フィンランド国立図書館が進める生涯学習システム
学習到達度に関する国際調査「PISA(Programme for International Student Assessment)」の国際ランキングで、毎年上位にあるフィンランド。そのフィンランドで2020年4月14日、フィンランドの公文書館、図書館、博物館等が所蔵する資料のデジタルコンテンツや書誌データを統合的に検索できるサービス「Finna」について、フィンランド国立図書館が2025年までのビジョンに関する記事を掲載しました。
生涯学習を促進するFinnaのビジョン
Finnaは2013年にフィンランド国立図書館が、フィンランドの公文書館、図書館、博物館等が所蔵する資料のデジタルコンテンツや書誌データを統合的に検索できるサービスとして発表したもの。2014年後半にオープンし、国立図書館が資料をアーカイブし、図書館、博物館と協力して開発。文部科学省の助成を受けています。
Finna.fiサービスには1,700万点近くの資料セットがあり、そのうち200万点以上がオンラインで自由に利用可能。さまざまなアーカイブ、図書館、博物館の80以上の検索サービスへのアクセスもできるんですね。
ヘルシンキ市立図書館の開発責任者であるMatti Sarmela氏と、フィンランド遺産庁の主任職員兼ユニット長であるIsmo Malinen氏は、「Finnaは民主主義を支えるユニークなオープンサービスですと」言います。また、「図書館にとって、ビジョンの目標であるスマート検索と安全な利用は、オープンでライセンスを受けたデジタルコンテンツへのシームレスなアクセスと同様に非常に重要です」とも。
2025年に向けて、Finnaのビジョンの重点分野は、「情報へのアクセス」「生涯学習の促進」「最高のユーザー体験」「協力関係の強化」。誰もが文化的・科学的資料に幅広くアクセスできる多目的のサービスを提供するとともに、ユーザーのさまざまなニーズに合わせた資料を、持続的かつ簡単に提供し、安全でユーザー志向のデジタル顧客体験や、組織間の協力や資料の柔軟な共同利用を可能にしています。
社会全体参加型でスマートな情報へのアクセス
情報へのアクセスと生涯学習の促進という意味では、あらゆる年齢層の方を対象に、体験型の学習や情報も提供しています。文化的・科学的な資料は、あらゆるレベルの教育、専門家向け、自習用に用意されていて、ユーザーがオープンな教材、科学出版物、アクセス権を必要とする資料に簡単にアクセスできるようにしています。デジタルデバイドの人にとっても、簡単にアクセスできるようにすることで、年齢層を問わず利用できる環境づくりをしているのが、フィンランド的だなと思いますね。
「Finnaのインターフェイスは、教材を使って教育や学習のためのコンテンツを作成するためのツールを向上させます。そのために先生方や会員組織との連携も強化しています。さらに、さまざまな教育レベルで使用されている学習プラットフォームとの統合を改善し、拡張することを目指しています」とフィンナの開発責任者 Erkki Tolonen 氏はフィンナの将来の計画について述べています。Finnaは、会員組織、ユーザー、開発者、デザイナーのコミュニティ、およびこれらの間の協力で構成される文化遺産と科学のネットワークの一部として、すべての人が参加し、ネットワークの発展に影響を与えることができるサービス環境を構築しています。さすがオープンソースの先駆けでもあるLinuxカーネルを開発したLinus Benedict Torvalds氏を生んだ国です。
日本にも国立国会図書館がありますが、Finnaのような「情報へのアクセス」「生涯学習の促進」「最高のユーザー体験」というビジョンはあまり見えないという印象ですね。個人的に今後重要になってくると思うのは、デジタル化によって可能になる生涯学習だと思っています。誰もがどこからでも簡単にアクセスできて、様々な分野における知識やノウハウを習得でき、ユーザー参加のものに教材や資料がアップデートされていく。新型コロナウイルスによる外出自粛という理由だけでなく、教育現場の崩壊や、子どもから大人まであらゆる年齢層における引きこもり、やり直しの許されない社会環境、そんな今の時代を見るにつけ、こういった生涯学習の環境がますます必要な時代だと思うんですよね。
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