コト消費が出版不況を救うか?

モノの消費からコトの消費へ

昨今は商品(モノ)そのものを購入するよりも、付随するサービスや体験にお金を払う「コト消費」が増えていますね。
コト消費はエクスペリエンスマーケティングの藤村正宏氏が、10年ほど前から提唱していました。大量生産大量消費の時代は終わりを告げ、著しいモノ余りの状態となり、人々はモノとしての商品よりも心に残る体験や感動などにお金を払うようになるとおっしゃっていました。まさに今、社会はサブスクリプションやシェアがトレンドとなり、モノを買わない時代に突入しています。

一般社団法人コトマーケティング協会代表の松野恵介氏によると、「モノよりココロ」それが、コト消費の原点だと言います。コトマーケティング協会のウェブサイトには、インターネットで「コト消費」を検索した際の結果が掲載されていました。

ある商品やサービスを購入することで得られる、使用価値を重視した消費行動。
高度経済成長期以降の日本人の消費行動は、三種の神器(冷蔵庫、洗濯機、掃除機)や
通称3C(乗用車、クーラー、カラーテレビ)に象徴されるように、
モノの所有価値を重視してきた。

このような消費傾向はモノ消費といわれる。

コト消費ということばは、消費者の価値観やお金の使い方が、
従来のモノ消費から大きく変化したことを印象づける意味で、
2000年(平成12)ごろから使われるようになった。典型的な傾向は、
所有のためではなく、趣味や行楽、演芸の鑑賞などで得られる特別な時間や体験、
サービスや人間関係に重きを置いて支出することで、それが購買の判断基準となっている。

コトバンクより抜粋

【モノ消費】
個別の製品やサービスの持つ機能的価値を消費すること。価値の客観化(定量化)は原則可能。

【コト消費】
製品を購入して使用したり、単品の機能的なサービスを享受するのみでなく、
個別の事象が連なった総体である「一連の体験」を対象とした消費活動のこと

平成27年度地域経済産業活性化対策調査報告書より抜粋

松野氏はこうも語ります。
実は、モノを買ってはいるのですが、モノそのものが欲しいわけでは無く、
モノを通して「別のコト」を望み、買っている
その時にもっている、興味のある「コト」を満たすために消費する
不安に感じる「コト」を解消するために消費する
不満に感じる「コト」を解決するために消費する
これが「コト消費」なのだと。
消費の形が大きく変わってきましたね。

一般社団法人コトマーケティング協会

出版不況に活路 体験型コンテンツへの転換

本についても、コト消費は進んでいます。
以前オモイカネブックス から上梓された外薗明博氏。
出版後は山形県高畠町の地域創生プロデューサーとして活躍されています。

外薗明博ホームページはこちら

外薗明博上梓作品はこちら

外薗氏はご自身の海外での教育経験について講演をしたり、身体の使い方に関するオリジナルのメソッドを伝える活動もしています。世界最大の民泊・体験サービスであるAirbnbの訪日体験プログラムに採用されたり、JR東日本が展開する大人の休日倶楽部のメニューにもなっています。出版された作品はもちろんですが、ご本人の持つメソッドや知的財産を生かしたプログラムを用意し、それに対して消費者がお金を支払うという、まさに「コト消費」を具現化した事例です。

大手出版社でもコト消費の取り組みが始まっています。
講談社は3月19日に、東京都豊島区の池袋駅からほど近い場所に「ミクサライブ東京」をオープン予定。映画館「シネマサンシャイン池袋」のビルを大規模修繕し、音楽ライブや演劇などが可能な4つのホールと、ショップ、カフェを備える施設に生まれ変わらせるとのこと。これまでの小説や漫画のヒット作が映像化されるという二次展開からさらに発展させて、ライブ化、体験化を目指すといいます。

またKADOKAWAでは、埼玉県所沢市「ところざわサクラタウン」で建設中で、7月17日のオープンに向けて準備が進んでいます。もともと旧所沢浄化センター跡地を有効活用し、KADOKAWAが運営を行いながらまちづくりを行う。ミュージアムやレストラン、ショップ、イベントホール、ホテル、同社の新オフィスと本の製造・物流工場などが入る予定で、アニメやゲームといったポップカルチャーを体験型コンテンツに変換し、コト消費を促してくようです。

これまで本を出版することを目的としてきた出版社、そして著者の皆さんも、今後は作品を体験型コンテンツへ昇華させることを予め企画する必要があるかもしれませんね。コト消費は出版不況の救世主となるか?今後に注目です。

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