脳回路を切り替えて読書する時代到来
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電子書籍
拡大する電子書籍市場
ちょっと前のデータですが、出版業界の調査・研究機関である(公社)全国出版協会・出版科学研究所(所在地:東京都新宿区、理事長:浅野純次)は2020年1月24日、『出版月報』1月号において2019年(1~12月期累計)の出版市場規模に関する発表です。
紙と電子を合算した出版市場(推定販売金額)は、前年比0.2%増の1兆5,432億円。紙の市場は同4.3%減少しましたが、電子出版が同23.9%増と大きく成長したため、全体の市場は2014年の電子出版統計開始以来、初めて前年を上回りました。出版市場全体における電子出版の占有率は、19.9%。前年の16.1%からさらに上昇し、約2割を占める規模になりました。
2019年の紙の出版物(書籍・雑誌合計)の推定販売金額は前年比4.3%減の1兆2,360億円で15年連続のマイナスとなりました。内訳は、書籍が同3.8%減の6,723億円、雑誌が同4.9%減の5,637億円。
書籍は、話題書こそ多かったものの、縮小が続く文庫本に加えて、文芸、生活実用書、学参などが低調で、前年より減少幅が拡大しました。ベストセラーが多かったビジネス書、新書は前年を上回り、児童書も健闘しています。
2019年の電子出版市場は前年比23.9%増の3,072億円と、3千億円を突破しました。内訳は、電子コミックが同29.5%増の2,593億円、電子書籍が同8.7%増の349億円、電子雑誌が同16.7%減の130億円。
特に電子コミック(電子コミック誌含む)は約3割もの伸びを示しました。
脳回路を切り替えて読書する時代
緩やかに成長している電子書籍市場ですが、電子書籍で読むと紙よりストーリーや本の構成の順序の理解が損なわれるといった研究結果も出ています。
その理由は?まず、画面で読むことが斜め読み、読み飛ばし、拾い読みを促す傾向にあるからとのこと。画面で文字を読む「デジタル読字」では、目がF字やジグザグに動きます。皆さんもwebサイトを見る時、F字やZ字で見ませんか?そうあれと同じことが電子書籍では起こりやすいということなんですね。個人的にはそうでもないけど、、、。文章全体をざっと見てすばやくキーワードを拾って結論をざっくりつかみ、それが自分にとって正当に感じられたときだけ、本文に戻って裏づけになる細部を選び出す。これがデジタル読字/斜め読みの特徴だそうです。そうなると大雑把な理解はできても、順番を覚えることはあまりできないということなんですね。
また、電子書籍は紙の本と違って、本の物理的・空間的な位置と内容を紐付けた記憶をつくることができないという説もあります。手に取れる “モノ”がないですからね、物理的な認知は難しいでしょう。全体の構成を理解するのに、確かにモノがある紙の本は優位かと思います。いつもこの論争で思うことは、使い分けじゃないかな?ということ。そのことを著書で書いている方がいました。
カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA) 教育・情報学大学院の「ディスレクシア・多様な学習者・社会的公正センター」所長であるメアリアン・ウルフ氏は、著書『デジタルで読む脳×紙の本で読む脳』の中で “紙の本は子供の「深い読み」を育むから、教育から絶対に外すことはできない。「他人の視点に立ち、その気持ちになるという行為は、深い読みプロセスのもっとも深淵で、あまり知らされていない貢献」” であると語っています。
一方で、世界的にも日本の義務教育でも教科書の電子化は進んでおり、デジタル読書は今後ますます拡大していくと予想されます。メアリアン・ウルフ氏の著書では、紙とデジタルの良い点を活用した読み書き能力の構築、適切な時期に紙とデジタルの脳回路を育み、必要に応じてスイッチが可能な「バイリテラシー脳」を育てることを提案しています。
「バイリテラシー脳」これは読書のみならず、今後ますます進むデジタル社会において、様々な場面で必要になってくる脳力じゃないでしょうか?必要に応じてアナログとデジタルの脳回路を切り替えられることが、これからの時代を生きる私たちに求められる力かもしれませんね。
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