イギリスで人気を博すオーディオブック
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オーディオブック
本から音声へ情報は「ながら」で得るものに
長引く出版不況によって、書店の廃業や出版社の倒産が相次いでいます。
2020年に入ってからも、大阪府枚方市に本拠を置く地域情報誌発行の「株式会社笑顔工房」、女性向けライフスタイル誌の「GLITTER」を主力に、海外セレブ情報誌の「GOSSIPS」や「KATY」「NYLON JAPAN」などの発行してきた東京都目黒区に本拠を置く出版業の「トランスメディア株式会社」など、破産や事業停止の話が後を絶ちません。
本を読まない人が増えたというのもあると思いますが、やはりスマホの普及による影響は否めないでしょうね。紙の本の代わりに電子書籍を読むという声はあまり聞きませんし、出版社も電子書籍化に積極的ではありません。本以外のところ例えばWikipediaやニュースアプリ、そしてSNSから必要な情報を得ているケースが多いのではないでしょうか。長い文章を読むよりも、短文で簡単に情報を得るということが習慣化しています。また、本をじっくり読む時間を取れないという声も多く聞かれますね。
そんな中イギリスではオーディオブックの人気が高まっているといいます。
インディペンデント紙によると、コンサルタント会社デロイトが立てた予測で、イギリスでの2020年のオーディオブックの売上は、2018年と比較して30%増の1億1500万ポンドに達するとしています。これとは対照的に、2009年にはテレグラフ紙で「未来の読書」と言われた電子書籍は、10年目にきてデバイスを求める人が減っていると伝えられています。
電子書籍の販売は、2017年に前年比で4%落ち込み、それ以来回復せず引き続き低迷しています。また紙の本の売上はこの5年間プラスでしたが、2019年に前年比5.4%と落ちてきている。これに比べて、オーディオブックの売上は6,900万ポンドで、43%増と大きく伸長しています。人気の理由としては、テクノロジーの進歩、有名な読み手、利便性だとこと。ワイヤレス・ヘッドフォンやスマート・スピーカーを使うことで、普段の生活の中で何かをしながらコンテンツを「聴く」ことができるのがウケている。
オーディオブックが変える読書環境
オーディオブックのコンテンツは、プロのナレーターや声優が本を朗読することが多くとても聴きやすい。音声を聴くことで読書を楽しめるので、掃除や育児の最中のほか、ランニング中、電車や車での移動時間などでも「ながら読書」が楽しめます。また、文字を読むのが難しいという人にもおすすめですね。
アメリカではオーディオブックが昔から人気のある分野でしたが、スマホが普及したおかげで、グーグル、ウォルマート、インスタリードなどが参入し、流通チャンネルが整いました。今後はさらにその普及が進むだろうと、経済誌フォーブスが伝えています。
さて、そんなオーディオブック、日本ではどうでしょう?コンテンツ数はまだまだ多くはないものの、私の周りでは結構聴いている人がいる。株式会社オトバンクの「audioboook.jp」、amazon社が提供する「Audible」など、プラットフォーム少しずつ充実してきており、スマホ、タブレット、そしてスマートスピーカーの普及とともに、コンテンツ数も大幅に増えていくと予想されます。
書籍の電子化がなかなか進まない日本の出版業界。電子書籍よりも紙の方が需要があるのはこの先もしばらく続くでしょう。その裏でオーディオブックの波が訪れようとしています。電子書籍ストアの統廃合と再編が進む中、次はオーディオブックのプラットフォームが乱立してくるのでしょうか。
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