猿の尻尾はなぜ短い?『尻尾の釣り』
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最終更新日:2023/08/19
昔話
この季節毎朝外に出ると、吐く息が真っ白で、バケツの水も凍りつき、歩くと霜柱がさくさくと音をたてます。いまは七十二候でいうと「水沢腹堅(さわみずこおりつめる)」寒いわけです。
二十四節気と七十二候
皆さんも立春や立夏、夏至、冬至、春分、秋分といった言葉を聞いたことがありますよね?「旧暦(きゅうれき)=太陰太陽暦」が飛鳥時代に中国から伝わり日本でも使用されていましたが、旧暦は月の満ち欠けをもとにしている為、一ヶ月が約二十九日しかなく、太陽の公転による季節の動きとズレが生じていました。
月の満ち欠けと太陽の周期では、一年で十一日ほどズレが生じてしまいます。数年に一度、閏月(うるうづき)を設けて十三ヶ月ある年をつくることで対応していましたが、人々の暮らしに支障が出ていました。そこで考案されたのが、「二十四節気(にじゅうしせっき)」です。
七十二候は、この二十四節気の各節気を、さらに約5日ずつの3つに分けた期間のことを指します。気象の動きや動植物の変化を知らせる短文でなっていて、古代中国で考案された季節を表す方式の一つで、日本に渡来してからは日本の気候に合わせた内容になりました。「水沢腹堅」は、沢に厚い氷がピンと張りつめるころで、春が遠くないといえども、寒さはより一層厳しくな時期のことを表します。
二十四節気ではまもなく「立春」を迎えますが、春はまだまだ遠そうですね。でも、寒い時期だからこそ出来るものもあり。
1月5日頃から2月3日頃までの、小寒、大寒えお合わせた約30日間を寒の内といいます。この期間に汲んだ水は、カビの原因となる空気中の雑菌が少なく腐らないとされていて、長期保存に向いていると言われます。そこで、日本酒はこの期間に寒仕込みをするそうです。また、大寒に産まれた鶏卵のことを「大寒卵」といい、子どもが食べると体が丈夫になり、大人が食べると金運が上がるとされ、縁起が良いものといわれています。
日本の四季は、私たちの暮らしを豊かにしてくれる、自然からの素晴らしい贈り物ですね。
猿の尻尾が短いワケは?
さて、今日は氷にまつわる昔話をひとつ。
「冬の寒い夜に自分のしっぽを水に垂らして釣りをするとたくさん魚が獲れる」という出鱈目な話を信じて、大変なことになった動物のお話です。騙す動物も、騙される動物もいろいろなパターンがありますが、今日は猿とカワウソのお話です。
『しっぽの釣り』
むかし、あるところに、猿とカワウソがすんでいました。
猿は、カワウソがいつも魚をとってはおいしそうに食べているのを見て、うらやましくてたまりませんでした。
ある日、猿はカワウソに、
「カワウソくん、どうしたらそんなに魚がとれるんだい?」
と、聞いてみました。
すると、カワウソはまじめな顔をして答えました。
「あの川に氷が張ったときに、氷に穴をあけて尻尾をさしこんでおけば、魚はひとりでに食いついてくるのさ。そのとき尻尾を引っ張れば、いくらでもとれるよ」
猿は「これはいいことを聞いた」と、その夜早速氷の上に座って氷に穴をあけて、尻尾をさし入れて魚の食いつくのを待ちました。
しばらくすると、猿の尻尾が引っ張られました。
猿は「お!魚が一匹くいついたぞ!」と喜びましたが、もっと食いつかせようとじっとしていました。
すると、今度は前よりも強く尻尾が引っぱられました。
「おぉ!今度は二匹食いついた」「今度は三匹くいついた!」
猿は尻尾が水の中で凍っていくのも知らないで、引っ張られるたびに喜んで、さらに待ちました。
やがて、川には厚い氷がすきまなく張り、猿の尻尾も凍りついてしまいました。
「これは大きな魚が食いついたぞ、上げてみよう!」と、猿はお尻に力を入れて引き上げましたが、尻尾は氷にぴたりと食いついて離れません。
そうとも知らず猿は、「ははあ、こりゃ大きな魚だ!」 と顔を真っ赤にして引き上げようとしました。
でも、尻尾は一向に引き上がりません。
さすがに猿もあわてて、力いっぱい「うん」と引き上げると、なんと猿の尻尾は根元からプッツリ切れてしまいました。
猿の尻尾が短かくて、顔は赤く、お尻もただれて赤くなったのは、こんなことがあったからなのでした。
猿もとんだ災難でしたね、、、。
川も水も凍りつく季節。皆さん風邪などひかないように気をつけて下さいね!
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