リトアニア民話絵本「パンのかけらとちいさなあくま」の教訓
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昔話
今からちょうど2年前の2020年7月28日、ポーランド、リトアニア、ウクライナの三国が、ウクライナのEU加盟を支援し、三国間の多面的な協力体制を強化するため、地域連合「ルブリントライアングル」を発足させました。「ルブリン」は、当時ヨーロッパで最も大きな国の1つであったポーランド・リトアニア共和国を創設した1569年のルブリン合同に依ったもので、政治的、経済的、文化的、社会的協力のための地域連合のこと。合わせて、ロシアによる侵略の終結を要求しています。
在日リトアニア共和国大使館 オーレリウス・ジーカスのツイッター
https://twitter.com/AurelijusZykas/status/1552775034464530433?s=20&t=z-BsuXM_0iGgzPhArEPjbw
リトアニアといえば、東欧や中欧の17カ国が中国との関係性を深める「17+1」と呼ばれるグループから脱退したり、2021年には欧州で初めて、台湾に対して台北ではなく「台湾」の名前で、事実上の大使館を開くことを認めた国ですね。
最近では、リトアニア議会が5月にロシアを「テロリスト国家」と認定、また7月にはロシアから同国の飛び地カリーニングラードへの鉄道貨物輸送の禁止措置を拡大しました。さらに昨日のニュースでは、ウクライナが海上経由で、リトアニアから石油製品の輸入を開始すると報じられました。欧州の燃料危機gが叫ばれる中、ウクライナに対して新たな輸入ルートを提供した形です。EUに加盟していながら、独自の強行路線をいくリトアニア。その動向は今後も注視していきたいですね。
リトアニアでも人気の日本の民話
先日、このリトアニア共和国の在日大使館へ訪問させて頂きました。
5月に就任された、オーレリウス・ジーカス駐日大使が、私たちの出版したバイリンガル絵本「日本の昔話名作シリーズ」の献本を受けて下さるということで、初めてリトアニア大使館へ伺いました。
オーレリウス・ジーカス大使は、高校生の頃に日本の漢字に興味を持たれ、その後日本に留学し日本語を学ばれ、2016年にはリトアニア語と日本語のオンライン辞書を作られました。ご逝去された安倍晋三元首相が、リトアニアのカナウスにある杉原千畝記念館を訪れた際に通訳もなさっており、まさにリトアニアと日本の架け橋となってご活躍されている方です。
最初にヒットしたのが、この「パンのかけらとちいさなあくま」(福音館書店)。どんな内容か気になって早速購入しました。
悪魔が教える人の道
どんなあらすじかと言うと、悪魔修行中の小さな悪魔くんのお話しです。
悪魔にも修業期間があって、道を外れた所業は許されません。貧しい木こりのパンを盗んで得意がっていた小さな悪魔くん。
それを知った大きな悪魔たちは、「貧乏な木こりの大事な弁当を盗むなんて、なんてやつだ!すぐに謝りに行け!おわびに何か木こりの役に立つことをやってこい。それまでは帰ってくるな」と叱りつけます。
「それではこまるんです。なにかいいつけてください」と泣き出す小さな悪魔くん。
木こりはちょっと考えて、悪魔くんを耕作放棄地になっている沼地に連れて行き、「ここを麦畑にできるかい? できるなら、地主のだんなにお願いしてくるよ」と提案します。
「できます、できます」と悪魔くんは喜びます。
悪魔くんはみるみるうちに、沼地を金色に輝く麦畑に変えていきます。
それを見て喜ぶ木こりと悪魔くん。
ところが、そこへ現れた地主は「沼を麦畑にしてもよいとは言ったが、おまえにやるとは言わなかったぞ。麦はみなわしのものだ」と、麦をすべて刈り取って自分の屋敷に運ばせてしまいます。
がっかりする木こりでしたが、悪魔くんは一計を案じて地主屋敷に乗り込み、胸のすくような見事な方法で取り返します。
というお話しです。
悪魔なのに道を外れた所業が許されないというのは、とても面白い話ですね。
貧しい人のものを奪ってはいけない、人を欺いてはいけない、欲張って他人から搾取してはいけない、まさに日本の民話でもよく語られる教訓です。
民話や絵本が伝えるこうした教訓は万国共通なのかもしれませんね。
今年は日本がリトアニアを国家承認してから100年にあたる年です。是非皆さんもリトアニアという国に注目して下さいね。
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