論文誌購読料の高騰から考えるデジタル化
高騰する論文誌
研究者が論文を発表する場である「論文誌」。その購読料が近年高騰し、経済的な事情から、最新の研究情報にアクセスしにくいケースが出始めており、科学技術立国をめざす日本にとっては深刻な問題となっているそうだ。生物・医学分野で有名な「セル」や「ランセット」を含め2千以上の論文誌をまとめている大手出版社のエルゼビア社(本社 オランダ)は、まだまだネットでの論文無料公開を良しとしない研究者が多いと語る。論文を投稿する人が投稿料を払い、論文そのものは無料で公開する「オープンアクセス」のしくみへの転換も計画しているが、まだ進んではいないようだ。
無料閲覧ができるのも閲覧する側のユーザにとってはありがたいことだが、論文自体に価値を持たせ、閲覧者に一定の敷居を設けることも重要だろう。会員登録制にしたり、論文の書いた研究者とビジネスや活動を共にする場合などは、幾ばくかの費用を支払うなどの仕組みを用意したりするのも方法ではないかと思う。そういう展開に持って行きやすいのは、やはりデジタルであろう。日本の知的財産に価値をつけて世界に発信するにあたっては、今後ネットとデジタルデータはますます必須になると思う。
進む図書館のデジタル化
図書館の世界は、現在デジタル化が拡大し、様々な取り組みをしている図書館が増えている。兵庫県たつの、宍粟市、上郡、佐用町内にある公立図書館が、パソコンやスマートフォンで読める電子書籍の貸し出しを始めた。初回のみ、図書館で利用者IDの発行が必要だが、登録をすればあとは図書館に足を運ばなくても利用が可能で、幅広いジャンルの900タイトル以上を読むことができるとのこと。
たつの市立図書館
http://www.city.tatsuno.lg.jp/library/event/index.html#DL
この他にも電子書籍を貸し出す図書館は、どんどん増えて来ている。
電子書籍の貸し出しを行う“電子図書館”
http://www7b.biglobe.ne.jp/~yama88/topi_4.html
書店数の減少が止まらない昨今。amazonは便利であるものの、宅配業者が配送時間指定を縮小するほどの状況であり、電子図書館の役割は今後重要になってくると思う。
出版社の電子書籍づくりがカギになる
図書館で電子書籍を扱うとすると、図書館が蔵書を電子化するか、出版社が紙の書籍と電子書籍を同時に出版して、図書館がそれを導入する方法の二つがある。これまでの蔵書は、自治体が少しずつ電子化するとしても、今後も本は続々と出版される。そう考えると、やはり出版社が本を出版する際に、紙と電子の両方を作るといいだろう。
出版社は電子版の制作出版にあまり積極的ではない。電子化する手間・経費と、売り上げの数字を鑑みれば、既存の制度の中で流通させれば特に問題はないというのが本音であろう。しかしながら、電子化することで電子書籍ユーザへアプローチもでき、電子図書館での活用でより新しい読者層を集めることも可能なるのではないだろうか。なにより、日本人の知的水準をあげるという大義がそこにはある。活字離れ、読書離れと言われる昨今。デジタル化によって新たな「読む環境」を提供する必要に迫られていると考える。
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http://www.g-rexjapan.co.jp/omoikaneproject/author
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