豊作を願う日本の心を取り戻そう
今日2月17日は、旧暦の立春にあたりますね。
立春といえども冬真っ盛りで、まだまだ春とは言い難い感じです。
昔から旧暦の立春に行われてきた、「祈年祭」という日本の伝統的な行事があるのをご存知ですか?
祈年祭は「きねんさい」と呼ばれますが、訓読して「としごいのまつり」とも言います。毎年決まった日時に神社でおこなわれる恒例祭のひとつで、豊作を願うお祭りのことで、この「とし」とは五穀(ごこく)のなかで主に稲のことを指します。稲を主として他の穀類に至るまで成熟を祈るお祭りなんですね。
日本の社会文化は、本来この稲作中心の農耕社会で、春に年穀の豊穣(ほうじょう)を祈って祈年祭行い、秋には豊作を感謝する「新嘗祭(にいなめのまつり)」というを行うのが、農耕祭祀(さいし)儀礼の基本でした。現在では旧暦の立春は2月17日にあたり、どこの神社でも毎年2月17日に祈年祭が行われます。
祈年祭はさまざまな農作物が、無事に豊作になるように願うことが目的で「五穀豊穣」と呼ばれます。「五穀豊穣」とは、穀物が豊かに実ること指しますが、「五穀」は具体的な五種を指すわけではなく、穀物全般の総称として用いられています。
日本古来の書物にも五穀が出てきますが、それぞれ少しだけ違うんですね。
古事記に記載されている五穀は「稲、麦、粟、大豆、小豆」
日本書紀に記載されている五穀は「稲、麦、粟、稗、豆」
建立曼荼羅護摩儀軌は「大麦、小麦、稲穀、小豆、胡麻」
と記載されています。
建立曼荼羅護摩儀軌では、米が含まれていません。
現代での五穀というと、「米、麦、粟、豆、黍(きび)もしくは稗」ですね。
秋の豊作を祝う「新嘗祭」は、その年の初穂を神様にお供えをして、宮中では天皇自らが育てた初穂を食しながら神様に食べ物の恵みについて感謝します。新嘗祭がおこなわれる時期は毎年11月23日で、宮中の恒例祭典の中では特に重要なもののひとつになっています。現代人にとって11月23日は「勤労感謝の日」という認識ですが、戦前は全国でこの新嘗祭が行われていたんです。
食自給率が低下し、食習慣がすっかり欧米化してしまった私たちは、もう一度原点に立ち返って、祈年祭や新嘗祭を祝う習慣を取り戻す必要がありますね。
今日は豊作にまつわる昔話を1つ
『かかしの神様』
むかしあるところに、毎年秋はとても豊作になる村がありました。
ある年のことです。その年も稲の実りが良かったので、「今年の秋も豊作だ」と村人たちは喜んでいました。
ところが、すずめたちが次々にやってきては米を食べてしまいました。
追い払っても次から次へとすずめたちはやってきます。
そこで九兵衛という小作人が、本家に相談に行きました。
すると「かかしを作ってみてはどうか」という話になりました。
さっそく九兵衛はかかしを3体作って、田んぼの真ん中に立ててみました。
九兵衛が、「田の米をどうか守ってください」とお願いすると、
なんとかかしは歌をうたいながらすずめを追い払ってくれました。
その甲斐もあって、その年も豊作になりました。
やがて年末が近づき、九兵衛は嫁に頼んでかかしへのお礼の膳を床の間に用意してもらいました。
すると、可愛らしい娘3人が窓から顔を出し、床の間の膳に座りました。
この3人はかかしの神様だったのですが、可愛らしいかかしを九兵衛の愛人だと勘違いした嫁は怒り出し、夫婦喧嘩が始まりました。
この夫婦喧嘩を見た娘たちは、慌てて窓から逃げて行ってしまいました。
これに気づいた九兵衛は、3人目を何とか取り押さえて、外に出さないようにしました。
夜が明けて元旦の朝となり、本家のおじいさんが九兵衛に家に寄ると、九兵衛が稗俵を1俵抱えていました。
不思議に思ったおじいさんが、「何があったんだ」と尋ねると、九兵衛は昨夜の一部始終を話しました。
本家のおじいさんは「せっかく福の神が来たというのに、嫁が勘違いをしたばかりに、金3俵になるところが稗俵1俵になってしまったな」と言いました。
そのことがあってから、九兵衛は毎年の年末には、かかしの数だけ膳を用意してお礼をしたそうです。
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