ほんとは怖いカチカチ山
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最終更新日:2023/05/30
昔話
バリエーション豊富な昔話
むかしあるところに、年老いた夫婦が仲良く暮らしていました。
ある日、おじいさんとおばあさんは豆を畑にまきにいきました。おじいさんが、「一粒は千粒になれ、二粒は万粒になれ」と豆が増えるように歌いながら豆まきをしていると、そこにたぬきがやって来て、まめが腐ってしまうように歌ってからかったり、「一粒は一粒がままよ、二粒は二粒がままよ」と邪魔をします。怒ったおじいさんは、タヌキが腰をかけていた石に鳥もちを塗って捕まえて家に吊るしました。そして、たぬき汁を作ってくれるようにおばあさんに頼みます。
ここまで読んで何のお話かわかりますか?
そう、日本五大昔話のひとつ「かちかち山」です。かちかち山はバリエーションが豊富なお話です。皆さんが知っているのはきっとこん話ではないですか?
おじいさんが畑に出かけて、おばあさんが独りで餅をつこうとしていると、たぬきは「俺が手伝ってやる」と言っておばあさんをだまして縄を解かせます。そしておばあさんを殴って殺し、婆汁にして、自分はおばあさんに化けて、おじいさんにそれを食べさせてしまいます。翌朝早く、おじいさんは「婆汁食ってうまかったかー」と歌うたぬきの声で目が覚めます。そこで、おじいさんはだまされた事に気づき、たいそう驚いて泣きました。それを嘲笑いながら、たぬきは逃げてしまいます。
ここまでのシーンって、結構酷いですよね、、、。昔話は意外に酷いシーンがあったりします。
そこに前に助けてやったことのあるうさぎがやって来ます。うさぎはおじいさんが悲しんでいるのを見て、話を聞きかたきを取ってあげると言いました。うさぎはたぬきを誘って萱を刈りに行くことにします。帰り道、うさぎは刈った萱をたぬきに背負わして、後ろから「カチカチ」と火打石で火をつけました。
萱はバリバリと燃え上がり、たぬきは背中におおやけどをしてしまいます。翌日、うさぎが蓼をとっているところにたぬきがやってきて、やけどの抗議をしますが、「萱原のうさぎは萱原のうさぎ、私は蓼原のうさぎだよ」と言ってとぼけます。そしてうさぎは蓼の葉のからい汁を、たぬきの背中に塗りたくってやります。蓼の汁が背中にしみて、たぬきは痛みに転げ回りながら山へ帰っていきました。
その後、うさぎが松山の松林で松の木を切っていると、またたぬきがやってきて、薬の抗議をします。しかしうさぎは、「ぼくは松山のうさぎで、蓼原のうさぎのことなんかしらないよ」ととぼけます。そして、「舟を造って一緒に海のものを取りにいかないか?」とたぬきを誘います。そしてうさぎは、自分には木の舟を造り、たぬきには泥の船を造り、それぞれの船を運んで海に浮かべて漕ぎ出します。
そのうち、うさぎは舟べりを櫂(かい)でたたきはじめます。
たぬきが「うさぎさん、どうして舟をたたいているんだい?」と聞くと、 「こうすると魚が寄ってくるんだよ」とうさぎが嘘を言います。そこでたぬきは、うさぎの真似をして、櫂で舟べりをたたきはじめました。ところがたぬきの舟は土で出来ているので、ぼこっと音を立てて壊れてしまいました。泥の舟は沈んでしまい、たぬきは溺れ死んでしまいました。
前後半が独立して語られていたカチカチ山
このお話は、前半と後半がそれぞれ独立して語られることが多かったと言います。狸の性格も前半までは狡猾で抜け目がないのに対し、後半では同じうさぎに何度も他愛もなくだまされるところから、そもそも話の前半と後半は、もともと独立した別の話だったのではないかと考えられています。また、うさぎがだますのが、たぬきのほかに熊、狼、猿というバージョンもあります。
さらに、たぬきが溺れ死ぬ結末の後ろに、うさぎのしっぽが短くなった由来がつくものもあるんです。うさぎが、泥の舟に乗って沈んだ熊の肉を煮て食べようと娘の家に鍋を借りにいき、煮た肉を一人で食べて家の裏で寝ていると、帰ってきた父親がこれを見つけて、娘にナタを持って来させてうさぎに投げつけます。それでうさぎのしっぽが切れて短くなったという内容です。
昔話には、こういった話の結末に意外な展開が待っているものが多くありますね。もしかしたら、今まで皆さんが読んだことのある昔話にも、これまで知らなかった結末があるかもしれませんよ。
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