出版業界の不吉な未来
世界的に蔓延する新型コロナウイルス。日本ではまだ中国や欧米ほどの感染者数、死亡者数が出ていないものの、検索数の違いなどもありまったく楽観視できない状況です。各業界で倒産や、解雇の話題が出る中、出版業界はどうなるのか?ニューヨーク・タイムズの記事に、アメリカの現状が掲載されていました。
出版社、書店、著者が、財務上の影響に直面
コロナウイルスの発生が深刻さを増す中、アメリカでは著者、出版社、書店が、経済的な影響に直面しその影響を抑えるのにとても苦労しています。ブルックリンを拠点とする独立系出版社「メルヴィルハウス」の共同出版者で、在宅勤務を指示しているデニス・ジョンソン氏は「売上の減少は間違いありません」と言います。4月27日から始まる予定だった、通常8万人の観客を集めるシドニーの作家祭は、欧州の主要なブックフェアのキャンセルに続いて中止されました。
業界の多くは、地方や州の役人が社会的距離を置くことを義務づけ、一部の事業を一時的に閉鎖するよう命じているため、独立系書店が壊滅的な打撃を受けるのではないかと心配しています。実際に独立系書店の中には、店舗を閉鎖したり、従業員を帰宅させたりすることで公衆衛生の危機に対応しているところが増えている状況です。ニューヨーク最大の古書店であるストランド書店は、マンハッタンの旗艦店と市内の他の場所にあるキオスクを閉鎖すると発表しました。ストランドであ、400人の書店員のうち85%にあたる400人を一時解雇しています。また、オレゴン州ポートランドのパウエルズ・ブックスのオーナー兼最高経営責任者のエミリー・パウエル氏は、パウエルズが少なくとも3月31日までに5店舗すべてを閉鎖すると発表しています。パウエルズを含むいくつかの独立系書店も、すでに人員削減を開始しています。
日本も対岸の火事ではいられない
アメリカや欧州の一歩手前の状態にあると言える日本は、この事例を見て今すべきことを考えなくてはいけないですね。緊急事態宣言があるのか、ロックダウンがあるのか、無いならそれでいいのか?外出禁止指示が出ないまでも、自粛は確実に進み外出を控える人たちは確実に増加すると思います。そんな状況の中で、書店に足を運ぶ人は少なくなるでしょうし、アマゾンで購入しても配送がされないということも起こりかねます。
本がなくても生きるには困らないかもしれない。生命を維持するために必要なものではないから。ただ、新型ウイルスが終息を見せるまでどれだけの時間を要するからわからない。エンタメとしての本だけでなく、学習や教養のための本もある。子どもたちの教育に欠かせない本もあります。書店がなくてもインターネットがあるから電子書籍は読めます。電子図書館でレンタルすることも可能でしょう。でも、終息後に書店がない、本が買えない、本が手に入らないという状況も考えられなくはありません。
まだアメリカや欧州よりマシな状況の中で、業界全体で早急な対応策を練っておく必要がありますね。
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