ご存じですか?一寸法師の裏の顔
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最終更新日:2022/09/08
昔話
むかし、子どものないおじいさんとおばあさんが、神様に願かけをして、小さな子どもを授かりました。その子に「一寸法師」と名づけて育てると、やがて一寸法師は針の刀・御器の舟・箸の櫂を持って京に上り、大臣の屋敷に仕えます。ある日、屋敷の姫のおともで清水寺に行った際に鬼に襲われます。一寸法師が鬼の口から飛びこみ、身体中を針の刀で突くと、鬼は一寸法師を吐きだして、打出の小槌を置いて逃げていきました。姫が一寸法師に願いを聞くと、一寸法師は「大きくなりたい」と答えます。そして小槌をふると、一寸法師は大きくなり、姫の婿になりました。
皆さんもご存知だと思いますが、これは一般的に知られた「一寸法師」です。一寸法師は、明治以後の童話や、昭和に入ってからの教科書の中でも親しまれるようになりました。一度は絵本を読んだことがあるのではないでしょうか。
このお話は、版本「御伽草子」(おとぎぞうし)23編の1つの「一寸法師」がベースになっています。御伽草子は、鎌倉時代末から江戸時代にかけて成立した、それまでにない新規な主題を取り上げた短編の絵入り物語で、それらの形式のことを指します。お伽草子、おとぎ草子とも表記されますね。室町時代を中心とした中世小説全般を指すこともあり、室町物語とも呼ばれることもあります。
実は私たちが知っている一寸法師には、子供向けということで意識的に省かれた箇所があります。それは「妻求めの計略」という部分。
一寸法師は、嫁にほしいと思う娘が眠っている間に、その口もとに米をぬりつけておき、翌朝、自分の米をだれかに食べられたと泣きます。娘の口もとに米がついていることがわかると、腹をたてた親が娘を一寸法師に差し出すという内容です。好青年のイメージの一寸法師からはちょっと考えられないエピソードですよね。
神の申し子として異常な生まれ方をした一寸法師の話は、古くから各地で伝えられてきましたが、主人公は必ずしも一寸法師の名で呼ばれていたわけではないようです。「スネコタンパコ」「指太郎」「親指小僧」などの名で呼ばれていることもあります。
「スネコタンパコ」は、爺または婆の足のすねから生まれたので、こう名づけられました。「指太郎」は指の腹から生まれたために名つけられた名前ですが、「親指小僧」のように指ほどの大きさしかないという意味もあるのでしょう。そのほかは五分次郎、五分一、豆一、豆蔵など、小さいことを特徴とした命名になっています。
このようにさまざまな名をつけられた小さ子の、口伝えの話は、内容もまた変化に富んでいます。御伽草子とおなじょうに、計略で娘を手に入れ、家につれて帰る途中で鬼に会って退治をする話が多いのですが、鬼には会わず、川やふろに落ちたり、馬にふみつぶされたりして一人前の若者になったと語る話もあります。途中で川に落ちて魚にのまれ、あとで偶然手に入れた魚から見つけだされる話なども。
昔話には地域で内容が違っていたり、私たちの知らない隠された部分や、続きの部分があったりするので、探してみると面白いかもしれませんね。
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