兼業農家が日本の未来を救う!? ー減少を続ける兼業農家ー
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最終更新日:2021/06/10
兼業農家が日本の未来を救う
今から12年前の2009年、私は現在のジーレックスジャパン株式会社で仕事をスタートしました。
それまでは住宅建築会社や介護福祉サービスの会社で仕事をしていましたが、2008年に当社社長から声をかけてもらい、創業と同時に今の職に就きました。
時代の先端を行っていた!?ワークスタイル
本社である千葉県市原市と、私の住まいのある茨城県土浦市は、電車を使っても車であってもドアツードアで2時間半の道のり。到底毎日通勤することは難しかったので、当初から週に2、3回のリモートワークを導入していました。といっても、現在のようにZoomもなければLINEもfacebookも無い時代。連絡手段は電話かメールだけなので、ちゃんと仕事をしているかどうかは、成果物と信頼関係しかありませんでした。今ならすぐに画面を共有したり、チャットでやりとりしてスムーズに進む仕事も、度重なるメールのやりとりと電話での確認を繰り返し、繋がらなければやきもきしながらひたすら待つという、とても忍耐のいる仕事だったのです。
当初は、リモートワークというと「何それ?」「仕事はかどるんですか?」なんて言われたものですが、それから徐々に、SNSやオンライン会議ツールが充実しはじめ、東日本大震災、新型コロナウイルスの発生など、通勤者の仕事が停滞してしまう時でも、ほぼ問題なく業務を続けられるリモートワークを羨ましいと言う人が増え始め、今では主流になりつつあります。
東京都内で事務所を賃貸していた会社が、首都近郊の安価な事務所に移転したり、より狭い事務所に移るなどして、賃料を年間数千万〜数億円削減したというニュースも出ていますね。都心部に仕事を求めて通勤するスタイルから、在宅や自宅近くのシェアオフィスで仕事をすることがニュースタンダードと呼ばれ、郊外で田舎暮らしをしながら仕事をするという話しも、よく耳にするようになりました。私は元々実家が農家で田舎に暮らしているため、田舎暮らしに憧れるということはないですが、都心部に住む人たちからは、「羨ましい」「自分もそういうワークスタイルにしてみたい」なんて声をもらいます。
離れてみて初めて気づく田舎の宝
我が家は戦後祖父母が土地を開墾し、長い時間をかけて田畑にしてきました。父の代からは専業農家から兼業農家となり、さらに土を起こして肥料を入れて何度も耕すことで、しっかりした野菜が育つ土地になりました。私は幼い頃から、仕事をしながら朝晩や休日は農作業に勤しむ父の姿を見てきました。
思春期から学生時代は、田畑と森林しかないこの環境がとてもいやで、都会に憧れてなんとかここを出ようと、大学も就職先も家から通えない場所を選んだものです。就職が決まりやっと家を離れることが出来たのに、そこで待っていたのは、まったく水の合わない世界。毎日の外食、遊び、徹夜仕事などで体を壊し、職を変えて地元に戻ることとなります。
そして戻ってみて初めて気づいた、井戸水の美味しさや森の清々しい香り、畑の土のあたたかさや作物の美味しさ。目の前に眠っていた宝にようやく気づくことができました。それ以来、私は農業をしながらリモートワークで出版やwebプロモーションの仕事をしています。それも今年で12年目。これが当たり前になり過ぎて、もう通勤する仕事には戻れないような気がします、、、。
ニュースタンダード時代でも第2種兼業農家が減っている?
コロナ禍になり、田舎暮らしを始める人も増えて、私のような兼業農家の数が増加しているのだろうと思って調べてみたら、実はその逆で、2020年11月下旬に発表された「2020年農林業センサス結果の概要」によると、全国の農業経営体数は107万6,000で、5年前の調査に比べ30万2,000も減っているといいます。この減少分の多くは、兼業農家が占めるものと思われるというのです。中でも農外収入の方が多い、第2種兼業農家が顕著に減り続けているといいます。この傾向は2000年代になってから一貫したものなんですね。
農業のみを営む「専業農家」に対して、自営農業以外に世帯員のうちだれかが他の業をあわせ営む農家を「兼業農家」と呼びますが、日本では兼業農家をその収入源からみて、農業収入が主である「第1種兼業農家」と兼業収入が主である「第2種兼業農家」とに分類しているのです。第2種兼業農家が増えていると思ったのに、これは意外でした。日本の農業の歴史でいっときは爆発的に増えた兼業農家が、なぜ減少傾向を辿っているのか?コロナ禍におけるライフスタイルが変化しているにもかかわらず、なぜ第2種兼業農家は減少するのか?同じ兼業農家の一員として、次回探ってみたいと思います。
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