アマゾンが仕掛けるリアル店舗の今後
アマゾン ポップアップストア全店撤退
ショッピングセンターの通路や広間に、カウンターやショーケースなどで仕切って出店するブース型の期間限定仮店舗を、ポップアップストアと呼ぶ。イオンショッピングセンターなどの通路やセンターコートなどでよく見かける。
アマゾンがここ数年間で米国内に87店舗オープンした小規模のポップアップ小売店を、すべて閉めることにしたとウォール・ストリート・ジャーナルが報じた。日本では、2007年6月から提供を開始した有料会員サービスアマゾンプライムの10周年を記念して、2017年7月に「Amazonプライム ポップアップストア」が、六本木のメルセデス・ベンツコネクションで開催した。
キオスクとも呼ばれるアマゾンのポップアップストアは、床面積が数十平方メートルの規模で、電子書籍用リーダーのKindleやタブレットのKindleFire、FireTVのほか、AIを搭載した音声アシスタント端末「エコー(Echo)」など、各種デバイスを展示・販売している。また一部にはBOSE社のヘッドフォンなど、サードパーティによる周辺機器の販売も行われている。モールやショッピングセンターのお客さん向けに、各種デバイスのデモンストレーションを行ってもらい、製品の認知度を上げることを目的にしていた。専門スタッフによるデバイス相談にも対応する。このポップアップストアは、2014年に1号店がオープンし、現在アメリカ21州に87ヶ所ある。今回の決定により、最近オープンしたばかりのロケーションも含め、全店を4月29日までに閉じることになる。
一方で今後の店舗展開については、リアル書店の「アマゾン・ブックス(Amazon Books)」や、カスタマーレビューで評価が星4つ以上の商品を中心にそろえた「アマゾン4スター(Amazon 4-Star)」に注力するようだ。
アマゾンブックス強化 日本への展開は?
100坪~200坪のアマゾン・ブックスは、すべての書籍の表紙を正面に向けた所謂「面陳(面陳列)」と呼ばれる陳列方法をメインとして、セクション毎にカスタマーレビューや予約注文数、売上データなどを参考にしたキューレーション展開による分類など、通常の書店と異なる点が多い。さらに異質なのは、カスタマーレビューはあるが、価格表示が一切されていないことだ。アマゾン・ブックスはアマゾンのオンライン価格と同一に、ダイナミック・プライシングを採用している。需給に応じて価格が変動するため、店頭での価格表示が不可能なのである。そのため本のバーコードを店内にあるスキャナーや、スマートフォンにダウンロードしたアマゾン・アプリにかざして表示するようになっている。アマゾン・アプリはバーコードだけでなくOCR(光学式文字読取装置)としても使用できる。アマゾン・ブックスでの決済はキャッシュレスとなり、クレジットカードやデビッドカードにアマゾンのアカウントからの直接支払いも可能である。またアマゾン・ブックスでは、書籍だけでなくスマートスピーカーのエコーや、Kindle、KindleFireなどのアマゾン製品も展示・販売されている。そして展示している本や製品をアマゾン・アプリでスキャンして、宅配注文するキャッシャーレスでの展開も行っている。
ポップアップストアでの実験を終え、今後は実店舗運営にさらにアイディアとパワー傾けてくるであろうアマゾン社。アマゾンの買い切り制で戦々恐々とし、全国各地における書店の閉店を受けて制度改革が求められる日本の出版業界。アマゾン・ブックスの余波は間違いなく日本にも訪れるに違いない。この波に乗るか、真っ向勝負するか、私たちはいまから考えておく必要があるだろう。
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