一芸が身を助けた!〜天狗とこま〜
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昔話
12月も10日となりました。
師走というとなんとなく忙しなく、他の月に比べて時の流れが早い気がしますね。
街はクリスマスモードになり、ところどころでイルミネーションが輝き、クリスマスソングが流れています。僕は子どもの頃からあまりクリスマスには興味がなくて、お正月を楽しみにしていました。お年玉をもらうことはもちろん楽しみの1つだったのですが、普段あまり会えない従兄弟たちと遊ぶのがすごく楽しみだったんですね。
いまでは、親戚一同集まってもオンラインゲームなどで遊ぶのかもしれませんが、僕の幼少期はもっぱら外で遊んでいました。凧揚げや羽付き(バドミントンだった記憶も)など、お正月らしい遊びもやりましたね。祖父が手作りしたコマでも遊んだ記憶があります。
コマって実はとても歴史の深いものだってご存知でしたか?
奈良時代から伝わる日本のコマ
日本にコマが伝えられたのは今から1300年ほど前の奈良時代。
藤原京跡から出土した、逆円錐の先端が細く削られた木製のコマが日本最古のコマといわれています。
奈良時代(710年~794年)から平安時代(794年~1185年)にかけては、宮中で占い師がコマを回して吉凶を占ったり、貴族階級が遊びとしてコマ回しをしていました。平安時代に書かれた『倭名類聚抄(わみょうるいじゅしょう)』には「古末都玖利(こまつぐり・こまつむぐり)」という記載があります。元々日本では独楽のことを「つぐり」や「つむぐり」と呼んでいたようです。そして、これらの語源は 独楽として使われた貝殻を意味する「つぶり」だといわれています。この頃中国から孔がある「鳴り独楽」が伝わりました。鳴り独楽は胴体の一部に空洞を作ることで、回る時に音が出るコマです。この鳴り独楽が回る時に発する音によって占いが行われていたという説、うなり音に魔よけの霊力を求めていた説もあります
南北朝時代になると、『太平記』に「独楽回しして遊ぶ童の中で、10歳ほどになる者が俄かに物に狂って・・・」との記述があり、貴族社会のみで使われていたコマが、民間へと広がっていることがわかります。
その後、都市部を中心に商品経済が展開を見せ、庶民階級が力を持ち始めた江戸時代になると、コマの形や回し方に多くのバリエーションが誕生し、日本各地で土地に根ざしたコマが生まれます。糸をかけて回す「博多ゴマ」、雪を固めながら回すのに適した東北地方の「ずぐりゴマ」、木地師がロクロを回して作る「木地ゴマ」、関東地方の洒脱な形と華やかな色合いの美しい「江戸ゴマ」、ベーゴマの前身となる「貝ゴマ」、指先でひねって回す「花ゴマ」や「銭ゴマ」、ムチで叩いてまわす「叩きゴマ」など、本当に様々なコマがあるんですね。コマ回しは全国の庶民の間で流行していきます。
まっすぐに芯が通っていてくるくると回る姿が、「お金が回る」「物事が円滑に回る」ということに通じることから、新春の縁起物として歓迎されるようにもなりました。またコマ同士をぶつけあったり、回る時間を競ったりすることから、男の子に強くたくましく育ってほしいという願いも込めらるようになり、コマ回しは男児の遊びと位置づけられたんですね。
最近は外でコマを回している子どもなんて一切見かけませんが、お正月くらいは昔ながらの遊びをしてもいいですよね。
昔話の中のコマ
さて、今日はコマにまつわる日本の昔話を1つご紹介します。
「天狗のこま」というお話です。
昔、まわりを深い杉の木立でぐるっと囲まれた小さな村に、国清寺という寺がありました。
寺の周りは深い杉の木立が取り巻いていて、昼間でもうす暗く、その上その杉木立の中には昔から「天狗の鼻」と呼ばれる、奇妙な形をした岩が祀られていました。
この国清寺にはいたずら者の「一兆さん」という小僧さんがいました。
一兆さんの悪戯には、和尚さんもほとほと手を焼いておられました。
和尚さんがお出かけで不在の時などは、一兆さんは修行もせず、村の子供たちとコマ回しをして遊んでいました。
一兆さんのコマは強く、他のコマを弾き飛ばし、みんなのコマを巻き上げてしまうほどでした。
そんな一兆さんには、たった一つだけ怖いことがありました。
それは夜に便所に行くことです。
今夜も寺の長い廊下を思い切り駆けて行き、渡し板を渡って便所に駆け込みました。
やっとの思いで用を足して戻ってくると、先ほど渡った廊下の渡し板が落ちて部屋に戻れなくなっていました。
その時です、天狗がばたばたっと一兆さんの周りに降り立ったかと思うと、あっというまに一兆さんの体は宙に持ち上げられ、何やら真っ暗い場所に連れさられてしまいました。天狗たちは、いたずら者の一兆さんを天狗に変えようとしました。一兆さんは必死に抵抗します。
ふと一兆さんは、自分の懐にコマが入っているのに気付きました。
コマ回しなら誰にも負けないと思った一兆さんは、天狗達にコマ回しの勝負を持ちかけました。
一兆さんは、天狗たち相手に勝ちまくりました。
ことごとく負けた天狗達は負けゴマを一兆さんの懐にねじ込むと、ものすごい笑い声と羽音と共に飛び立っていきました。
気が付くとすっかり夜が明けていて、一兆さんの懐の中のコマは、不思議なことにすべてキノコに変わっていました。
その夜、国清寺では一兆さんの話に大笑いしながら、みんなでお腹いっぱいキノコを食べたということです。
一兆さんのお話は夢だったのか、現実か?いたずら者の一兆さんを天狗たちが懲らしめにきたのか。
それにしても、特技を持っているというのは強いですね。勉強ができることも大事ですが、一芸に秀でることはとても素晴らしいことですね。
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