現代文化のルーツを探る㉗ コマ
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現代文化のルーツ
温かな陽気に誘われて、日曜日に息子とお散歩に出かけました。
我が家の近所には人工的に作られた公園があります。工業団地の中の一角にあり、ほとんど人が来ない場所で、息子と僕の秘密基地のようになっています。ここは人工的とはいえ、周囲には天然の田んぼと畑があり、たくさんの木や草花が植えてありとても癒されます。この公園にある小高く盛られた山を登り降りするのが、息子の楽しみなんです。
先日も山を降った後、息子がしゃがみこんで動かなくなりました。怪我でもしたかと思って駆け寄ると、一心不乱にどんぐりを拾っていました。家の周りにもどんぐりはありますが、きっと整備された公園では目立つんでしょうね。我が家は若干鬱蒼としてしまっているので、、、。
息子が両手いっぱいに拾ったどんぐりで、どんぐりゴマを作ってみました久しぶりに童心に帰ってコマを回してみると、息子もクルクル回るどんぐりに大喜び!僕が小さかった頃は、どんぐりでコマを作ってよく遊んだものです。皆さんは遊びましたか?
最近はスマホゲームや、オンデマンドビデオなどのエンタメやオモチャも充実しているので、自作のコマや竹とんぼなど、自然のものを使った遊びなんてほとんどしなくなりましたね。今の子どもたちはコマなんて知らないかもしれない。
実はコマってとても歴史が深いものなんです。
今日はコマのルーツを探ってみたいと思います。
日本に独楽が伝えられたのは今から1300年ほど前の奈良時代。
藤原京跡から出土した、逆円錐の先端が細く削られた木製のコマが日本最古のコマといわれています。
奈良時代(710年~794年)から平安時代(794年~1185年)にかけては、宮中で占い師がコマを回して吉凶を占ったり、貴族階級が遊びとしてコマ回しをしていました。平安時代に書かれた『倭名類聚抄(わみょうるいじゅしょう)』には「古末都玖利(こまつぐり・こまつむぐり)」という記載があります。元々日本では独楽のことを「つぐり」や「つむぐり」と呼んでいたようです。そして、これらの語源は 独楽として使われた貝殻を意味する「つぶり」だといわれています。この頃中国から孔がある「鳴り独楽」が伝わりました。鳴り独楽は胴体の一部に空洞を作ることで、回る時に音が出るコマです。この鳴り独楽が回る時に発する音によって占いが行われていたという説、うなり音に魔よけの霊力を求めていた説もあります
南北朝時代になると、『太平記』に「独楽回しして遊ぶ童の中で、10歳ほどになる者が俄かに物に狂って・・・」との記述があり、貴族社会のみで使われていたコマが、民間へと広がっていることがわかります。
その後、都市部を中心に商品経済が展開を見せ、庶民階級が力を持ち始めた江戸時代になると、コマの形や回し方に多くのバリエーションが誕生し、日本各地で土地に根ざしたコマが生まれます。糸をかけて回す「博多ゴマ」、雪を固めながら回すのに適した東北地方の「ずぐりゴマ」、木地師がロクロを回して作る「木地ゴマ」、関東地方の洒脱な形と華やかな色合いの美しい「江戸ゴマ」、ベーゴマの前身となる「貝ゴマ」、指先でひねって回す「花ゴマ」や「銭ゴマ」、ムチで叩いてまわす「叩きゴマ」など、本当に様々なコマがあるんですね。コマ回しは全国の庶民の間で流行していきます。
まっすぐに芯が通っていてくるくると回る姿が、「お金が回る」「物事が円滑に回る」ということに通じることから、新春の縁起物として歓迎されるようにもなりました。またコマ同士をぶつけあったり、回る時間を競ったりすることから、男の子に強くたくましく育ってほしいという願いも込めらるようになり、コマ回しは男児の遊びと位置づけられたんですね。
動画やゲームもいいですが、たまには外に出て青空の下、子どもさんとコマ回しで遊んでみませんか?
意外に子どもたちの方が上手に回せるかもしれませんよ。
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