日本食の決め手は「出汁」そのルーツは?

公開日: : 現代文化のルーツ

急に秋になってしまった感のある日本列島。朝晩はちょっと寒いと感じますね。そうなってくると、晩御飯におでんや鍋物などもいいかな?なんて思ってしまいます。

お味噌汁、鍋、うどん、そばなど、日本食にはだしが使われている食べ物がたくさんありますね。でも 日本食以外でも中華料理やイタリアンなどの隠し味にもだしが使われています。様々な場面で利用出来るだしですが、その歴史はいつ頃からはじまったのでしょうか?意外と知られていないだしのルーツを探ってみましょう。

現在では様々な種類のだしがありますが、そのルーツは縄文時代に遡ります。当時は狩猟・採取生活が中心でしたが、野草や木の実といった食材の中には毒が入っている物もあり、生の状態だと消化に悪い物も多くありました。この頃人々は縄文土器を作り出し、火を使うことを覚えるようになります。食材をどうにかして食べたいと考えていた当時の人々は、木の実や果物、きのこや魚、貝や獲物の肉など、様々な食材を土器で柔らかく煮て食べるという方法を編み出します。煮ると食材が柔らかくなり、苦味や渋みがなくなるということを発見したんですね。そこで、さらに新たな発見をします。魚や肉を煮た際に出た煮汁に、食材の旨味が溶け出していたんですね。この頃の発見が、現在のだしのルーツになったと言われています。

現在メジャーなかつお節や昆布が本格的にだしとして使用され始めたのは奈良時代です。朝廷へ納める税として、かつおと思われる「堅魚」や「煮堅魚」、「煮堅煎汁」といった記述が当時の文献にあったといいます。かつおの旨味を凝縮した「堅魚煎汁(かたうおのいろり)」は日本最古の調味料と言われていて、701年に制定された大宝律令では、朝廷への重要献上品としても指定されていやんですよ。797年に成立した続日本紀(しょくにほんぎ)には、昆布が朝廷へ献上されたという記述が残されています。奈良時代からかつおや昆布が調理に使われるようになり、室町時代後期の文献には素材ではなく「だし」としての記述されているものが見つかりました。料理をはじめ、魚鳥の取扱い、飲食の作法について紹介しており、その中で白鳥を煮て調理する際に「にたし」というかつお節を用いた「だし」や、「だし」をとる際にだし袋を使用していたという記述が見られます。

江戸時代に入ると、かつおだしの料理書が登場するなどだし文化が発展していきます。さらに、江戸時代に入ると、江戸時代初期の代表的な料理書である「料理物語」など多くの文献に「だし」を利用した料理が登場してきます。江戸中期になると、昆布と鰹節との「合わせだし」の記述もあり、この頃には現代に近い「だし」の取り方が発明されていたことが伺えます。この頃、江戸ではそばが広まり、関西ではうどんが広まったことから、その汁として、だしが使用されるようになっていったんですね。その後、煮物や汁物のベースにかつおや昆布だしが用いられ、徐々に全国へと広がっていきます。特に魚から取れるだしは貴重かつ料理に深い味わいを出すとして、高級料亭で用いられるようになりました。現在では当たり前のように多くの料理に使用されていますが、当時は秘伝の味として一般人への公表は避けていたようです。料理人の世界では、普通の板前さんはだしを作る事ができず、店主などのトップの人が作るというルールもあったようです。

ときに、関東だしは濃口しょうゆを使っているため色が濃く、反対に関西だしは薄口しょうゆを使っていて色が薄いのが特徴ですね。関東のそばと関西のうどんでは、味が色合いも違います。味も関東だしの方が濃く作られており、塩分が多めになっています。さて、どうして東西でこのような違いが出たのでしょうか?
当時、関東では多くの人が肉体労働を中心にして生計を立てていました。汗をかいて仕事をする人が多かったことから、塩分が必要になり、そこからだしや料理も味の濃いものが好まれるようになったようです。一方で関西地方は、関東に比べると頭脳労働の人々が多くかった。公家など高い家柄の人も多くいたというのも影響していたようです。家柄が高いとはいえ、公家であっても倹約が必要な人たちもいました。そこで、京の人々はだしを有効利用して、少ない素材でも味が引き立ち、美しく見えるような調理方法を編み出したんですね。
今では、スーパーでもたくさんの「だし」が手に入るようになりました。
塩分や糖分を控えめにするのがトレンドになっている昨今、だしを上手に使うことで、健康的でありながら見た目も味もいい食事が作れると思います。
だしの深い歴史を知ったことで、今日の食事はより味わい深いものになるかもしれませんね。

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