変わる読書環境ー “活字”離れが進むわけー
そもそも活字とは?
活字=狭義においては活版印刷の際に文字の図形を対象(特に紙)に印字するもので、木や金属に字形を刻み、それにインクをつけて何度も印刷できるようにしたものである。また広義では、写真植字の文字盤やデジタルフォントをはじめ印刷物など、広く文字を同一の字形で繰り返し表現するものを含む。(Wikipediaより)
簡単に言えば、新聞や本など印刷されたものに記載されている文字の総称だ。昨今はスマートフォンやインターネットの普及が著しく、あらゆるコンテンツが無料で閲覧できる。その分活字離れが進んでいると言われている。本当に現在も活字離れは増えているのか?よく見てみたい。
これは、平成28年度文部科学省による「子供の読書活動の推進等に関する調査研究」の結果だ。学校のある日(平日)にどれくらい本を読んでいるか?というもの。データを見ると、小学生・中学生では、平日に読書をまったくしない児童・生徒は1~2 割。約 5~6 割は1日に30分未満の読書をしている。高校生になると、平日に読書をまったくしない生徒の割合が4割以上にのぼる。
不読率の調査では、小学生では1か月に5冊以上読む児童が半数を超え、不読率は1割未満。中学生の不読率は約1~2 割、高校生(普通科高校の生徒)では約3~4 割の水準となっている。文部科学省「第三次子どもの読書活動の推進に関する基本的な計画」では、全国学校図書館協議会の学校読書調査を参照し、「1カ月間に1冊も本を読まなかった『不読者』の割合」を「不読率」と呼んでいる。ここで言う「本」とは、「お話などのよみもの」や、「何かを調べるための図鑑や事典など」を指すこととし、紙の本以外に、パソコンやタブレット端末、スマートフォン等で読める本(電子書籍)を含むものとしていて、マンガや雑誌、新聞、教科書や参考書は含まない。こんなデータもある。
活字離れが叫ばれて久しいが、実は小中学生では読書冊数は増えている。この読書冊数の上昇傾向は、2000年前後から始まっており、その背景にあるのは「朝の読書活動」いわゆる「朝読」だ。朝の時間帯に5~15分程度の読書時間を設け、生徒に読書の習慣を持たせるという活動で、文部科学省が2001年に「朝の読書活動の推進」方針を掲げたことから、多くの小中学校で導入されたものである。学年が上がるほど不読率が増えていくが、中高生では部活や受験勉強があるので、読書に割ける時間が少なくなるので仕方ないことか。
活字離れの定義
さて、ではなぜ「活字離れ」と言われているのか?
出版業界における新刊の販売数が落ち込み、相次ぐ書店の閉店により業界が縮小している中で、メディアや出版業界にとっては「本が読まれなくなった=活字離れ」と考えている節がある。また「本」を「紙の新刊」と考えた場合、中古本や電子書籍、青空文庫などの無料コンテンツは「本」に含まれない。スマホによって本が読まれなくなったという話もよく聞くが、些か疑問だ。スマホの誕生で無料や読み放題で電子書籍が読めるようになった。前述した「活字」定義から考えるに、つまるところ新刊の印刷本が売れなくなったことが、マスメディアを賑わす「活字離れ」の理由なのだろう。
文部科学省のホームページにこんな一節がある。
“読書することは、「考える力」、「感じる力」、「表す力」等を育てるとともに、豊かな情操をはぐくみ、すべての活動の基盤となる「価値・教養・感性等」を生涯を通じて涵養していく上でも、極めて重要である。
本を読む習慣、本を通じて物事を調べる習慣を、子どもの時期から確立していくことの重要性が、あらためて認識される。また、そのためには、学校教育においても、家庭や地域と連携しながら、読書の習慣付けを図る効果的な指導を展開していく必要があり、とりわけ学校図書館がその機能を十全に発揮していくことが求められる。”
時代はAIスピーカーに本を読み上げてもらうようになった。今後さらなる技術革新により、読書の環境・形態は大きく変わっていくだろう。その中でいかに本を読みやすくするか、本に触れる機会を創出するかを、出版業界、図書館、さらには家庭や地域も一体となって考えていく時ではないかと思う。そのために、読書は「活字」だけではないという認識が大事だろう。
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