現代文化のルーツを探る㊵ 紙芝居
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現代文化のルーツ
最近息子が絵本に興味を持つようになりました。
それまではYouTubeではたらく車のアニメばかり見ていたけど(今でも1日1回は見る)、最近は絵本をたくさん運んできて、「さあ、一緒に見ようか!」と私の膝の上に腰掛ける。一般的な絵本も好きですが、絵の一部がめくれる仕掛け絵本がお気に入りで、どんなことが起こるか分かっているのに、目を輝かせながら見ています。
今では保育園や幼稚園で絵本を読み聞かせるのが一般的ですが、その昔は紙芝居だったんですよね。私の幼少期は紙芝居を見せてもらった記憶があります。主流は絵本でしたが、時折先生が読んでくれる紙芝居が楽しみでした。紙芝居って演者に熱が入れば入るほど面白いんですよね。どんどん引き込まれていく。皆さんは紙芝居を見た経験はありますか?
紙芝居は結構昔からあるものかと思っていましたが、その歴史は意外に浅いんですよね。
今日は紙芝居のルーツを見てみたいと思います。
江戸の娯楽が紙芝居のはじまり
紙芝居は、その源流をたどっていくと、江戸時代の「のぞきからくり」や「写し絵」から派生したものとみられています。「のぞきからくり」は、江戸時代にオランダから渡来した見世物ですが、 1.8メートルほどの箱の表に数個の穴をあけて、レンズをはめこみ、そこから中の絵を覗かせる仕組みになっていました。 内容は、必ずしも子ども向きのものとは限りませんでしたが、子どもにも人気があったそうです。
今の紙芝居の原型となったのは江戸時代の「写し絵」と言われています。「写し絵」は寄席などで人気を集めていました。 木製の小箱に光源となる油ランプを入れ、ロウソクでフィルムに相当する種板に光をあてて、和紙のスクリーンに写し出すもので、 明治中期まで栄えました。それが紙人形の芝居である「立ち絵」に変化し、昭和の初めには現在と同じ絵物語式の紙芝居に発展したといいます。
紙人形が紙芝居に
「立ち絵」は竹のくしを付けた紙人形を舞台で動かして演じさせるもので、 台の上で人形を置いてあやつると、それが鏡に映されて立って動くように見える仕掛けになっている「かがみ」とよばれるものもありました。 このような紙人形を使う芝居ということで、「紙芝居」という名前がついたとする説もあります。
ちなみに別の説として、平安時代の『源氏物語絵巻』であるという説もあります。絵巻の「東屋」の段に物語絵を見ながら、語り手の話を聞く場面が描かれており、これが紙芝居の構造に似ているといいます。
大正13年(1924年)頃から紙芝居屋が増え始め、紙芝居の見料かわりに飴を売ることで収入を得ていました。1930年頃には街頭紙芝居という形で広まりを見せます。街頭紙芝居とは、文字どおり街頭で演じられる紙芝居です。自転車の荷台に舞台をのせた紙芝居屋さんが路地や公園にやって来て、子どもを集め、アメやセンベイなどのお菓子を売ります。そのお菓子を買った子どもだけが紙芝居を見ることができるのです。つまり、お菓子が見料というわけです。いま図書館や学校、幼稚園などで演じられる紙芝居は絵もことばも印刷されており、「印刷紙芝居」とか「教育紙芝居」と呼ばれていますが、その元になったのは街頭紙芝居でした。皆さんがイメージする紙芝居屋さんというと、この街頭紙芝居ですかね。
共感を呼ぶ世界づくりが紙芝居の醍醐味
戦時中は、共感をつくる特性が悪用され、数多くの紙芝居が戦争協力のためにつくられました。 戦後、「平和で人間の命を大切にし、子どもを愛することを原点とする」教育紙芝居運動が起き、「生きる意味とすばらしさ」をこめた優れた出版紙芝居作品の流れがつくられてきました。
1957年には紙芝居出版社として童心社が創立します。童心社といえば、数々の素晴らしい作品を出版する出版社さんですね。我が家にも童心社の作品がたくさんあります。出版紙芝居は、表面的なおもしろさだけでなく、作家が楽しさの奥底に深いテーマや教訓のある作品を追求するようになりました。
紙芝居の魅力は、その独特の形式と特性にありますね。紙芝居は、作品を舞台に入れ、一枚一枚、画面を抜き差しすることで進行します。画面の裏に文章があるため、必ず演じ手が必要となり、演じ手は観客と向かい合って、内容を伝えます。演じ手が画面を抜き出していくと、作品の世界はが現実の空間に広がっていきます。そして、演じ手と観客がコミュニケーションすることで作品の世界を「共感」します。
今では街頭紙芝居屋さんはほとんど見なくなりましたが、自宅で手作り紙芝居を演ってみるのも面白いかもしれませんね。駄菓子屋でアメやセンベイを買い込んで週末紙芝居なんていかがですか?
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