電子書籍が変える視覚障害の未来
8月22日、経済産業省は電子書籍のアクセシビリティーを評価するJIS規格(JIS X 23761)を制定したと発表しました。
これにより、視覚障害や発達障害などにより、本を読みにくい人や読めない人でも読書ができる電子書籍の普及を期待するとしています。
電子書籍のファイル形式である「EPUB」について、対象の書籍がどの程度アクセシブルかを評価する基準になり、日本の提案によって2021年に国際規格化した仕様「EPUBアクセシビリティー」(ISO/IEC 23761)との整合性を図るために制定されました。経済産業省は今回の規格制定で、対象の電子書籍がどの程度アクセシブルなのかを出版社、利用者の両方が把握できるようになるとしている。
こういった基準ができることは、とてもいいことですね。そもそも電子書籍の規格であるEPUB自体が、まだまだ玉石混交なところがあり、読みやすさの点においてバラツキがあります。アクセシビリティーの点においては、まだまだ発展途上なのが電子書籍です。
そんな中でも、視覚障害に対応する様々な取り組みがなされています。
アクセシビリティーを向上される図書館システム
株式会社メディアドゥは、独自の電子書籍ファイル自動読み上げ技術を活用した視覚障害者向け電子図書館システム「アクセシブルライブラリー」を開発し、実証実験を行いました。「アクセシブルライブラリー」は、現在でも数多く存在する音声の自動読み上げが可能な電子書籍データ(EPUBリフロー形式)を活用し、視覚障害者が全国の公共図書館で手軽に利用できるシステムとして、多くの視覚障害者が参画して開発されました。
実証実験には視覚障害者 40名以上のほか、株式会社日本文芸社が参画し、コンテンツ配信・自動読み上げ機能などのシステム動作、サービスサイトの利便性などの検証を行いました。その結果、既存の電子書籍データを利活用したこと、コンテンツのサプライチェーンを視覚障害者にまで拡げたこと、操作性や音声の種類・速度変更機能などに対して高い評価を得たといいます。
視覚障害者のニーズに基づく、高速でも聞き取りやすい音声自動読み上げエンジンの採用し、介助がなくても単独で利用可能な視覚障害者に特化したUIを実現しており、これによって、国内に約30万人と推計される視覚障害者に対し、過去の作品やこれから出される出版物を、継続的かつ効率的に提供することができるそうです。
電子書籍とDAISY
「視覚障がいのある人や、普通の印刷物を読むことが困難な人々のために、デジタル録音図書の国際標準規格として、50カ国以上の会員団体で構成するデイジーコンソーシアム(本部スイス)により開発と維持が行なわれている情報システムに、「DAISY」がありますね。
「DAISY」はDigital Accessible Information SYstemの略で、日本では「アクセシブルな情報システム」と訳されています。
DAISYコンソーシアム公認のオーサリングツールを使ってデジタル図書を作ることができ、専用の機械やパソコンにソフトウェアをインストールして再生をすることができます。国内では、点字図書館や一部の公共図書館、ボランティアグループなどでDAISY録音図書が製作され、主な記録媒体であるCD-ROMによって貸し出されています。」(日本障害者リハビリテーション協会より)
DAISYは、国際標準規格(W3Cで提唱されているHTML、SMILなど)を基本にした規格を開発しており、この規格をもとにDAISYを製作、再生するのためのソフトウェアおよび再生機器も開発されています。
電子書籍の出版市場におけるシェアは、これからますます拡大していくと思います。売れる売れないというのも大事ですが、電子書籍だから出来ることがあり、それが人々の「不」の部分を解消できると思うんですね。特にアクセシブルライブラリーやDAISYのように、障がいのある人はもちろん、高齢者や学びの環境を得ることが難しい国内外の子どもたち、そういった人たちの「不」の部分を電子書籍、デジタルが解決できるはずです。
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