2020年に向けた障害者アートの近未来
東京オリンピック・パラリンピック開催まであと1年となり、いま障害者アート(法律名に準じて、本記事では記載を「障害者」で統一する)が各地で盛り上がりを見せている。
平成30年6月13日「障害者による文化芸術活動の推進に関する法律(平成30年法律第47号)」が公布、施行された。
本法は、「文化芸術が、これを創造し、又は享受する者の障害の有無にかかわらず,人々に心の豊かさや相互理解をもたらすものであることに鑑み,文化芸術基本法及び障害者基本法の基本的な理念にのっとり,障害者による文化芸術活動の推進に関し,基本理念,基本計画の策定その他の基本となる事項を定めることにより,障害者による文化芸術活動の推進に関する施策を総合的かつ計画的に推進し,もって文化芸術活動を通じた障害者の個性と能力の発揮及び社会参加の促進を図ることを目的とするものです。」とある。
オリンピック・パラリンピックへ向けて動き出す障害者アート
障害のある人が、文化芸術を鑑賞・参加・創造できるための環境整備や、そのための支援を促進することを目的とした法律であり、具体的には、施設のバリアフリー化や情報保障など、障害のある人が文化芸術を鑑賞しやすくする取組みや、作品を発表できる機会の確保、著作権の保護、高い評価を受けた作品の販売・発信に関する支援などを目的にしている。
法律の施行後、各地で様々な障害者アートの展示会や、企業などとのコラボが盛んに行われている。
今年の9月には新潟県において「第34回国民文化祭・にいがた2019、第19回全国障害者芸術・文化祭にいがた大会」が開催される予定だ。全国の障害のある人などが制作した作品を展示する「障害者アートフェスティバル~芸術作品全国公募展~」や、障害のある人が出演するステージパフォーマンスの発表会である「文化ふっとつ!ステージショー」など、日本における最大級のフェスティバルだ。
また、東京都江東区では、2020年1月から障害者アートの巡回展を開催予定。豊洲や亀戸など各地で、地域の障害者が制作した美術作品を展示し、住民らとの交流を促す。住民や審査員が各地で選んだ作品を集約し、パラリンピック開幕100日前となる同5月の総合展覧会で披露するそうだ。江東区内は、パラリンピック競技会場の3分の1が設けられるため、プログラムを盛り上げる一助になるだろう。そのほか、地域展覧会も予定しており、地域住民との交流も促す。
アートと地域住民との交流を促す施策
地域住民に障害者アートへ触れる機会を提供する取り組みとしては、(一社)障がい者アート協会と(一社)コミュニティービルダー協会が展開する『まちかど障がい者アート』がある。
これは、各地の住宅建築現場における現場シートに、障害者アートをプリントし、殺風景になりがちな建築現場に彩りをもたらろうという取り組みだ。ビルの建設現場にある真っ白な仮囲いを見たことがある方も多いだろう。あの壁面に色とりどりの絵が描かれているのを見たことはないだろうか?(一社)障がい者アート協会では、建設現場の仮囲いに障害者アートを展開した実績があり、今回は一般の戸建て住宅の建築現場のシートに載せようという試みだ。
建築現場は地域住民の関心が高く、注目の集まるスポットである。そこで使用する現場シートに障害のあるアーティストたちの作品を活用することで、地域住民の生活者の方々との融和効果と、建築会社のCSRに関するイメージアップを図るのも狙いとなっている。また、(一社)障がい者アート協会では、協会が運営する「アート輪」に属するアーティストの作品が利用されると、その費用の一部をアーティストである障害者の支援として活用する仕組みを取っている。障害者の皆さんが社会に参加し、創作活動を通して少しでも経済的対価が得られるようにしたいという、代表である熊本氏の思いがそこにはある。
障害者アートと言われているが、おそらくその絵を見ただけで、これは障害がある人が描いたものかどうかを判断するのは難しいのではないかと思う。構図や色使いなどが、どんな流派にも属さない、自由かつ大胆な作品は、現代的でとてもポップなアート作品に見えるのではないだろうか?
「おもしろい!」「かわいい!」「きれい!」
建築現場を見て立ち止まり、そんな感想を発しながら笑い合う地域住民の姿が、障害者アートのアーティストたちにとって、大きな創作意欲と活力になることを期待したい。
まちかど障がい者アートプロジェクト
https://omoikanebooks.wixsite.com/atsumarugenba
利用を検討したい、応援したいと思ったら、お気軽にお問い合わせ下さい。
(一社)障がい者アート協会代表 熊本豊敏氏の著書
『障がい者アートの未来を探して』
Kindleストアにて発売中!
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