春を彩る女性の袴
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昔話
3月といえば卒業式シーズン。
今年も袴姿に花束を抱えた学生さんたちを各所で見かけるのでしょうね。
とても華やかで春を感じさせる装いです。
ところで、女性の学生さんは卒業式の際になぜ袴を身に着けてるのでしょう?
高校生までは卒業式には制服で参加しますが、大学になると制服はありませんからね、あれが制服代わりなのでしょうか?
袴の由来は定かではありませんが、日本書紀や古事記の中で、「婆加魔」や「褌」という記述が見られます。通説では腰に巻いていた裳(も)からを、穿(は)くようになったため、「はくも」と呼ばれるようになり、それが転じて「はかま」になったと言われています。
古墳時代からある袴
さて、この袴はいつ頃から穿かれていたのでしょう?
袴の歴史はなんと古墳時代にまで遡ります。古代の埴輪に袴を穿いた男性の姿が見られるんですね。古墳時代のは、男子のみが袴を穿いていて、足首まである太いズボンの形をしていました。正倉院にある最古の袴も、モンペのような形をしています。
古代の埴輪にも見られるように、日本では男性は二股に分かれたズボンのようなものを履いていました。これが少しずつ変化し、鎌倉時代頃になり現在も知られる袴の形に落ち着きました。この時代、乗馬用の袴やもんぺのような動き易い野袴、剣道用の剣道袴など様々な種類の袴が考案されました。
では、女性の袴はいつ頃から身に付けられるようになったのでしょう?
女性の袴は飛鳥・奈良時代に貴族の下着として用いられていました。それがやがて外出する衣裳へと変化します。平安時代になると、宮廷の身分の高い女性たちが、緋袴(ひばかま)、紅袴(くれないのはかま)を着用するようになり、これが現代でも巫女さんの装束として用いられているんですね。ちなみに雛人形の三人官女が身につけているのが緋袴です。
武家社会では武士の礼服として袴が着用されていましたが、江戸時代になると身分や性別によってきびしく身なりが定められ、女性は袴を身につけることが禁じられました。そんな中でも宮廷の女官たちは例外とされていました。
袴文化の復興
一時廃れた女性の袴文化ですが、明治時代になると、宮中の女官服に由来した女袴が、女学生の制服として考案されました。これが学問の場でのきちんとした身なりとして受け入れられるようになり、「女学生の制服」として袴を取り入れる学校が増えていきます。当時は、学生だけでなく、教師も袴を着ていました。この頃は、女性たちの高等女学校への進学率は低かったため、袴姿の女学生は身分の象徴でもあり、憧れだったようですね。
明治後期から大正時代にかけては、女学生たちが当世のファッションリーダーでした。今も昔も、この世代の女性たちがファッションリーダーなんですね。明治後期に革靴のブーツが販売されると、それをファッションにいち早く取り入れて、袴にブーツを合わせたスタイルを大流行させました。髪には大きなリボンを付け、和装に西洋のアイテムを取り入れたファッションを楽しんでいました。袴は振袖と違ってとても動きやすく、着物に比べると歩きやすかったため、大正から昭和にかけては袴を着て自転車に乗る学生もいました。
従来の着物に帯というスタイルに比べて、袴は優美な見た目と動きやすい機能性を兼ね備えている点も、制服として採用されたポイントだったのでしょうね。女性がおしゃれを楽しむ気持ちは、昔も今も変わりません。現代の卒業式で、袴に身を包んだ女子学生たちは、時代を超えておしゃれにこだわる気持ちが受け継がれているのでしょう。
今日は袴が出てくる昔話を1つ。
『ちいちい袴』
昔、ある山家に婆さんが住んでいました。
ある日夜遅くまで糸を紡いでいると、どこからか小人が現われて、
「婆さん寂しいだろう。ワシが躍ってみせましょう」
「ちいちいばかまに木脇差を差して、これ、婆さんネンネンや」
と面白おかしく躍ってみせたものの、ふとかき消すようにいなくなった。
婆さんは気味悪く思い、翌日家中調べると、縁の下から古くなった鉄漿つけ楊枝が出てきた。
さてはと思いそれを焼き捨てると、二度と怪しいことはおきなかった。
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