子ども高齢者も世界もハマる折り紙

公開日: : 最終更新日:2023/03/25 現代文化のルーツ

最近我が家の4歳の息子が折り紙にはまっています。
鶴や兜など、ちゃんとしたカタチには折れませんが、自分なりに工夫しながら、携帯電話やTVのリモコン、私の顔?などを折って見せてくれます。

自分で完成イメージを想像しながら、指先を動かすというのは、脳にとってとてもいいですよね。子どもはもちろん、高齢者にもうってつけだと思います。うちの母親は孫と折り紙をしているうちに、ちょっと極めてみたくなったようで、来週から近所の折り紙講座に通うそうです(笑)

折り紙って海外でも人気なんですよね。日本の文化としても素晴らしいものです。
ちょっとここで折り紙の歴史を辿ってみたいと思います。

まずは折り紙の元になる紙の話から。
日本の紙は、610年高句麗の僧である曇徴が、絵の具や墨とともに紙の製法を伝えたのが始まりといわれています。また、538年には百済から仏教が経典とともに伝えられ、仏教が興隆するとともに様々な制度が整えられ、紙の必要性が高まってきました。701年には製紙を所管する図書寮を設け、調として納めさせるようになりました。正倉院には当時の紙と一緒に全国各地の紙の産地の記録が残っています。894年の遣唐使廃止により日本文化の和風化が進み、がんぴ(雁皮)やこうぞ(楮)をねり(とろろあをい)で溶いた日本独特の流し漉きの技術が開発され、薄くて丈夫な紙、「和紙」が生まれました。

皆さんご存知かと思いますが、和紙は薄いのに破れにくくて丈夫という特徴があります。それまでの紙は何かを書くために用いられていましたが、紙の需要にあわせて、襖・屏風、障子・提灯・行灯・団扇・扇子などの住環境などにも使われるようになり、やがて紙衣などにも発展していきました。その後、紙は神事にも用いられるようになり、神様への供物など様々なものを紙で包むようになりました。そして形代として神事に用いたりする紙の造形も多様なものになりました。やがて供物や贈り物を包んだとき紙に折り目がつくことに着目して、包みを美しく折って飾る儀礼折が生まれてきます。折り紙のルーツと言われている護符や香包みなどの包みの文化(儀礼折)は、その時の需要に応じて紙の用途が多様化する中で生まれたものなんですね。

平安〜鎌倉時代の公家武家社会の上流階級の間では、冠婚葬祭などの儀礼的、礼法的場面において、大事な手紙を折り畳んだり、物を包むような文化習慣が発展していきます。 室町時代に入ると、小笠原家や伊勢家によって様々な礼法が整えられ、紙包みの礼法(儀礼折)も考えられるようになりました。今も使われている熨斗包みや雌蝶・雄蝶などの折り方はその名残なんですね。やがて礼法や決まりといったことから、折り方そのものを楽しむようになったのが「折り紙」です。

現代の折り紙の形になっていくのは江戸時代から。江戸の華やかな文化が円熟期となり、製紙技術の向上により紙の生産量が増えるとともに、庶民の間でも折り紙が親しまれるようになり、色付き和紙の折り紙で折り鶴や舟などが作られるようになりました。これが現在に通じる伝承折り紙の原型ともいわれています。寛政9(1797)年には世界で最も古い折り紙の本「秘傅千羽鶴折形」が出版されています。

明治時代に入ると、折り紙は幼稚園教育にもとり入れられ、小学校では手工や図画でも教えるようになり、ますます盛んになりました。近代〜現代では、大量生産の可能な洋紙(上質紙)も誕生し、片面に色が塗られた正方形の洋紙が、折り紙として学校の教材にも利用され急速に全国へと普及していきました。現在では、折り紙は世界各地に広まり、折紙愛好家の団体がいくつも出来ています。アメリカ・ニューヨークにある「Origami USA」は、世界19カ国に1,600人以上のメンバーがいる折り紙愛好団体です。アメリカ以外にも、イギリス、スペイン、イタリア、韓国、中国、ブラジル、ドイツ、コロンビアなど、世界各国に存在します。

折り紙には、さまざまな知育効果があるとされています。海外でも人気となっている理由はこの知育効果が大きいですね。アメリカの折り紙愛好団体では、思考力を養うためのアイテムとして、教育現場でも積極的に取り入れられています。作品のレベルが上がるほどに折り目も複雑になっていくため「集中力」や「思考力」が高まります。できあがりを想像する力が身につき、「空間把握能力」や「数学力」のアップにもつながるんですね。

ちなみに、皆さん「おりがみ付き」という言葉を聞いたことがありませんか?多くの人はその言葉を聞いて、正しいもの、確かなもの、正統なものといったイメージを持つのではないでしょうか?かつて、折り紙とは紙を半分に折ったもののことを指し、官公文書はすべて半分に折った紙を使用していました。また進物の目録、鑑定書にも折り紙が使用されるのが正式のルールだったんですね。おりがみ付きという言葉は、そこに由来しているといわれています。また、豆知識としてもう1つ。11月11日は折り紙の日だってご存知でしたか?この日は世界平和記念日でもあるんですね。じゃあなぜ折り紙の日なのか?1を4つ組み合わせると折り紙の形、つまり正方形になることから、1980年に日本折紙協会が制定したそうです。

礼法や決まりごとから始まり、それが折り方を楽しむという習慣に発展し、国内外の教育の現場でも活用されるようになった折り紙。たくさんの玩具で溢れる昨今ですが、日本が生んだ素晴らしい文化の1つとして、子どもたちに伝えていきたいですね。

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