いま出版業界が変わるとき
老舗出版社が相次いで倒産する時代
1951年創業の学術書専門出版社「創文社」が2020年3月末をもって書籍販売を終了すると発表しました。歴史・哲学・宗教などの人文学系、法律・法制史・政治学・経済学など社会科学系の専門書を扱い、数多くの作品を出版されてきました。うちにも何冊かその作品があります。
そんな創文社が、17年3月に2020年をもって会社を解散すると発表しました。大学予算の縮小化により大学図書館への販売低迷、学術論文の電子化などが経営に大きな打撃を与えたといいます。昨今の大学生世代だと、スマホの普及率はほぼ100%でしょうし、デジタル化の波に乗らないと厳しい状況になるでしょうね。
東京商工リサーチの調査によると、2019年1~8月の出版業の倒産件数は26件、8月までで2018年の年間件数22件を上回っている状況です。同社では「出版不況」により雑誌に頼った流通システムが崩れ、『出版』、『取次』、『書店』が負の連鎖に嵌り、業界構造の改善が遅れたことが大きいと分析しています。では、その出版不況はどうして起こっているのか?外的・内的な要因を含めて業界全体で検証し、新たなビジネスモデルとシステムを構築しない限り、不況はさらに進むと思いますね。
さて、出版社が倒産した場合、その作品はどうなってしまうのか?
以前にも同様の記事を書きましたが、ますます出版社倒産が進むと予測される中で、著者の皆さんには一度考えて頂きたい問題です。
出版社が倒産した場合作品はどうなるのか?
出版社が倒産すれば、作品の多くは絶版となり、中古本としてしか市場で見ることは出来なくなります。人気の雑誌も廃刊になってしまう。それは出版界にとっても読者にとってもとても不幸なことです。そうならないためにも、今後さらに増える情報量と、新たな技術、目まぐるしく展開される状況に、いかにして出版業界が対応していくかを考えなければいけないと思います。
いままさに、出版社の事情で新しい出版企画が頓挫してしまったという相談を受けています。電子書籍を使ってこの出版を実現したいと。内容はこれからの僕たちの暮らし、地球環境にとってとても重要なことが書かれています。是非ともこの本を出版したいと思います。本は著者や作り手の想いが詰まった、読者への素晴らしい贈り物です。少しでも多くの本が、求めている読者の元に届くように。業界全体の変化と融合が必要な時が来ていますね。
出版社が倒産した場合、版権を一部引き継いで、別の出版社が販売を続けていくという作品もあるかと思いますが、殆どの作品は絶版になるのではないでしょうか。 そういった作品の中には、大量に売れるわけではなくても、読者に求められるものがたくさんあるはずです。そういった作品が絶版になり、読者が目にすることもできなくなってしまうというのは、あまりに勿体無いと思うのです。著者にとっては、自分の一部を切り取ったある意味分身のような作品が、完全に眠らされてしまうというのは、痛恨の極みではないでしょうか。そういった作品こそ、電子化で生まれ変わらせて、いつでも読者が手に取れるようにしておくべきだと、僕は思います。業界全体で本というコンテンツの今後を考えて行く時が来ていますね。
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