続けることの大切さ 〜斧から針を作ったお坊さんのお話〜
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最終更新日:2022/07/09
昔話
今日12月7日は二十四節気の中の大雪です。
大雪の意味は、「雪がたくさん降って積る時期」になります。
これは、江戸時代に太玄斎(常陸宍戸藩の第5代藩主松平頼救)によって刊行された「暦便覧」に記載されている『雪いよいよ折り重ねる折からなれば也』や、二十四節気の発祥地である中国にて著された「月令七十二候集解」の中の『大者、盛也、至此而雪盛矣』が由来とされています。
針の労を労う針供養
大雪に行う風習として、江戸時代から続く「針供養」があります。針供養は、長年使った針の労を労うものです。針供養は地域によって日付が異なり、一般的には西日本は大雪の期間中となる12月8日、東日本は2月8日に行うことが多いようです。
固いものを縫って折れた針や使い古した針を、やわらかい豆腐やこんにゃくなどに刺して、感謝の気持ちを込めたそうです。
針は神社や寺で供養された他、川に流したりして、同時に裁縫の上達を願ったとされています。
豆腐やこんにゃくといった柔らかいものに刺すというやり方が一般的で、その理由は「いつも硬いものばかりに刺しているから最後は柔らかいものに刺して休ませる」というもので、針に対する供養の気持ちの表れです。
これは、すべてのものに命があるという、日本人特有の感情によるものでしょうね。
針にまつわる昔話
針にまつわる日本の昔話に「よきとぎ地蔵」というお話があります。
斧(よき)から針を作った、お坊さんの話です。
早速あらすじを見ていきましょう。
むかし、山の中に小さな村があり、そこに茂助という若者が住んでいました。畑が少ないこの村では、耕す土地を少しでも広げようと、村人達が毎日努力していました。茂助も同じように山の荒地を切り開いていましたが、いつしか嫌気が差し、気も荒み働く気力さえ失っていました。
ある日の事、一人のみすぼらしい姿をしたお坊さんが茂助の家を訪ね、破れた袖を直すために針と糸を貸してほしいとお願いしました。ところが心が荒んでいた茂助は、お坊さんに「針が欲しけりゃ裏山に捨てたよき(手斧)を研いで針を作ってみろ。」と言って追い返してしまいました。
次の日、茂助は、お坊さんが村中の家々を回って追い返された後、裏山にある杉の木の下で、よきを研いでいる事を村人達から聞かされました。まさかと思って茂助が裏山に行ってみると、昨日の茂助の言葉を真に受けて、お坊さんは針を作ろうとよきを必死に研いでいるではありませんか。
お坊さんのあまりにも真剣な姿に恐れをなして、茂助は逃げるように山を降りて行きました。
お坊さんは昼夜を問わず、毎日毎日ひたすらよきを研ぎ続けました。
まもなく村は深い雪に閉ざされ、やがて春の日が射すようになった頃、お坊さんを心配した茂助と村人達は、裏山に向かいました。すると既にお坊さんの姿はなく、そこには袖の縫い付けられたお坊さんの衣が残されていました。そして袖には小さな針が刺してありました。お坊さんは、本当によきから針を作ってしまったのです。
これを見た茂助と村人達は、自分達が荒れ地にさじを投げている間に、お坊さんは本当によきから針を作り上げたのだと強く心を打たれました。それから茂助と村人達は諦めていた山の荒れ地をまた切り開き始め、田畑はどんどん増えていきました。そして貧しかった村は少しづつ豊かになっていきました。
その後、あの不思議な坊さまの残した針と衣を祀り、そこにお地蔵様を建てました。
その後この地蔵様は誰言うとなくよきを研いで針を作った事から、 「よきとぎ地蔵」と呼ばれるようになったそうです。
続けることの大切さ
なかなか結果の出ないことは、すぐに諦めてしまいがちですが、継続してコツコツやることが大切だということを教えてくれる昔話の一つです。
為せば成る、為さねば成らぬ何事も。
成らぬは人の為さぬなりけり。
上杉鷹山公の有名な言葉です。
何かを成そうと思えば、まずやること、そしてやり続けることが大事ですね。
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