに回って虎を追い出してください。」と言いながら、殿様に向かってつい立の後ろを指差します。

殿様は、「何と申した?つい立から虎を追い出せと?」 と言って困惑します。

すると一休さんは、「そのとおりです!是非お願い致します。追い出してもらわなくては、虎を捕まえられません。」

それを聞いて、「うーーん、参った!」と殿様が負けを認めました。

というお話です。

仕掛けられた難題に対して、殿様を巻き込んで、殿様自らに嘘を認めさせるあたりは、さすが一休さんです。

一休さんはかわいい小坊主じゃなかった!?

こういった一休さんのお話は、実在の人物である一休宗純 (1394〜1481)をモデルにしたものなんですね。実在の一休宗純は、禅宗の僧で、京都の大徳寺の住職をつとめたりしています。後小松天皇の落とし子であったという伝承もあるんですね。物事にとらわれない自由な考え方を持って行動をした人物のようで、普通と違う言動やユニークな逸話がたくさん残されています。アニメに出てくる小僧の一休さんとは似ても似つかない風貌で、決してかわいいとは言えないですね、、、。

Wikipediaより 一休宗純

『一休咄』はそれらを集めた本の一つで、江戸時代には十数冊も出版されています。和尚さんと一休さんとの対立を描いたり、殿様などの権力者を一休さんがやりこめるお話を読んで、昔の人々も爽快な気分になっていたのでしょうね。

映画やTV、動画や漫画でも知恵を働かせてピンチを切り抜けたり、敵を倒すといった作品がたくさん出ています。絵本でもそういった作品が多く見られますね。戦う動画もいいですが、一休さんや吉四六さんなど、日本人が昔から語り継いできた「とんち話」を、今の子どもたちにも是非伝えていきたいですね。

 

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