ニュースタンダードな兼業農家が日本の食を救う
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兼業農家が日本の未来を救う
前回のブログでは、コロナ禍で増えていそうな兼業農家が実は減少傾向にあるということを書きました。
リモートワークや田舎暮らしで、兼業農家は増加しているイメージがありませんか?なぜ減少傾向になっているのでしょうか。
雑草だった兼業農家
歴史を見れば、江戸時代の昔から日本の農家は兼業が一般的でした。普段農業を行なっている人も、農閑期になると様々な仕事を生業としていたんですね。農家の専業・兼業を区別するようになったのは明治時代からといわれますが、そもそも専業農家といっても田畑の耕作だけをしているわけではありません。村の普請で土木作業もやれば、最近は農産加工や直売にも取り組んでいます。
兼業農家はかつて「雑草」にたとえられるほど増え続けていて、邪魔者扱いされた時代もありました。
日本の農業政策は水田稲作をベースにしてきており、1961年の旧農業基本法の制定以来、規模拡大による生産性向上を掲げてきました。しかし、稲作農家の経営面積はなかなか拡大せず、その要因として兼業農家が農地を手放さないことが挙げられました。
農地の利用権を手放さない兼業農家は「雑草」に例えられ、1981年の農業経済学会・大会シンポジウムでは、その雑草を退治する必要があると主張する学者も現われたほどでした。兼業農家が裏作をしないことで農地の有効利用が阻害されている、平坦部の土地利用型農業は大規模借地農と土地持ち自家菜園・非農家へ両極分解したほうがいいと主張もありました。
バブル崩壊前に減少をはじめる兼業農家
農林水産省によると2019年の農家数は113万戸で、2000年の半分に減ったとのこと。減少が著しいのが第2種兼業農家で、約6割減の58万戸になりました。一方で、農業所得が主の第1種兼業農家と専業農家は合計で55万戸と、3割減にとどまりました。兼業農家はかつて都市と農村の分断を防ぐという社会的意義がありました。高度成長期に地方に工場が増えたことで、給料と農業収入を合わせれば、都市部での勤務と遜色のない所得を得ることができました。
しかし、1980年代後半になると円高等の理由により工場の海外移転が進み、それまでの兼業農家構造を継続することが困難になりました。農家と兼業しようとしても、地方での雇用が減ってしまったのです。バブル崩壊後には地方はさらに疲弊が進み、兼業農家の存続を難しくしました。その傾向が今も続いているのです。
一方で専業農家の数は37万戸と、第1種兼業農家の数18万戸も上回ります。この中には会社などを退職して専業農家になった「元・兼業農家」の人も多く含まれているとみられます。専業の数は見かけ上はあまり減っていないように見えますが、これから大規模な農業ビジネスを展開してけるかというとかなり難しく、2015年の時点で専業農家のうちの6割強を65歳以上が占めています。
景気の底冷えと地方の衰退で兼業農家の絶対数が減り続け
兼業農家だった世代は現役を引退して専業農家となり
専業農家の多くが65歳以上の高齢者
これが日本の食料生産を担う農業の実態なのです。
兼業農家のニューススタンダード
さて、ではどうするか。
そこで力を発揮するのが、ニュースタンダード時代の「新型兼業農家」だと思うのです。
高度成長経済期の「工場勤務×農業」の兼業スタイルとは違い、これからは「オンライン×農業」のスタイルが兼業農家の主流になるでしょう。かくいう私も、このオンライン×農業のタイプで、パソコンとインターネットがあれば、畑の真ん中でも仕事ができます。単にオンラインを使った仕事だからどこででも出来るということだけではなくて、農作物の販売やプロモーションもオンラインを活用することで可能になります。オンラインショップで販売することはもちろん、SNSのつながりを活用して、農業イベント、農業体験、農業セミナーもできる時代です。
80年代前半に「雑草」と呼ばれたように、今後どんどん兼業農家が増えて欲しいと思います。いえ、増えていく必要がありますね。ただ、当時の雑草とは違い、これからの雑草はきっと個性豊かな色とりどりの花を咲かせるでしょうね。
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