現代文化のルーツを探る①「お弁当」
公開日:
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最終更新日:2021/01/14
現代文化のルーツ
オモイカネブックスの岩瀬貴之です。
オモイカネブックスは、日本の文化や歴史、学術、アートなどを世界に紹介する出版メディアです。
ここでは、日本人である僕たちにとって、生活の中で当たり前になっていることのルーツを探り、紹介していきたいと思います。
世界に広がる日本の弁当文化
新型コロナウイルスの拡大で、外食を控える傾向もあり、僕は毎日都内に通勤している妻のお弁当を作っています。
お弁当だけなく食事の担当は僕なんです。お弁当って、お腹を満たすためだけのものではなく、蓋を開けた時の見た目や、彩り、何が入っているんだろうという楽しみがありますよね?
日本だと職場や学校にお弁当を持参するほかに、お花見や運動会、ピクニックなど行楽やイベントではお弁当を作ってみんなで食べるという習慣がありますね。自宅で作るお弁当の他にも駅弁や空弁など、出張や旅行の際には市販されているお弁当を買って食べるということもあります。みなさんにとってもお弁当はとっても馴染み深いものじゃないでしょうか。
そんな日本人にとって当たり前の文化となっているお弁当。最近ではニューヨークやパリで日本の弁当がブームで、”Bento”という単語が通じるくらいメジャーになっているといいます。たしかにSNSを見てもBentoを作ってアップしている外国人の方がたくさんいますね。これ作るのに何時間かかったの?!っていうくらい手の込んだBentoを作っている人もいます。日本の弁当文化は世界にも広がりを見せているんですね。
弁当の語源とルーツ
弁当の語源を調べると、諸説ありますが「好都合」「便利なこと」を意味する中国南宋時代の俗語「便當」が語源ともされています。ちょっと難しい字ですね。便利の便に、宝くじが当選したっていう時に使う当、当たるという次の難しい漢字で便當。この「便當」が日本入り、便の道で「便道」や「辨道」などの漢字も当てられました。この字も難しい。 辨(そな)えて用に當(あ)てる」から「辨當(弁当)」の字が当てられ、「辨當箱」の意味として使われたと言われています。
じゃあ、日本人は実際いつ頃から弁当を食べていたんでしょう?
何をもって弁当とするかという弁当の定義は不明確なので、弁当の歴史はいまひとつはっきりしていませんが、弥生時代から蒸した米を乾燥させた「干し飯」が携帯食として利用されていて、『日本書紀』には「糒(ほしい=干した飯)を裀(しとね)うちに包んで坂田に到る」という一文が載っています。弁当の定番であるおにぎりについても、弥生時代の遺跡から三角形にまとめた炭化米が出土しているんですね。弥生時代から弁当は存在していたのか?実に歴史が深い。
織田信長によって確立された弁当
日本で携行する食事が弁当として確立するのは安土桃山時代。確立させたのは皆さんご存知の織田信長。
安土城で大勢の軍勢に食事を配る際信長が、「箱にご飯とおかずを詰めたら配膳が素早くできる」と考え、それを「弁(そな)えて用に当てる」という意味で「弁当」と呼ぶようになったと言います。さすが合理主義者の信長ですね。
1600年代以降は、弁当の歴史に関する資料がたくさん出てきます。それまでの朝夕二回の食事から、朝昼晩の三度食になったことで、弁当が広まっていったといいます。江戸時代の農村地帯の絵図が描かれている「江戸名所図会」には、田んぼでの農民の昼食風景が描かれていて、その中で弁当を食べている絵が残っています。またイエズス会の宣教師によって編纂された日本語の辞書「日葡辞書(にっぽじしょ)」には、「Bento(ベンタウ、便当、弁当)」には、「充足、豊富」という意味と、「文具箱に似た一種の箱であって、抽斗(ひきだし)がついており、これに食物を入れて携行するもの」という意味が記されています。歌舞伎の幕間に食べる「幕の内弁当」や、京都石清水八幡宮の社僧・松花堂昭乗にちなんだ「松花堂弁当」が生まれたのもこの頃です。
太古の時代から日本人は食事を携行し、今から約500年前の安土桃山時代に織田信長に弁当という言葉が生み出され、江戸から明治時代にかけて花開いた日本の弁当文化。いまコンビニやスーパーのお惣菜コーナーで定番となっている弁当には、実はとても長く深い歴史があったんですね。弥生時代に思いを馳せながら、今日もお弁当を作りたいと思います。
では、また現代文化のルーツを探る旅でお会いしましょう。
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