電子書籍保有時代の到来
公開日:
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最終更新日:2022/11/19
電子書籍
インプレス総合研究所が発表した「電子書籍ビジネス調査報告書2021」において、2020年度の電子書籍市場は、2019年度の3,750億円から1,071億円(28.6%)増加し、4,821億円と推計されています。長引く新型コロナ感染拡大に伴う外出自粛、巣ごもり消費の影響がプラスに働いていますね。今後の予測としては、2025年度に6,700億円を超えるとされています。
今後ますます電子書籍市場は拡大していくことは間違いありません。しかし電子書籍は所有できないし、Amazon Kindleや楽天Koboなどのコンテンツ提供側がサービスを止めたら読めなくなってしまうという話も聞きます。たしかにそれはあります。しかし、その「所有権」問題を解決する方法が現実化してきました。
電子書籍を所有するためのNFT
現在、流通している電子書籍の多くは、書籍の「データ自体」ではなく「読む権利」を購入する仕組みです。これはデータの不正コピーを防止するためで、DRM(Digital Rights Management:デジタル著作権管理)によって閲覧・コピー制限が管理されています。
DRMは電子書籍を提供する事業者により、独自の仕様が使われているため、ユーザーは事業者が指定した端末やビューアー上でしか閲覧ができません。さらに不要になっても中古として売ることも不可能です。また前述した通り、事業者がサービスの提供を終了すると閲覧できなくなる可能性もあります。
これを解決する手法として、最近話題のNFT(Non-Fungible Token)を使った電子書籍販売があります。NFTとは「非代替性トークン」と呼ばれるもので、デジタルアートや写真・動画などの鑑定書・所有証明書になるデータを指します。暗号資産(仮想通貨)と同じブロックチェーン技術を使うことで、「唯一無二のもの」としての証明できて、誰がいつどこから入手したのかも証明できます。
2021年3月に2つのオークションが世界的なニュースになりましたね。ひとつは、デジタルアート作家「 Beeple(ビープル)」ことマイク・ウィンケルマン氏のNFT作品「 Everydays-The First 5000 Days」が、約75億3000万円で落札されたこと。そしてもうひとつは、Twitterの共同創業者で同社CEOのジャック・ドーシー氏のNFT化された初ツイートが約3億1600万円で落札されたことです。
さらに、小学生のZombie Zooくん。小3の夏休みの自由研究に、NFTの売買ができる取引所(マーケットプレイス)世界最大手「OpenSea(オープンシー)」のアカウントを開設し、「0.006イーサ(ETH、当時の値段で約2300円)」ほどでピクセルアートを販売したところ、1週間ほどで購入され、その後ツイッターで作品が拡散されたことで、現在は出品しているアート全48点の合計取引高が、9.9ETH(約380万円)にまで膨れ上がっていると言います。
NTFを活用して不正コピーも防ぐ
このNFTを電子書籍に導入することで、電子書籍の「所有権」を売買しようという動きが始まっています。今までの電子書籍は閲覧権のみでしたが、NFTによってユーザーは電子書籍の「所有権」を持つことができます。また、売買も可能になるのです。紙の本と同様に所有権があるので、アカウントの停止やサービスの停止があっても、継続利用できる可能性が高くなります。また二次販売では、元の著作権者に収益を還元するしくみが実現できるので、著作権者にとってもプラスになります。
NFTにより、データの不正コピーを防ぎつつ電子書籍を所有でき、不要になった場合には紙の書籍と同様に売ることができる。電子書籍が二次流通市場で売買された場合でも、権利保有者(出版社、作者など)に収益が還元される仕組みも実現する。まさに紙の本以上の流通の仕組みです。さらには「電子書籍内のコンテンツにのみ作者のサインをつける」「初版で購入した人限定の書籍を販売する」「本編の内容を販売後に追加・変更していく」ということも可能になるとか。
いよいよ閲覧から所有の時代に入ってきた電子書籍。いまや中古市場も見えてきました。著書が絶版になってしまった著者の方などは、是非電子化して、来る電子書籍所有時代に備えておくことをオススメします。
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