出版市場を中国に見る 中国のデジタル事情
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電子書籍
みなさんはTikTokを使ったことがありますか?
初期は女子高生をはじめとした若い世代が、音楽に合わせてダンスするショートムービーが多かったが、今や老若男女を問わず、数秒〜数十秒の中で面白さを競い合っている。YouTubeやfacebook・Instagramのストーリーとはまた違った、エンタメ系動画配信のプラットフォームとなっていますね。かなりクオリティの高いムービーがあって、びっくりします。
ライブコマースが進むモバイル大国中国
ご存知の通り、TikTokは中国のByteDance社が開発運営している、モバイル向けショートビデオのプラットフォームです。本場中国では、単なるショートムービーを楽しむだけのものではなく、歴としたプロモーションツールとして位置付けられています。人気のある動画配信者が個人バイヤー的存在となり、企業とタイアップして商品紹介のムービーを作ります。それをフォロワーに配信し、商品の購入までさせるという所謂ライブコマースのプラットフォームにもなっているのです。先月facebookが、facebookとInstagramにEC機能を設け、売買を可能にすると発表しました。Instagramストアは夏にも登場予定。中国では、このSNS+EC+ライブコマースをいち早く実施し、それが浸透しているんですね。
そこには中国のスマホ事情があります。
中国のインターネットに関する組織「CNNIC(China Internet Network Information Center)」や、中国政府の情報産業省にあたる工業和信息化部、国家信息中心(国家情報センター)が発表した、2018年のインターネット関連の統計を見てみましょう。CNNICの第43次中国互聯網絡発展状況統計報告(2019年2月)では、2018年12月時点で中国のインターネットユーザー数は8億2851万人とあります。普及率は全人口の59.6%。2017年からの1年間で5,633万人増加しています。近年は毎年4〜5000万人利用者が増えているので、2019年内にインターネット普及率は6割を超えるとしていました。実際に超えていますね。
このほとんどが、スマホなどを利用したモバイルインターネットユーザーで、その数は8億1698万人、ネットユーザー全体の98.6%を占めます。同ユーザー数は1年間で6,433万人増えたそうで。ネットユーザー全体の増加数よりもスマートフォンユーザーの増加数が多いというのは、パソコンだけを利用していたけど、スマートフォンも利用をはじめたという人がこれに含まれることを意味しています。もうね、中国桁違い過ぎる、、、。つまり、モバイルユーザーがアプリを使ってSNSを頻繁に利用し、主に動画を閲覧している状況で、そこに目をつけたByteDance社がTikTokでのライブコマースを拡大させていったんですね。ちなみに中国でのライブコマースは、他にもいろいろあります。
中国では、日本とは比べ物にならないほど、EC取引がさかんで、なおかつキャッシュレス化が進んでいます。
総務省が2019年5月に発表した「平成30年度 我が国におけるデータ駆動型社会に係る基盤整備(電子商取引に関する市場調査)」によると、中国国内でのBtoC EC取引の市場規模は2018年時点で約1兆5,267億ドル、日本円に換算すると160兆円を超える規模だったとのこと。まったくもって、中国桁違い過ぎる、、、。
ネット上書店、電子書籍が飛躍的に拡大
さて、そんな中国で書籍関係はどうなのでしょう?
北京開巻信息技術が発表した「2018全世界を背景とした中国書籍小売市場」によると、2018年の中国における書籍小売市場規模は、定価ベースで前年比11.3%増の894億元(約1兆3,410億円、1元=約15円)であった。そのうち、ネット上の書店が前年比24.8%増の573億元、リアル書店が6.7%減の321億元。リアル書店よりも、ネット上書店での市場規模が、定価ベースでは大きく上回っている状況です。そりゃそうでしょうね。中国のネット書店では値引きして販売する傾向が年々強まっているようで、ネット書店の2018年の市場規模のうち、38%を占める217億7,400万元が値引きされた書籍の売上高だったとのこと。だとしても、これを差し引いたネット書店の売上高(355億2,600万元)は半端じゃ無いですね。
電子書籍はというと、読書アプリ・オーディオブック・電子書籍リーダーなどの開発、図書市場のオンライン化・デジタル化・AI化、知識産業のデジタル化、メディアミックスなど、デジタル化された読書習慣が全国民レベルで普及しています。上海のアイリサーチによる読書形式ごとの時間占有率についての調査によると、読書形式では電子書籍が47.9%とほぼ半分を占めるに至っていて、紙本が24.1%とほぼ4分の1、オーディオブックが17.5%となっています。オーディオブックが紙に迫っているんですね。オンラインオーディオコンテンツの利用者は、「ながら時間」や「隙間時間」にオーディオアプリを使用しています。オンラインオーディオコンテンツ市場における規制は、現時点で書籍に比べ緩やかであると言われていて、出版業界が注目しているんですね。
中国音楽ネット配信最大手の騰訊音楽娯楽集団(テンセント・ミュージック・エンターテインメント・グループ)は2020年3月に、中国の電子書籍サービス大手「閲文集団(チャイナリテラチャー)」と提携しました。チャイナリテラチャーは自社の電子書籍コンテンツプラットフォーム上の文学作品を音声コンテンツに転換させ、テンセントにライセンスを付与し、双方がコンテンツプラットフォーム上で全世界に向けて音声コンテンツを発信するとのこと。テンセントと言えばWeChat(微信)を運営する中国ネットサービスの雄。今後オンラインオーディオコンテンツの分野で大暴れしそうな予感がしますね。
ここまで見てきていかがでしょう?
何はともあれ、中国が桁違いなのは分かりますね。出版に関しても中国ではとても魅力的な市場だと思います。日本の本は中国で受け入れられないのか?実は中国でも日本の本、小説やビジネス書、児童書が売れに売れているというケースもあります。これから出版しようと思っている方も、すでに出版して日本の市場ではもう売れないかな、、、と思っている方も、中国に目を向けてみてはどうでしょう?
「でも海外に本を売るって大変でしょ?」という声も聞こえてきます。いえいえ、そこには電子書籍という強い味方がいますよ。
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